湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2015年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第1節(2015年3月7日、土曜日)
- 開幕マッチは、例によって連チャン・・(マリノスvsフロンターレ、1-3)(ベルマーレvsレッズ、1-3)
- レビュー
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- さて、「J」が開幕しました。
今日は、雨を覚悟でオートバイ移動。もちろん、横浜を経由して平塚まで足を伸ばしましたよ。
ということで、まず、完勝を収めたフロンターレ。
風間八宏のサッカーが、「どんどん」と花開きつづけていると感じる。
とにかく、人とボールの、活発でクレバーな「動き」をベースに、組織サッカーと個のドリブル(スペースをつなぐドリブルと勝負ドリブル)が、素晴らしいハーモニーを奏でつづけるんだよ。
もちろん、ゴリ押しのドリブルもあるけれど、基本は、スペースを攻略してからの(マーク相手と1対1になる状況を作り出してからの)勝負ドリブルだよね。
彼らには、レナトや大久保嘉人、はたまた小林悠といった、その気になったら、静対した状態からだって相手を抜き去っていける本物のドリブラーもいるからね。
とにかく今シーズンの彼らは、完璧な優勝候補だよ。
今日のサッカーを観ていたら、昨シーズンのような「取りこぼし」も少なくなるに違いないと思えてくる。だから、ホンモノの優勝候補。
観ていて楽しいフロンターレのサッカー。
彼らについては、新連載「The Core Column」でも、バルサと同じ「枠組みのなか」で分析したから、「そのコラム」もご参照アレ。
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さて次は、ベルマーレ対レッズ。
この試合は、ベルマーレが先制ゴール(PK)をブチ込むまでと、それ以降で、(レッズ選手たちの意識と意志という視点で!!)まったく違ったゲームになった。
そう、それまでのレッズは、完璧に「眠って」いたんだよ。
だから、攻守の切り替えが素早く、攻撃でも守備でも、レベルを超えた「リスクチャレンジ・プレー」をブチかましつづけるベルマーレに、完璧にゲームを支配された。
そんな、だらしのないレッズを観ながら、また、李忠成、ズラタン、柏木陽介が入っていないメンバー表に目を落としながら・・、「何か、チームのなかで起きているのかい??」なんてコトまで考えてしまった。
でも、結局「それ」は邪推にしかすぎなかった。良かった・・
私は、数日前のACL(ブリスベン戦)での、選手とサポーターの「ストラグル」を観ながら、それが、とても良い刺激になるに違いない・・なんて思っていたんだよ。でも・・
そう、フタを開けてみたら、「この体たらく」だものね。もちろん、レッズの立ち上がりのサッカーが、ヒドかった・・ということですよ。
とにかく、覇気が感じられなかった。そう、意識と意志のレベルが最低だったんだよ。そんなだから、チト、変なコトにまで気が回ってしまったっちゅう次第。
何せ私は、「あの当時」の、曲者ぞろいの読売サッカークラブでコーチをしていたわけだから・・あははっ・・。
でも、ハーフタイムに同僚ジャーナリストの方から、柏木陽介は体調不良、李忠成とズラタンは足に問題をかかえている・・というコトを聞かされたというわけです。
また、先制ゴールをブチ込まれて目が覚めたレッズのサッカーが大きく好転したこともあって、「それ」が杞憂だったと心から確信できたっちゅう次第でした。あははっ・・
それでも、持ち直したとはいっても、レッズのサッカーには、やっぱり「何か」違和感があった。
もちろん、局面でのボールをめぐる競り合いの内実はアップしたし、実際に、ベルマーレにチャンスらしいチャンスは作らせなかった。
それでも、何かが・・
たぶんそれには、後半からの攻撃陣のメンバー構成が、関係していたんだろうね。
