湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2014年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第5節(2014年3月29日、土曜日)
- 今日も、2試合のコラムを書きました・・(マリノスvsアントラーズ、 1-3)(ヴィッセルvsレッズ、 3-1)
- レビュー
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- ・・すべてに、もっと執着心をもって臨め!!・・局面での闘いに絶対に負けるな!・・攻守の切り替えを早く、パススピードをアップさせろ!!・・
ハーフタイムに、アントラーズ、トニーニョ・セレーゾが、そんな「檄」を飛ばしたらしい。
その指示を逆から読めば、こんな感じかな・・
・・前半のプレーに(ボールやゴールに対する!?)執着心が感じられなかった・・局面での闘いに負けていた・・攻守の切り替えが遅く、パススピードが足りなかった・・
まあ、前半のアントラーズは、まさにそういうことだったね。
とはいっても、アントラーズは、トニーニョが言うように、ゲーム立ち上がりの前半10分から15分あたりにかけて、積極的なプレッシング守備をベースに、とても素晴らしい組織パスサッカーを展開したんだよ。
でも、そんなダイナミズムが、15分を過ぎたあたりから、パタリと減退し、それ以降は、下がって守るだけになってしまったんだ。
それだけじゃなく、中村俊輔のスーパーなCKから、栗原勇蔵に、スーパーなヘディングシュートを叩き込まれもした。
そんなゲーム展開を観ながら、こんなことを思っていた。
・・この(前半の)内容じゃ、アントラーズが追いつくのは至難の業だろうな・・もちろん、ハーフタイムの監督の指示(檄)の内容にかかってはいるけれど・・そうそう、ドイツも含めて、これまでに何度となく、そんな「ハーフタイムの奇跡」を体感したことがあったっけ・・
そして、その期待がピタリとはまるんだ。後半のアントラーズが生き返ったんだよ。
前半の立ち上がりのような、とても力強く、スマートな組織サッカーが甦(よみがえ)ったんだ。
その「豹変」について、トニーニョが、こんなニュアンスの内容をコメントしていたっけ。曰く・・
・・ゲーム立ち上がりの10分から15分までは・・我々も、しっかりと攻め上がったし、内容も互角以上のモノがあったと思っている・・でも、その後は、マリノスにペースを握られてしまった・・要は、我々が、全体的に下がり過ぎてしまったということだ・・
・・どうしてそうなったのか、その原因はよく分からない・・まあ、言い換えれば、自分たち自身で、落ち込んだ状況を作りだしてしまったということだ・・
面白い。だから聞いた。
・・トニーニョさんのコメントで、(この記者会見では、例外的に、まずトニーニョの方から多くを語ってくれた!)後半のイメチェンの背景だけじゃなく、素晴らしい効果を発揮した、カイオ、ルイス・アルベルト、そして野沢拓也の交替の背景は、よく分かった・・
・・そこで質問だが、トニーニョさんが言っていた、(私もまさに同じ印象を持っているのだが・・)前半15分過ぎからのペースダウンについて・・トニーニョさんは、原因がよく分からないと言っていた・・
・・たしかに、相手のあることだし、心理ゲームであるサッカーのことだから、難しい現象ではあるけれど、私は、リーダーシップの欠如という視点で見ていた・・
・・例えば、小笠原満男・・見ていると、彼が担うべきリーダーシップが十分に発揮できていないと感じられるのだが・・
フムフム顔で聞いていたトニーニョ・セレーゾが、例によって真摯に(そして沢山!)、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・
・・リーダーシップは、とても興味深いテーマだ・・質問にあった小笠原満男だけれど、彼にはリーダーシップが備わっていると思う・・ただ、若い選手に対しては𠮟咤するけれど、ベテランに対しては、モノを言わない傾向が強いかもしれない・・
・・サッカーでは、年齢の差などは関係ない・・チームのために全力で闘う姿勢をモティベートできるのだったら、年齢など関係ないんだ・・
・・優秀なサッカープレイヤーで、リーダーシップも備えている選手は、そんなに多くはない・・そんな選手が欲しい そのテーマについては、もちろん予算も絡んでくる・・・・予算という「壁」がある・・リーダーは、育てられない・・人間としての成熟が大事・・
そしてトニーニョは、こんな興味深い内容もコメントしてくれた。曰く・・
・・ リーダーは、作ることができない・・それは、リーダーシップが、生まれつきの資質かもしれないという意味だ・・もちろん後天的にリーダーシップを発展させられるケースもあるだろうが、そのためには、まず人間として成熟することが大切なんだ・・
・・そしてオレは、全員がリーダーシップを執れるチームが理想だと思っているんだ・・
・・監督やマネージメントから、厳しく要求されて初めて動くのではなく・・主体的に行動できるようになることが大事なんだ・・
・・そのためにも、チームのなかで、しっかりとした建設的なディベートができる雰囲気を醸成することが必要なんだ・・そのことで、チーム全体が徐々に成熟していく・・そして、全員がリーダーだというチームが出来上がれば理想的じゃないか・・
