湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2014年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第3節(2014年3月15日、土曜日)
- また、レンチャン観戦になった・・(マリノスvs徳島、 3-0)(フロンターレvsアルディージャ、 3-4)
- レビュー
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- 今日は、横浜(ニッパツ)から川崎(等々力)へ「レンチャン観戦」でした。
ちょっと疲れ気味。それに、このコラムをアップしたら、サンフレッチェ対レッズのゲームもビデオ観戦したいしネ。だから、ホントに簡単にポイントだけ。
まずマリノス対徳島。
まあ、マリノスの完勝だったことは言うまでもないよね。
私は、藤本淳吾の3点目を見てから等々力へ向かったのですが、それまでのゲーム展開は、マリノスの、攻守にわたる「余裕」ばかりが目立っていたっけ。
徳島は、前節のセレッソ戦もそうだったけれど、後半にエネルギーを注入してきた(小林監督のゲーム展開的な意図もあった!?)。
まあ、一点リードされているのだから(徳島が前へ来るのは!)当たり前の展開ではあるけれど、それにしても彼らは、大胆に「人数を掛けて」いたね。
でも、やはりマリノスの守備ブロックは強い。
彼らは、そんなエネルギッシュな徳島の攻撃を、余裕をもって受け止め、必殺のカウンターをブチかましていくんだ。
その起点は、もちろん中村俊輔。
彼は、このゲームでも、カウンターをコントロールすることもそうだけれど、とにかく、ゲーム全体の流れを完璧に掌握しながら、素晴らしいゲームメイクを魅せつづけた。そう、例の魔法プレーを連発することも含めてネ。
徳島も、そんな中村俊輔を抑えようとはするけれど、いかんせん、彼の「アクション・ラディウス(行動半径)」は広すぎる。
たしかにマークを受け渡そうとはするけれど、中村俊輔のクレバーな「動き」を掌握しきれず、結局は、彼をフリーにしてしまうシーンの連続ということになってしまった。
中村俊輔を抑えるためには、90分間、まさに「トイレの中まで付いていく」ってな、オールコートマンマークを徹底する以外にない。
もちろん、中村俊輔を「消す」ために(消せるという保証はないけれど!?)、そのオールコートマンマーカーも、攻撃でのプレーは限定されるよね。
だからこそ監督は、そんなゲーム戦術の「プラスとマイナス」を、しっかりと計算しなければならないんだよ。
まあ、普通は、マークの受け渡しを徹底するというのが常道でしょ。でも相手は中村俊輔だからね、そりゃ、普通じゃない対応が必要になるっちゅうわけさ。
この試合では、中村俊輔のパートナーとしての中町公祐のクールな実効(組織)プレー。また、最前線の突貫小僧、齋藤学の積極的なドリブル勝負が、とても気に入った。
もちろん富澤清太郎や藤本淳吾のチームプレー、はたまたワントップとして献身的な「使われるプレー」を魅せつづけた伊藤翔だけじゃなく、両サイドバック(小林祐三と下平匠)のオーバーラップと、勇気をブチかます勝負プレーも特筆だったけれどね。
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マリノス対徳島のゲームについては、こんなところですかね。
ということで、フロンターレ対アルディージャ。
ものすごくエキサイティングな「勝負の展開」になった。
全体的には、たしかにフロンターレがイニシアチブを握っているけれど(シュート数では、フロンターレが三倍もブチかました!)、アルディージャも、セットプレーや必殺のカウンターで対抗し、終わってみれば、彼らが、この「逆転劇の応酬マッチ」を制してしまったんですよ。
このゲームで興味深かったのは、試合後の記者会見で、両監督ともに、「同根の」内容をコメントしたことでした。
もちろん風間八宏さんは、「あんな負け方」をした後だから、憤懣(ふんまん)やるかたない・・といった雰囲気。
対するアルディージャの大熊清監督も、勝ちはしたけれど、内容に満足いかない・・という雰囲気。
そんな両監督のコメントだけれど、そこには共通するモノがあったと思っている筆者なのですよ。
もちろんニュアンスだよ、あくまでもニュアンス。ということで共通するモノとは・・
・・戦術的なロジックなんかより、自分自身で仕事を探し、勇気をもってリスクにもチャレンジしていく気概の方が、何倍も大事なんだ・・
・・強い闘う意志(≒集中力)さえあれば、あんなカタチで失点などしない(風間監督だったかな・・彼は本気度とか、生きるか死ぬかという状況での闘う意志・・等という表現を使っていたっけ)・・
・・(現象的な質問に対する大熊監督のコメント・・)
・・いま質問されたプレーについて、戦術的なロジックでお答えするのは簡単です・・でも、結局は、選手自身が考え、決断し、実行していかなければならないんですよ・・そこでは、選手の主体性と強い意志こそが大事になってくるんです・・
私は、そんな両監督のコメントをメモしなかった。
そう、私はそこに、サッカーは、(不確実な要素が満載だからこそ!?)意志のスポーツであるという普遍的な「バックボーン・コンセプト」を感じていたんだよ。
風間八宏さんと大熊清さんのコメントには、とても癒(いや)されたことを覚えています。
何たって、巷では、ワケの分からない戦術ディスカッションが氾濫しているわけだからね。
サッカーは、最終的には、数字で説明したり割り切れたりするモンじゃないんだよ。
もちろん戦術的なアイデア(基本的なコンセプト)を、しっかりと理解し、チーム内でシェアするのは大事。でも最後は、それぞれの選手の「実行意志」が問われるというのも、確かな事実なんだ。
何せ、イレギュラーするボールを足で扱わなければならない不確実なサッカーでは、次に何が起きるか分からないわけだからね。
だからこそ、監督にとっては、意志こそが、もっとも重要な訴求テーマなんだ。
そう、美しく勝つという究極の目標へ近づいていくために・・
最後に・・
大熊清監督に、ちょっと失礼な語りかけをしちゃったかもしれない。それは・・
・・私は、大熊さんは、とてもロジカルな監督だと思っていた・・でも、今日のハナシを聞いて、ちょっとイメチェンだった・・
もちろん私は、大熊清監督が、サッカーの本質的なメカニズム(不確実なボールゲームだからこそ意志のスポーツ!!)に、とても造詣が深いコトは知っている。
でも、これまでの記者会見では、いつも、戦術的なロジックを前面に押し出すコメントの方が印象に残っているんだよ。だから・・
決して私は、大熊さんが、変な(まがい物!?)ロジックにご執心だと思っているわけじゃありません。
ただ、記者を相手にした会見コメント内容として、ちょっとイメチェンだった(癒された!?)ことを言いたかったんだよ。
誤解があったら、謝ります。
さて、サンフレッチェ対レッズを観よう。
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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