そう、後半からは、武藤雄樹、石原直樹、そして興梠慎三と交代した高木俊幸という「小兵トリオ」が、前戦に張ることになったんだ。
まあ、石原直樹については、実際のプレー内容をベースに、期待は大きかった。
でも、武藤雄樹と高木俊幸については、攻守にわたって「積極的に仕事を探す」という視点で(意志という視点で!)とても不満だったんだよ。
だから最初は、期待していなかった。でもフタを開けてみたら・・
たぶん武藤雄樹にしても、高木俊幸にしても、「これまで」は周りに遠慮していた・・っちゅうことなんだろうね。だから、プレーが、とても消極的で受け身だった。
逆に、攻守にわたって積極的に仕事を探しつづける(ハードワークだよ!!)石原直樹については、高く評価していたんだよ。でも、前述の二人については評価は低かったというわけだ。
それが・・
そう、このゲームでは、周りのサポートが十分ではないというシチュエーションが増えたこともあって(!?)、彼らも、自分自身で、苦しい状況を乗り越え、しっかりとボールをキープしたり(タメの演出)、ドリブルで状況を切り拓いていかなければならなくなったんだよ。
そんな厳しい状況に追い込まれた彼らは、フッ切れた。
そう、ドリブル勝負だけじゃなく、パス&ムーブなども含む、自分がコアになったコンビネーションも、効果的にブチかましていけるようになったんだ。
これは、発見だった。
たぶん、彼らも、自分自身のプレー感覚を「取り戻していた」に違いないと思う。「そう、そう・・これがオレの本来のプレーなんだっ!!」ってね。
ということで、そんな彼らの「覚醒と自信の深化」は、頼もしい限りだし、これからのレッズの「化学反応」にも、大いに期待がもてるようになったんだ。
そのことは、とても大きな収穫だった。雨の中、オートバイで駆けつけた甲斐があった。
あっと・・、青木拓矢についても一言(苦言!)。
とても能力の高い選手ですよ。だから、彼の「気抜けのプレー姿勢」が、とてもアタマにくる。
全体的な運動量は、他と比べても大差ない。でも、攻守にわたる、瞬間的な「全力スプリントの量と質」という視点では・・。
この、全力スプリントの量と質という「評価基準」は、本場ヨーロッパのプロサッカーでは、とても重要な指標なんだよ。
もちろん青木拓矢は、何度か、素晴らしいオーバーラップを魅せた。でも、彼の本職は、中盤ディフェンスでの「ダイナミズム」をアップさせることでしょ。
その視点では、彼のプレー姿勢(意識と意志のレベル)は低すぎると感じているわけだ。彼の潜在能力(才能)からすれば、まだ半分も出していないっちゅう感じ。
そう・・、だから、彼のプレー姿勢からは、「そこそこやっていればいいや・・」とか、もっと極端に言ったら、「楽して金儲けしよう・・」などといった、プロにあるまじき「マインド」だって透けて見えちゃうように感じることがあるんだよ。
もっと、もっと、エンスージアスティック(情熱的!)にプレーできないのか??
周りのチームメイトにボールを奪わせるために、もっともっと、汗かきの爆発チェイス&チェック(守備での全力ハードワーク)をブチかませないのか?
彼は、プレー姿勢がアップすれば、必ずや、日本を代表するボランチになれる。
でも、もし彼に、そんな前向きの情熱や意欲がないのだったら・・
イレギュラーするボールを足で扱うという不確実な要素が満載のサッカーは、まさに「意志」のボールゲームなんだからネ。
青木拓矢が秘める優れた才能を体感しているからこそ、本当に惜しい・・と思っている筆者なのですよ。
あっと・・
最後に、ベルマーレのチョウ・キジェ監督。
彼は、まったくブレない。まさに、継続こそチカラなり。
このゲームでも、そのことを体感させてもらい、とてもハッピーな感覚につつまれたっけ。だから、記者会見が終わったとき、思わず拍手してしまった。
このテーマについても、新連載「The Core Column」で書いたから、「そのコラム」もご参照アレ。
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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