・・そのためにオレも、チームのなかに、厳しいなかでも、同時に、とことん楽しいというクリエイティブな雰囲気を作りだそうと努力しているんだよ・・そう、楽しくなければサッカーじゃないんだ・・
トニーニョ・セレーゾ。
いいね・・
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さて、ということで、ビデオで観戦したヴィッセル対レッズ。
この試合で特筆だったのは、後半にヴィッセルが魅せつづけた、勝利への「貪欲さ」だったですかね。そう、強烈な意志が「炸裂」しつづける、高い位置からのプレッシング守備。
とにかくヴィッセルは、前から、前から・・と、積極的で爆発的なボール奪取勝負をブチかましつづけるんだ。
もちろん、忠実で爆発的な勢いの「チェイス&チェック」を絶対的なベースにしてネ。
そんなアグレッシブ守備のヴィッセルに対し、一点をリードするレッズは、「受け身」に入ってしまっていた。
ヴィッセルが、前から、前から・・と、ボールを奪いに来ているのだから(前へ重心が掛かりつづけているのだから!)、レッズは、下がって「受ける」だけじゃなく、もっと積極的にヴィッセルのボールを奪いにいかなければならなかった。
ヴィッセルが、「イケイケ」の強烈な勢いで、「前」からボール奪取勝負を仕掛けてくるのに対し、レッズは、相手ボールホルダーや次のパスレシーバーを「見てしまう」という、明らかに「詰め」の甘いシーンが続出するんだよ。
それに対してヴィッセルは、爆発的なチェイス&チェックを絶対的なベースに、レッズのボールホルダーや、次のパスレシーバーを素早く「追い込み」、そして協力プレスで取り囲んでボールを奪い返しちゃうんだよ。
そしてボールを奪い返したら、後方から、どんどんオーバーラップしてくるサイドバックなども駆使して、しっかりとスペースを突いていっちゃう。
要は、レッズの守備が、後手後手に回ってしまったということだ。
彼らは、相手のヴィッセル以上にアグレッシブにボールを奪いにいかなければならなかった。
そんな、ちょっと「ジリ貧」の雰囲気だから、ボールを奪い返したレッズの攻撃に勢いが乗っていかない(十分な人数をかけられない!?)のも道理・・ってな展開になってしまったというわけだ。
そしてペドロ・ジュニオールの同点ゴールが決まる。後半15分のことだ。
ここで、二つ目の、注目に値する「グラウンド上の現象」の分析に入っていく。
それは、同点ゴールを奪われたレッズが、うまくペースアップしていけないのに対し(まあ、後半の受け身のプレー姿勢から急にペースアップするのは難しいよね・・)、ヴィッセルは、それまでの勢いを高みで維持するプレッシングサッカーをブチかましてくるんだ。
そんな展開を観ながら思った。
・・そうそう・・だから先制ゴールというのは、様々な意味合いを内包する「心理的なワナ」として機能しちゃうケースも多いんだよね・・
後半の(一点リードする)レッズは、守備を固めてカウンターを狙う・・というイメージだったんだろうけれど、「あの」中盤ディフェンスじゃ、高い位置でボールを奪い返してショートカウンターを仕掛けるのは難しいでしょ。
もしかしたら、同点にされたレッズは、それまでの(受け身の空気が漂う!?)鈍重なテンポのサッカーから脱却できずに、(擬似の!?)心理的な悪魔のサイクルに陥っちゃったのかもしれないね。
もちろんレッズも、ヴィッセル守備を下げるような(押し込むような)時間帯も作りだしたけれど、いかんせん、ボールがないところでの動きの量と質がアップしていかないから、どうしても「詰まり」気味の仕掛けになっちゃう。
そう、相手守備にとっては、まったく怖くない、「眼前ゾーン」でのボールの動きなんだよ。
そして攻め切れない流れがつづくなかで、ヴィッセルの外国人トリオを中心にした効果的なカウンターを喰らっちゃうってな具合だったね。
実際、後半では、レッズが、まったくと言っていいほどチャンスを作り出せなかったのに対し、ヴィッセルは、たくさんの決定機を演出したからね。
あのような展開じゃ、ゲームの趨勢を「逆流」させるのは本当に難しい作業になるということだったんでしょう。
もちろん、ペドロ・ジュニオールに勝ち越しゴールを決められてからは、やっと目覚めたように、ボールがないところでの動きの量と質も大きくアップしていったけれど・・。
でも、時すでに遅し・・。
そして延長1分。ペドロ・ジュニオールからの「一発タテパス」から、マルキーニョスが、見事なカウンターゴールを叩き込むという結末になった。
ところで、ヴィッセルの同点ゴールと勝ち越しゴールは、明らかにレッズ守備のミスからだった。これは、ちょっと反省しなければいけない。
でもサ、「前線」の動きがしっかりと機能していれば、後方のボールホルダーも、前へのパスを出しやすかったはずだよね。
テレビ画面だから、うまく確認できなかったけれど、とにかく、受け手の動きが十分だったら、森脇良太にしても、鈴木啓太にしても、「あんなミス」は犯さなかったはず。フ〜〜ッ・・
まあ、まだシーズンは始まったばかりだし、待望の「山田直輝」と「関根貴大」も交替出場して「片鱗」を魅せてくれた。
これからだ・・これからだ・・
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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