湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2014年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第8節(2014年4月19日、土曜日)
- まあ、たまには、こんな粘りの勝利もいいもんだ・・(レッズvsフロンターレ、 1-0)
- レビュー
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- いやホント、まさに、時間が経つのを忘れる、ものすごくハイレベルな最高のエキサイティングマッチだった。心から楽しめた。
両チームが放ったシュートも、まったく互角だったしね。フ〜〜ッ。
その要因は、もちろん両チームの「実力」が、最高レベルで伯仲していたこと。
またもう一つ、フロンターレの「奇跡的なメンバー構成」が、再び揃ったことも大きかったと思う。そう、ケガで(!?)戦列を離れていたレナト、小林悠、大島僚太が戻ってきたんだ。
たしかに前半は、レッズがイニシアチブを握る時間帯が多かったし、フロンターレ守備ブロックを崩して(サイドゾーンのスペースを活用して!)何度もチャンスを作りだした。
でも逆に、本当に決定的なチャンスという視点じゃ、フロンターレに軍配が上がるんだよ。
二本あったかな、例によって素晴らしい「ボールの動きのリズム」から繰り出したコンビネーション&ラストスルーパスによって、完璧に、レッズ守備ブロックのウラの決定的スペースを攻略して作りだしたフリーシュートチャンスが。
とにかくレッズは、西川周作に感謝しなきゃいけない。この勝利の立役者は、何といっても西川周作だったんだから。
ゲームの流れだけれど、後半は、大きく様変わりした。
フロンターレが、素晴らしい「ボールの動きリズム」をベースに、完全にゲームを牛耳ったんだ。
この、フロンターレの「動きのリズム」という視点については、筆者の新連載「The Core Column」シリーズのなかの「このコラム」を参照してください。
ということで、後半のゲーム内容は、大きく逆流したわけだけれど、それには、二つ要因があると思っているんだよ。
一つは、フロンターレの「奇跡的なメンバー構成」が、「再び」、自分たちの「リズム」を取り戻したこと。
たしかに前半は、(フロンターレの動きのリズムを明確にイメージした!?)厳しく効果的なボール奪取アクションを基盤にするレッズの攻勢もあったけれど、
フロンターレ選手たちにしても、久しぶりの「ベストメンバー構成」ということで、少し戸惑っていた部分があったんだろうね。
でも後半になって、自信と確信のレベルがアップしたことで(!?)彼ら本来の「動きのリズム」が甦(よみがえ)ってきたんだ。
もう一つの要因は、(レッズが!)槙野智章という、「仕掛けのダイナミズム発生装置」をケガで欠いてしまったこと。
そのことが、これほど大きなマイナス要因となってレッズサッカーに暗い影を落とすとは思わなかった。
数日前のナビスコ・コラムで、槙野智章と柏木陽介は、もっとリーダーシップを発揮しなきゃいけない・・なんて書いたけれど、後半では、その2人が抜けてしまったわけだから。
そして、もう一つ。とても興味深い視点もある。
それは、前半には、二つ、三つと、レッズ守備ブロックのウラを突いた決定的チャンスを作りだしたフロンターレだったのに、後半は、あれほどゲームの流れを
ドミネート(支配)したにもかかわらず、ウラ突きの最終勝負コンビネーション(スルーパス)だけは、うまく出せなかったこと。
もちろんその背景には、レッズ守備が、最後まで集中力を切らさずに闘い抜いたことがあるわけだけれど、私が言いたかったのは、その「闘い抜いたこと」の背景にあったコノテーション(言外に含蓄される意味)のことなんだよ。
フロンターレの「ボールの動きのリズム」は凄(すさ)まじいからね。それに「ハマッ」たら最後、誰もが、その動きに、意識と視線をフリーズさせられちゃうんだ。
このことについても、どこかのコラムで書いたけれど、彼らは、その「創造的で活発なボールの動きリズム」によって、相手ディフェンスを「どちらかのサイド」へ引き寄せ、最後は、その背後スペースへ入り込んだ味方フィニッシャーへ、スルーパスを通しちゃうんだよ。
そして、フリーシュートが炸裂する。
何度、そんなフロンターレの見事なウラ突き最終勝負を魅せつけられたことか。その都度、鳥肌が立った。
でも、このゲームの後半では、あれだけゲームを支配していたにもかかわらず、奇異に感じられるほど、ウラの決定的スペースを攻略できなかったんだよ。
私は、その現象について、一つの仮説を立てた。それは・・
・・ミハイロによる指示か、選手たちが話し合うなかで、こんな守備イメージが確立された・・それは・・
・・フロンターレのボール動きに惑わされることなく、絶対に、逆サイドの相手選手をフリーにしない(キッチリと最後までマークしつづける!)ということ・・
私は、その仮説に基づき、ボールがないところでのレッズ守備の動きを観察していた。そして思った。
フムフム・・彼らは、明確に、フロンターレの「ラストパス」を意識しているな・・
そして、そんな創造的で忠実なディフェンスアクションがあったからこそ、「虎の子」を守り切ることができた。
それは、それで、レッズが、立派な勝負サッカーを展開したと言えるよね。
そんな、後半の(フロンターレが凌駕する)ゲーム展開を観ながら、実は私は、こんなことを思っていたんだ。
・・これは、レッズが千載一遇のチャンスをモノにして勝利を収めてしまうに違いない・・
・・まあ、長いシーズンだから、たまには(相手に席巻される!?)こんな展開だってあるさ・・だからこそ逆に、レッズが勝利するチャンスが大きくなるに違
いない・・逆に、レッズがイニシアチブを掌握するようなゲーム展開じゃ、これまで何度も煮え湯を飲まされてきたわけだから・・
そして実際に・・
まあ、たまには、こんな「粘りの勝利」もいいもんだ。
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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