湯浅健二の「J」ワンポイント


2014年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第9節(2014年4月26日、土曜日)

 

レイソルの進化に(ネルシーニョにも)乾杯!・・またレッズにもポジティブな発見が・・(レイソルvsレッズ、 3-2)

 

レビュー
 
いや、ホント、レイソルも進化しているネ〜〜。

この試合で、その事実を再認識させられた。

とにかく、攻守にわたって、チームが一つのユニットとして美しいハーモニーを奏でている・・ってな感じ。

断っておくけれど、決して、柔軟性や応用性に欠ける「ステレオ・タイプ・サッカー」のことを言っているんじゃないよ。

例えば守備では・・

とにかく、「集散」がスマートで素早く、力強いんだ。そして、(ボール奪取の勝負プロセスが一段落したら!)素早く正確に、互いのポジショニングバランスを調整しちゃう。

まあ、それは、ポジショニングバランス・オリエンテッドな組織ディフェンスだと表現できるんだろうけれど、彼らは、ボール奪取アタックを仕掛けていく段に なったら、すごい勢いと正確さで、ポジショニング・バランスを「ブレイク」し、そのボール奪取スポットへ集中していくんだよ。

そのときは、もちろん、ポジショニングバランスなんて意識せず、ボール奪取スポットに、何人もの選手が、「ドカンッ!!」ってな勢いで集まっちゃうんだ。

また攻撃にしても、決して、基本ポジショニングを維持しよう(それに過ぎる)なんていう姿勢じゃなく、虎視眈々とチャンスを狙いつづけ、時が訪れた瞬間に、これまた「組織をブレイク」して、最終勝負シーンへと攻め上がっていっちゃうんだ。

そのオーバーラップは、基本ポジションに関係なく誰にでも(!?)チャンスがある。

でもサ・・、私には明確に見えてこなかったけれど、そんな「組織作りと、組織ブレイク」を繰り返すなかでも、リーダー(まあ、バランサー)が、ポジショニングや人数のバランスを司(つかさど)っているんだろうな。

もちろん、ネルシーニョという「名将ストロングハンド」がマネージするなかでネ。

とにかく、レイソルが魅せつづけた、スマートで力強く、そして変化に富んだ攻撃に「も」舌鼓を打っていた筆者だったのです。

あっ、そうそう・・。

そんなレイソルだから、何度かは、決定的チャンスも作りだしたよね。もちろん、必然的なモノもあったし、偶発的なモノもあった。

でも、その都度、レッズのスーパーGK、西川周作が、ギリギリのところで防ぎ切ってしまうんだよ。

とにかく、西川周作のファインプレーがなければ、たぶん前半で、リードを奪われていたかもしれない。もちろん「タラレバ」のハナシだけれど・・。

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ということでレッズ。

ミハイロは、レイソルのカウンターに気を配りながら、ゲームは、注意深く立ち上がった・・と言っていた。

まあ、そのゲーム戦術マインドは、よく分かる。でもレッズ選手たちは、あれほど、レイソルにゲームの流れを牛耳られるとは思っていなかったに違いないとも思う。

私は、その時間帯のレッズが、ちょっと心理・精神的にも、押され気味(足も止まり気味)になりはじめていると感じていた。

ちょっと、(レイソルに何度かピンチを作りだされた・・という)前段の内容と矛盾するかもしれないけれど、レッズ守備ブロックは、全体としては、とても安定していたと思う。

でもレイソルに、「必然的」なチャンスを作りだされたのも確かな事実だったよね。要は、レイソルの攻め「も」、とても高質だったということなのですよ。

そして、ピンチを防ぎきった西川周作。

彼は、ゴールキーピングの能力だけじゃなく、オピニオンリーダーとしても、グラウンド上のリーダーシップでも、まさに、素晴らしい補強だったということだね。

そして、その西川周作が、ギリギリのピンチを防いでいるゲーム展開なかで、原口元気の先制ゴールが生まれたというわけだ。

それは、見事な(そして落ち着いた)スーパー(カーブ!?)シュートだったけれど、それまでのゲーム展開からすれば、まあ、「唐突な・・」という形容詞からは免(まぬが)れない。

もちろん、一点をリードしたレッズのサッカーが、それまでにも増して、注意深く、落ち着いたモノになっていったことは言うまでもない。

ただ、同じような展開がつづいていた後半15分にコトが起きてしまう。茨田陽生の、右足一閃のダイレクト・キャノンミドルが、ズバッと、レッズのゴールへ飛び込んでいったのだ。

そして、「ここ」から、このコラムのメインテーマが始まるっちゅうわけだ。

そう、そこから、やっと、本当にやっと、レッズが、本来の、力強くスマートな組織サッカーを展開しはじめたんだよ。

少なくとも私には、その同点ゴールから、レッズのサッカーが、180度変わり、ダイナミズム(力強さや活力)が何倍にも膨れ上がったと感じられた。

もちろん、そのダイナミズムの源泉は、守備にあり。

レッズの組織ディフェンスの勢いが、大きくスケールアップし、レイソルを押し込んでいくようになったんだよ。

多分レイソルは、ちょっと面食らったはず。「お〜っ・・やっぱりレッズは強いな・・」

でも、そんな流れのなかで、これまた「唐突」に、レイソルにPKが与えられてしまうんだよ。

もちろん「そのPK」は、レイソルが、押し込まれていながらも、チャンスとなったら、果敢に人数を掛けて押し上げていったことの賜物(たまもの)に違いない。

そんな、チーム一丸となった攻撃的な姿勢があったからこそ、ギリギリのファールを誘発したと思うのだ。

これで、レイソルの逆転。

そこから、レッズのサッカーが、もう一段シフトアップしたことは言うまでもない。

そして、そのシフトアップが功を奏すんだよ。

リードされた3分後には、コーナーキックから、攻守にわたって大活躍を魅せつづけていた阿部勇樹が、「ヘディング一閃」の同点ゴールを叩き込んだのだ。これでゲームは、振り出しに戻ることになったというわけだ。

ところで阿部勇樹。

グラウンド上の「声」なんてスタンドまでは届いてこないけれど、そのプレーぶりから、阿部勇樹に、「リーダーシップを執る」という意志で、何らかの変化を感じていた筆者なのですよ。でも、実際はどうだったんだろうね・・。

あっと、試合。

まあ、後半ロスタイムに入ってから、田中順也に「あの」スーパーシュートをブチかまされたわけだからネ、まあ、仕方ない。

ということで、このゲームについては、「注意深く、落ち着いて・・」というプレー姿勢と、「積極的、攻撃的にブチかますアグレッシブサッカー」との間を、効果的、主体的に「行き来できる・・」というテーマを見出していた筆者なのでした。
そしてサ、それを実現するために必須の「強いリーダーシップ」について、阿部勇樹が示唆した「変化の兆し」という、強〜い希望の光も見ていたんだよ。

まあ、たしかに負けはしたけれど、でも、その中にも、様々なポジティブ要素を見出せたことで、最後はハッピーな感覚にも包まれていた筆者でした。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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