湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2014年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第17節(2014年7月27日、日曜日)
- リスクチャレンジとリスクヘッジ(回避)のバランスというテーマ・・(レッズvsアントラーズ、 1-1)
- レビュー
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- ものすごいエキサイティングな熱戦になった。
ハーフタイムに、アントラーズのトニーニョ・セレーゾが、「このゲームは、ナショナルダービーだ!」と意気込んだらしいけれど、たしかに、内容的にも雰囲気的にも、その表現があてはまりそうな感じではあった。
ゲームの質と展開としては、レッズ対フロンターレのハイレベルな闘いに匹敵していた・・と思う。
そう、ダイナミックなせめぎ合い。とはいっても、やはり、アントラーズの方が、ゲーム戦術的な「ニオイ」は強かったよね。
しっかりとレッズの仕掛けを受け止め、前線の才能を駆使してカウンターを仕掛けていく。
まあ、前半でのディフェンスが良くなかったことで、ハーフタイムにトニーニョ・セレーゾがブチかました「檄」が効いたんでしょ。後半のアントラーズ守備は、本当に堅くなったよね。
ということで、決定的なチャンスの量と質という視点だけれど、そこでは、たぶん互角(まあレッズの方が2つか3つ多かった!?)。
でも、ゲーム戦術的な「ニオイ」という意味で、そのチャンスを作り出すまでのプロセスには、大きな差異があった。
そう・・、レッズは、「自分たち」の組織サッカーをベースに、色々な「変化」をつけながら仕掛けていったのに対し、アントラーズは、(前半、最終ラインの
ミスによって決定的ピンチに陥ったことで!?)後半は、守備ブロックを固めてカウンター・・という傾向が、より強くなっていった。
まあ前後半を通じて、アントラーズのチャンスは、そのほとんどがカウンターから(カウンター的なモノも含めて!)だったよね。
レッズが魅せつづけた仕掛けの変化だけれど、直接ワントップへ送り込むタテへの決定的スルーパス、逆サイドのスペースを活用するサイドチェンジ、サイドゾーンでの、タテのポジションチェンジも駆使したコンビネーション&決定的クロス等など、例によって、とても多彩だった。
でも・・
そう、そんな多彩な仕掛けが仇(あだ)になってしまったんだよ。前半30分に、アントラーズ柴崎岳がブチ込んだ同点ゴールシーン。
完璧なショートカウンターだった。
もちろん、柏木陽介のタテパスがインターセプトされてしまったことと、那須大亮のスライディングが(ボールのイレギュラーバウンドで!?)空振りになってしまったという不運が重なったということもあるけれど、でも、その同点ゴールもまた、「サッカーの真実」ではあった。
だから、ミハイロ・ペトロヴィッチと、そのテーマについて会話した。
要は、「リスクチャレンジ」と「リスクヘッジ(回避)」のバランスについてだね。
レッズは、とにかくリスクを恐れずにタテへ仕掛けていく。それに対して、対戦相手のほとんどは、守備ブロックを固めてカウンターを狙う。
そんなゲーム展開でも、今シーズンのレッズは、簡単に守備ブロック(組織)を崩されるシーンは、とても少なくなった。
あれほど、積極的にタテへ仕掛けていっている(人数をかけているっちゅう意味だよ!)にも関わらず、次の守備では、(まあギリギリの状況も多いし、ツキに恵まれたシーンもあったけれど・・)アタフタと不確実な対応になってしまうシーンは、ほとんどなくなったんだよ。
レベルアップした守備意識・・!?
まあ、そういうことだけれど、それにしても、「リスクにも(美しさの創造にも!)チャレンジする・・」という強い意志に支えられた攻撃サッカーだからこそ、その「守備意識」が、殊のほか大きな効果を発揮しているっちゅうわけだ。
だからこそ、「リスクチャレンジ」と「リスクヘッジ(回避)」のバランス。
リスクを回避するような戦術サッカーが「過ぎ」たら、サッカーの進化など望むべくもない。逆に、チャレンジが「蛮勇」になったら、しっぺ返しも大きくなってしまう。
だからこそ、バランス。
でもミハイロは、あくまでもリスクチャレンジを重要視する。それは、サッカーの美しさ(魅力)を失わないためだ。彼は、選手たちの意識と意志によって(!)リスク度を、大きく抑制できる・・と、確信しているんだよ。
それは、とても正しい・・と思う。
でも、まあ、この試合での同点ゴールのような事態は、サッカーだから起きる(不可避だ)よね。でもミハイロは、だからといって、「後退」するようなことは決してしない。
そうではなく、リスクチャレンジに対する意志を高めていくのと同時に、クリエイティブな守備意識「も」大きく増幅させていくんだよ。
そうすれば、無失点記録を塗り替えたように、攻撃と守備が、とても高い次元でバランスするようになる。
フムフム・・
そんな視点でもレッズのサッカーを観察すれば、楽しみが何倍にも膨(ふく)らんでいくこと請け合いでっせ。
今日は、こんなところで・・
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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