湯浅健二の「J」ワンポイント


2014年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第4節(2014年3月23日、日曜日)

 

今日もレンチャンだった・・チト疲れた・・(レッズvsエスパルス、 1-1)(FC東京vsフロンターレ、 0-4)

 

レビュー
 
ウワッ!!

そのとき、頓狂な声を出してしまった。

後半ロスタイムに入ったタイミング。

大きなワンツーから、最後は大前元紀からパスを受けて抜け出した六平光成(むさかみつなり)が、レッズGK西川周作と1対1になっちゃったんだよ。

テレビを観ているレッズファンの誰もが(スタジアムで観戦する私も!)一瞬フリーズしたに違いない。それほどの決定的チャンス(レッズのピンチ!)だった。でも・・

そう、最後は、ベストタイミングで飛び出してきた西川周作が、身体を投げ出し(全身で!)ボールを弾き出したんだ。

「お見事〜っ!!」って誰もが拍手したに違いない。

でも私は、それまでのゲームの流れを反芻(はんすう)しながら溜息をついていた。

何せ、それまでのレッズは、(特に後半!)ゲームを完全に掌握して攻めつづけ、原口元気が、槙野智章が、はたまた興梠慎三や(交替出場した)李忠成が、まさに決定的なカタチから絶対的なシュートを放ったりしていたのだよ。

それは、そんなゲーム展開のなかから唐突に発生した「絶対的ピンチ」だったんだ。そりゃ、誰だって頓狂な声が出るでしょ。

それでもレッズは、最後の最後まで集中してドローに持ち込んだ。

昨シーズンだったら、勝ち越しゴールを奪われて負けちゃっていたに違いない「深い意味合いを内包するゲームの流れ」だった!?

立ち上がりは互角の展開。でもレッズは、前半18分に、コーナーキックから先制ゴールを奪われてしまう。

それだけじゃなく、前半25分には、ノヴァコヴィッチとのワンツーから抜け出した吉田豊に、ゴール前12メートルから、フリーシュートを打たれちゃう。

そのとき誰もが、「アッ、ゴールだ・・」と確信したに違いない。でも、シュートされたボールは、わずかに、レッズゴールの左ポストをかすめていった。

ツキにも恵まれている・・。そう思った。

そして、そこでも、「昨シーズンだったら、そのまま2点目を奪われちゃっていたに違いない・・」なんてコトを思っていた。

何せレッズは、前半のその時点までに、興梠慎三と原口元気が、素晴らしいフリーランニングと決定的ロングパスやスルーパスのコラボレーションによって、エスパルス最終ラインの「ウラのスペース」を攻略してシュートまで行くという決定機を作り出していたからね。

そう、レッズの決定的チャンスは「空振り」に終わり、逆に相手は、数少ないチャンスをゴールに結びつけて勝利をモノにしちゃう。

それって、まさに昨シーズンの悪夢の再来じゃありませんか。

でも今シーズンは、チト違う。

まず何といっても、サッカー内容が進化している。そして、その進化の重要なバックボーンである集中力や意志のパワーも、大幅にアップしている。

そして、それだけじゃなく、前述したように、今シーズンは、ツキにも恵まれている・・なんてコトも感じるのですよ。

前半25分の吉田豊のフリーシュート場面。そして後半ロスタイムの、六平光成がフリーで持ち込んだシーン(GKと1対1)。

もちろん、西川周作のスーパープレーなど、物理的なファクターをまず指摘しなければいけないけれど、それでも私は、ツキという要素も、何らかのカタチで作用していたと思っているのです。

とはいっても、それは、「まだ」守備に限ってのこと。攻撃では、まだまだツキに恵まれないシーンの方が、とても多い。

あっと・・ゲーム内容。

この試合でミハイロは、ハーフタイムに、調子の上がらない梅崎司と平川忠亮を、永田充、そしてレッズユース出身で18歳の関根貴大と交替させた。

そしてこの交替が功を奏するんだよ。それによって(!?)レッズの全体的なサッカーの流れが、明らかに活性化したんだ。

まず、ダブルボランチを、いつもの、鈴木啓太と阿部勇樹のコンビに置き換えた(阿部勇樹は、最初スリーバック右サイドで先発した)。

そのことで、中盤ディフェンスが明らかに活性化し、それがレッズの全体的なダイナミズムをアップさせた。

やっぱり、中盤の底コンビは、攻守にわたって、チームの重心であり心臓ということだね。

もちろん(最初ボランチでスタートした!)柏木陽介の出来が悪かったわけじゃないけれど、やっぱり守備では、高さやスピードといったフィジカル勝負になったら不利なことは否めない。

