湯浅健二の「J」ワンポイント


2014年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第7節(2014年4月11日、金曜日)

 

ネルシーニョが魅せた優れたゲーム戦術(守備)・・そして、フロンターレの「リズム」が減退したことについても・・(フロンターレvsレイソル、 1-1)

 

レビュー
 
この試合だけれど、ホント、とても興味深い内容だった。

一つは、前半と後半のゲーム内容の変化と、そのバックボーン。

一つは、フロンターレのスーパーな人とボールの動きを司(つかさど)る「あうんのリズム」。

最初のテーマだけれど、前半で特筆だったのは、何といっても、レイソルが魅せた、素晴らしいディフェンスの機能性。

サスガにネルシーニョ監督。彼は、フロンターレ攻撃の「動きのリズム」と、そのやり方について、しっかりとしたイメージを作りあげた。

そのこともあって、前半は、先制ゴールも含め、内容的には、完全にレイソルが牛耳ったんだ。

この「牛耳った」という意味合いについてだけれど、決してポゼッション(ボール支配率)ではありませんよ。そうではなく、あくまでも、攻守における「真の目的」が評価基準なのです。

要は、フロンターレにチャンスを作りださせないというポイントと、ボールを奪い返すというポイントで、明確にレイソルが主導権を握ったということです。

でも後半は、牛若丸が攻撃的ハーフへポジションを上げたこともあって、フロンターレの攻撃リズムが格段にアップした。だからゲーム内容が、動的に均衡した状況になった。

実質的なゲーム内容、またチャンスの量と質ともに、まさに五分五分の勝負だったよね。

ところで、特に前半にレイソル守備が魅せつづけた素晴らしい機能性についてだけれど、実は、その背景には、フロンターレ攻撃の「人とボールの動きのリズムの減退」もあったと思っているんだ。

以前のコラムでも書いたけれど(それについては、「このコラム」も参照して下さいネ)、ここ2〜3週間のフロンターレが魅せつづけた「スーパーなサッカー」では、人とボールの動きの「リズム」が素晴らしかったんだよ。

でも、この試合の前半では、それが消え失せてしまった。

「動きの調子」がいいときのフロンターレは、ものすごく活発に、ボールを「前後にも」動かしつづけちゃう。だから相手ディフェンスの視線と意識が引きつけられてスペースができてしまう。

そしてそこに、まさに「ノールック」ってな感じで、ズバッとスルーパスを通しちゃうんだよ。

もちろん「そこ」には、味方の誰かが走り込んでいる・・ってな具合なんだ。

でも、このゲーム前半でのフロンターレ攻撃は、タテの(人とボールの!)動きが乏しかったことで、まったく怖くなかった。何せ、彼らの仕掛けは、常に、レイソル守備の「眼前」で、ぎこちなく動くばかりだったわけだから。

それに対して後半だけれど、たしかに、牛若丸が上がったことで、少しは「動き」が活性化し、本物のチャンスも作れるようになった。

そして、森谷賢太郎から牛若丸、そこから、スーパーなスルーパスが山本真希へ通り、彼が同点ゴールをゲットした。

それは、まさにスーパーゴールだったし、そのとき「だけ」は、私がイメージする、「スーパーな動きのリズム」が感じられたんだよ。

でも、それ以外は、どうも「動きのリズム」がぎこちないってな体たらくだったんだ。すみませんネ、風間さん・・。

まあ、とはいっても、金久保順が入ってからは、とてもリズムが良くなったけれどネ。

あっと・・。それと、稲本潤一。

これまでの彼のイメージからしたら、とても「イメチェン」なパスのリズムを披露してくれた。これもまた、風間八宏の功績なんでしょうね。

ということで、二つ目のテーマ。そう、フロンターレのスーパーな人とボールの動きを司(つかさど)る「あうんのリズム」。

要は、レナト、小林悠、大島僚太の不在というテーマとも言い換えられるんだよ。だから、風間八宏の聞いた。

・・この三人がいないことで、ここ2〜3週間に魅せつづけた、タテ方向へも、チャレンジャブルなパスが交わされるスーパーなリズムが消え失せてしまったと 感じた・・もちろん後半はリズムが回復してはきたけれど、それでも私は不満だった・・「あの」スーパーなリズムは、あのメンバーでなければダメなのだろう か?・・

そんな質問に対して、風間八宏が、例によって真摯に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれたっけ。曰く・・

・・選手たちには、常に、判断の速さを要求している・・とはいっても、やはり、選手たちのなかで交わされる「あうんの呼吸」が、メンバー構成によって変わってきてしまうことは否めない・・

・・その意味で、たしかにこの試合では、リズムをうまく作れない場面もあったと思う・・

・・でも私は、誰が出てきても、最高のリズムを奏でられるようにトレーニングしているつもりだ・・後半は、中村憲剛(牛若丸)のポジションを一つあげるとか、金久保順をグラウンドに送り込むといったことで、リズムがより良くなったと思う・・

・・また、後半のリズムが良くなったことで、より頻繁に、数的に優位な状況も作り出せるようになったと思う・・

・・要は、あまり動き過ぎずに、互いのポジショニングバランスを上手くマネージすることでも、数的に優位なカタチを作り出せるということなのだが・・

フムフム・・。

前述したように、金久保順だけじゃなく、稲本潤一にしても、しっかりとタテ方向に「も」、素早いタイミングで(良いリズムで!)ボールを動かしていたよね。

まあ、まだまだ、「誰が出てきても・・」っちゅうわけにゃいかないかもしれないけれど、フロンターレが、風間八宏という「ストロングハンド」によって、その発展方向へ進んでいることは確かな事実なんだろうね。

ということで、これからも、「フロンターレのサッカー」を注視していきまっせ。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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