湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2015年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第10節(2015年5月6日、水曜日)
- リーグトップチーム同士の対戦としては、とても希有なゲーム展開になった・・(フロンターレvsサンフレッチェ、0-1)
- レビュー
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- ヒエ〜・・。「こんな」ゲームになっちゃうとは・・。
「こんな・・」って言ったのは、前半3分にドウグラスがアタマで流し込んだ先制ゴール(決勝ゴール)のために、その後は、フロンターレがゲームを支配して攻め、サンフレッチェが、守備ブロックを固めて守る・・っちゅう「構図」になっちゃったことでした。
こちらは、実力チーム同士の、攻め合い、ギリギリの(戦術的な)せめぎ合いを期待していたから、まさに肩透かしっちゅう展開だったんだよ。
ゲームを支配しつづけたフロンターレの攻め。
あっと・・そのポイントに入る前に、まずは、サンフレッチェの守備について語らなきゃいけない。
冒頭で、サンフレッチェが守備ブロックを固めた・・と書いた。
微妙だけれど、そこでの「グラウンド上の現象」は、たしかにサンフレッチェが、引き気味に守備ブロックを整備した・・と表現せざるを得ないかもしれない。
私は、サンフレッチェが、守備ブロックを整備しながら、積極的にボールを奪い返そうとしていた・・と書きたかったけれど、あまりにもフロンターレ攻撃の「勢い」が強すぎたために、結局サンフレッチェ守備ブロックは、明らかにフロンターレに押し込まれていたんだよ。
でも・・
そう、サンフレッチェは、森保一監督を中心に、フロンターレ攻撃に対して、イメージ的に、十分な準備を整えていた。
要は、フロンターレの人とボールの「動きのリズム」について深くスタディーし、チーム全体で、ボール奪取イメージを共有していたっちゅうことだ。
だから彼らは、フロンターレの「誘いの動き」に、過剰に反応することなく、常に、フロンターレが狙う決定的スペースを潰す(先回りする!)という共有イメージで対抗してたんだよ。
たしかに風間八宏さんが言うように、そんなサンフレッチェ守備に対しても、フロンターレは、立派に、仕掛けの「流れ」は演出したし、何度かは、決定的なカタチまで作り出した。でも・・
そうなんだよ、彼らは、「いつもの」スマートさと狡猾さがハイレベルにミックスした仕掛け(組織コンビネーション&個のドリブル勝負の高質バランス!)を繰り出していけなかったんだよ。
そこでは、普通だったら完璧にウラの決定的スペースを攻略できるような、素早くスマートでスムーズな組織コンビネーションが「動き」はじめても、彼らがイ
メージする決定的スペースに走り込んだフィニッシャー(=決定的パスレシーバー)が、フリーでボールを持てる(パスを受けられる)シーンは、本当に希だっ
たんだ。
サンフレッチェ守備ブロックは、常に、「追いかけ過ぎず」、無理にボール奪取勝負を仕掛けていき「過ぎず」、落ち着いて、フロンターレが繰り出す、スマートで危険な「人とボールの動き」のリズムを見極めながら、効果的に彼らの仕掛けを受け止めていたんだよ。
たしかに見掛けでは、人数を掛け、下がり気味でフロンターレ攻撃を迎え撃つサンフレッチェ守備ブロック・・ってな感じだけれど、実際のサンフレッチェ守備のコノテーション(言外に含蓄される意味!)は、もっと深かった・・と思う。
ということで、今日の会見での「ベストな発言」を紹介しますよ。
それは、森保一さんの、こんなコメント。曰く・・
・・選手は、楽しみながら守備をしていた・・
・・彼らは、フロンターレの攻撃を、しっかりとイメージし、予測していたからこそ、多くのシーンで彼らの仕掛けを効果的に抑制できたと思う・・
・・そのことは、今後につながるという意味でも、とてもポジティブな出来事だったと思う・・
・・ということで、ここでは、ウチの選手たちが、守備を楽しめていたと主張したいですね・・
そりゃ、楽しいでしょ。
フロンターレの仕掛けの流れを観察しながら、自分たちが準備した守備イメージをベースに、フロンターレ仕掛けの、「次」、「その次」が見えてくるんだから。
ここで、誤解されないように、断っておくけれど、決してフロンターレの仕掛けが、完璧に抑え込まれていたっちゅうわけじゃないよ。
彼らもまた、風間八宏さんが言うように、自分たちの(イメージする!)仕掛けの流れをしっかりと演出できていたんだよ。
でもこの試合では、自分たちが描く勝負イメージをトレース出来るためには、「より大きな忍耐」が必要だったっちゅうことだね。
そして、そんな忍耐の成果として、大久保嘉人の、まさに決定的なヘディングシュートシーンなど、三つの「100%決定機」を作り出した。でも・・
まあ、仕方ない。こんな日もあるさ。
とにかく、「リーグトップチーム同士の対戦としては、とても希有なゲーム展開になった・・」というのが、言いたかったことの骨子ということですかね。
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最後に・・
たしかに全体としては、「そんな」ゲーム展開ではあったけれど、それでも、少しは「変化」もあった・・というポイントで締めようかな。
その「変化」のキッカケになったのが、サンフレッチェが誇る「突貫小僧」、浅野拓磨が、佐藤寿人と交代してグラウンドに立ったことだった。
その選手交代を機に、急に、まさに急に、サンフレッチェが、全体的に押し上げていくようになったんだ。
この試合では初めて、サンフレッチェが、全体的に押し上げることで、人数を掛けてフロンターレを押し込んでいったんだよ。
そしてゲームが、動的な均衡状態に突入していく。そう、それこそが、我々が期待していたゲーム展開だったっちゅうわけさ。
もちろんフロンターレも、機能性の高い組織ディフェンスをベースにボールを奪い返して押し返すんだ。
この時間帯は、そんなシーソー攻防が繰り広げられた。
たぶん10分はつづいたと思う。そして徐々に、それまでのゲーム展開へと「落ち着いていく」んだ。そう、一点を追うフロンターレが、全体的にゲームを支配し、攻め込んでいくという構図。
でも、その「構図」は、前述した選手交代までのモノとは、チト違う。
要は、サンフレッチェ選手たちが、突貫小僧という「飛び道具」を強烈に意識するようになったということだ。
森保一さんは、佐藤寿人をかばっていたけれど、浅野拓磨が入ってからの「変化」は、誰の目にも明らかだったと思う。
そしてもちろんサンフレッチェは、ボールを奪い返すたびに、最前線への一発ロングパスを出し、サポートへ押し上げるようになったというわけだ。
そして、そんなカウンターケースの多くで、浅野拓磨が、何らかのカタチでボールをキープし、「次」につなげただけじゃなく、チャンスのキッカケまで演出したのですよ。
その後、もう1人の「突貫小僧」である野津田岳人も登場し、俄然、サンフレッチェの勢いが増幅していったものです。
もちろん逆にフロンターレも、そんなサンフレッチェのカウンターを抑え込みながら攻め上がり、次の決定的チャンスを作り出したりした。
フ〜〜ッ・・、
最後の時間帯、このゲームは、まさにエキサイティングそのものといった勝負マッチへと成長していった。そう、我々が、試合前に期待していたようにネ。
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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