そのことで、守備ブロック全体に「不安定な雰囲気」が漂りがちになっていたのは確かだからね。

ということで後半の柏木陽介は、本来の攻撃的ハーフ(リンクマン)へとポジションを上げ、そのことも、攻守の機能性を大きくアップさせたっちゅうわけです。

そして、右サイドバック(ウイングバック)に入った関根貴大。

18歳・・!? それにしちゃ、堂々と(確実に)ディフェンスしていたし、攻撃でも、抜群のドリブル勝負を魅せていた。

彼の「ドリブル勝負」から、何度か、決定的なカタチが生まれたのですよ。あっと・・レッズの同点ゴールは、関根貴大のドリブル突破を起点にしていたんだっけ・・

あと、ベンチ入りも含めたメンバーを見ながら、とても残念に感じていたのは、山田直輝。

この試合でも、ベンチ外だった。一体どうしたんだろう。誰に聞いても、身体は大丈夫・・後は、メンタル面や試合勘・・なんていう言葉が返ってくる。本当はどうなんだろうね・・。

まあ、とにかく、ツキも含めて、攻守にわたるサッカー内容が着実にアップしている今シーズンのレッズは、必ず「やる」に違いない・・と確信していることを繰り返し強調したい筆者なのでした。

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ということで、FC東京vsフロンターレ・・

この試合では、内容で圧倒したフロンターレ・・というテーマしかないよね。

選手たちのイメージが、確実にリンクしまくる、人とボールを動かすパスサッカー。

輝くような光を放っていた。

風間八宏も言っていたように、とにかく「リズム」が良かった。

トラップ&パス&ムーブ&リターンパス&トラップ&パス&ダイレクトパス・・etc・・ってな感じ。

とにかく、「次」を明確にイメージしているからこその、素早く、正確なトラップが秀逸だった。そして、素早く、とても「良いリズム」で、次へ、次へとボールを動かしつづけるというわけだ。

選手全員の、アタマに描写するイメージが、明確な「ボールの動きリズム」で統一されていると感じる。

素晴らしい。

そんなだから、次、その次の「パスレシーバー」も、明確なスペースイメージと「リズム感」で、動きつづけられる。

いいネ〜・・

そして、(多分)だからこそ、まさに「ゼロトップ・・」ってな、スムーズな、縦横無尽のポジションチェンジ「も」美しく機能しつづけるんだ。

大久保嘉人、小林悠、レナト、森谷賢太郎、そして我らが「牛若丸」。この4人が、まさに「ポジションなし」ってな感じで、どんどんと位置を変えていくのですよ。

特に、大久保嘉人と牛若丸の「タテのポジションチェンジ」が秀逸だった。基本的にはワントップとしてゲームに入った大久保嘉人が、バンバン下がってボールに触りまくるんだよ。相手マーカーを背負ってプレーするのが好きじゃないということもあるんだろうね。

そして、空いたワントップのポジションに、小林悠や森谷賢太郎が、代わる代わる入る。だから、「スピアヘッド不在」というシチュエーションは出てこない。

この事実もまた、フロンターレが、素晴らしくトレーニングされていることの証明だね。

とにかく、この「前線カルテット」に、中盤の底からスピアヘッドまで自在に動き回る牛若丸を加えた「前線クインテット」が織りなす組織サッカーは見応え十分だった。

もちろん、そんな組織サッカーをベースにしているからこそ(相手守備の薄いゾーンでフリーのボールホルダーを作り出せるからこそ!!)、また、この試合で はアンカーに入った、後方からのゲームメイカー、大島僚太のプレーが冴えまくっていたこともあって、大久保嘉人とか牛若丸たちが、たまにブチかますドリブ ル勝負が、この上もなく危険なニオイを放ちつづけるんだよ。

そう、組織プレーと個人勝負プレーが高質にバランスするサッカー。とことん楽しませてもらった。

このコラムで言いたかったことは、そんな、人とボールが「素晴らしいリズム」で動きつづける組織サッカーが機能しているからこそ、縦横無尽で自由自在なポジションチェンジも、抜群の実効性を発揮するということでした。

もちろん、そんなサッカーを展開できる絶対的なバックボーンは、選手1人ひとりが、常に考え、決断し、勇気をもって実行していけること。

ストロングハンド、風間八宏がリードするサッカーが花開きつつある・・

このゲームでは、そのことを強く印象づけられた。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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