湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2015年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第16節(2015年6月20日、土曜日)
- 今日はリキを入れて2試合をレポートします・・(フロンターレvs松本山雅、2-0)、(ヴィッセルvsレッズ、1-1)
- レビュー
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- ということで、スタジアム観戦した「フロンターレ対松本山雅」。
私にとっては、久しぶりの川崎フロンターレということになりました。
現在の「J」では、組織プレー(=バロメーターは人とボールの動きの量と質!)と、個の勝負プレーとのバランスという視点で、彼らが最高峰サッカーを展開している(それを志向している!)ことは、たぶん衆目の認めるところでしょ。
彼らについては、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」もご参照アレ。
そんな彼らが展開する魅力的なサッカーを観ながら、思った。
彼らは、もう誰が出てきても、「自分たちのサッカー」をクリエイティブに主張できる・・。
まあ、それはチト「かいかぶり過ぎ」かもしれないけれど・・。
何といっても、ゲームでも、牛若丸(=中村憲剛)が交代出場してきてからは、明らかに、組織サッカーの量と質がアップしたからね。
それでも、大島僚太、中村憲剛、そして小林悠がいない前半については、彼らのサッカーコンテンツがどのように変化するかを、とても興味深く観察していたんだよ。
そして、思った・・っちゅうわけだ。
そのことについて、風間八宏監督に聞いてみた。
要は、「考えつづけることも含めて、このメンバーでも主体的にプレーし、フロンターレのサッカーを表現できていると思う・・誰が出てきても、大きなパフォーマンスダウンはないということなのだろうか・・?」なんていうニュアンスの質問を投げたわけだ。
風間八宏さんは、例によって誠実にコメントしてくれたけれど、そのなかで、もっとも大事だったのは、言うまでもなく、「自ら考え、工夫しつづける姿勢を助
長することが大事・・」というものと、「違うメンバーでも、自分たちのリズムを創造できるからこそ次につながる・・」ってなモノだった。
いいね・・
とにかく今日のフロンターレ「も」、こちらが期待しているサッカーを存分に楽しませてくれた。
要は、基本的なタスク(基本ポジション)に留まるのは、最終ラインセンターの井川祐輔、アンカーの谷口彰悟、そして両サイドバック(エウシーニョと小宮山尊信)くらいということ。
それに対して、スリーバック両サイド選手たちの機を見たオーバーラップも含めて、前戦の4人(森谷賢太郎、レナト、大久保嘉人、船山貴之)が、もう、まさに縦横無尽ってな具合のポジションチェンジを繰り広げるんだよ。
そして、ここが大事なポイントなんだけれど、そんなポジションチェンジを繰り返していても、攻守にわたって、互いのポジショニングバランスが「偏り過ぎる」ことがない。
それが、素晴らしい。
もちろん、そのことの絶対的ベースは、選手個々の「意志=優れた守備意識」にあるわけだ。
それがあるからこそ、相互信頼が深まり、どんどんと、思い切った「リスクチャレンジ」も飛び出してくる。
そんなフロンターレのプレーからは、サッカーが究極の「組織(互いに使い・使われる助け合いの)ゲーム」であることを体感する。とても清々しい。
そんなフロンターレに対して、反町康治監督も認めていたように、前半の松本山雅は、とても「受け身」にプレーした。
反町康治さんは、(本人が言うように!)前半をリトリートして守り切り、後半に勝負を掛ける・・等といった(これは単なる例示だよ!)ゲームプランを組んでいたわけじゃない。
相手は強いフロンターレ。そして彼らのホームということで、選手たちが、自然と「注意深くプレーする」ようになったっちゅうことでしょ。
だからこそ逆に、彼らの「組織ディフェンス」も、とても上手く機能していたんだよ。
チャレンジ&カバー&ボール無しのマーキング&(協力プレスも含む!)ボール奪取勝負&セカンドボール(球際)の競り合い・・等など。
たしかに何度かは、フロンターレの素早いコンビネーションで「ウラのスペース」を攻略されるシーンもあったけれど、それでも、ギリギリのところで守り切れていた。でも・・
そう、前半ロスタイムに先制ゴールを食らってしまったんだ。そして・・
そう、その失点で、松本山雅の「気持ち」が完全に解放された(フッ切れた)。そりゃ、そうだ。「行かなければ」負けちゃうんだからネ。
そして後半・・
そのキックオフから10分を経過するあたりまでに彼らが魅せつづけた、攻守にわたる爆発的なハードワークの積み重ねは、感動的でさえあった。
逆にフロンターレは、その「レベルを超えた勢い」を受け止め切れずに、足が止まり気味になってしまう。こうなったら、もう松本山雅の独壇場。
その時間帯に彼らが作り出した「いくつかの決定的チャンス」は、そこに至るまでのプロセスも含めて、ホントに見応え十分だった。でも・・
そう、松本山雅は、その流れのなかで同点ゴールを奪えず、逆にフロンターレも、徐々に自分たちのサッカーを取り戻していったんだよ。
そして、中盤での「つぶし合い」が格段に盛り上がり、両チームがぶつかり合う球際の競り合いが、俄然、熱を帯びはじめたんだ。
繰り返しになるけれど、後半立ち上がり10分間のフロンターレは、「そこ」で、完璧に「出遅れて」しまったというわけだ。
そんなゲームの流れを観ながら、つくづく思った。サッカーは、ホンモノの心理ゲームだってネ。
まあ、中にゃ、ゲームプランが・・とか、コンディションが・・、はたまた、戦術的な意図が・・とか、難しく考えようとする人たちもいるけどサ。
私は、世界トップのコーチ連中にとって最も大事なイシューが、選手の「闘う意志」をモティベートすることだってコトを知っている。
「それ」が絶対的ベースであり、それが充実していなければ、ゲームプランや戦術的な意図なんて、あって無きがごとし・・だからサ。
あっと、ゲーム。
まあ、その後半10分の時間帯を過ぎてからは「再び」ゲームが落ち着き、フロンターレが順当勝利を収めたっちゅうわけだ。
とにかく、私にとっては、フロンターレの「プレーのリズムという発想」、選手のオプションが増えているという事実、牛若丸(中村憲剛)の底力といった、魅力的な学習テーマがあった。
あっと・・そして、後半スタートから10分間の時間帯で松本山雅がブチかました、「とてもサッカー的な現象」も忘れちゃいけない。
あ〜、面白かった。
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ということで、ビデオ観戦した、ヴィッセル対レッズ。
まず、「1-1」で迎えた後半ロスタイム95分に、右サイド(レッズの左サイド)を崩され、クロスを入れられた決定的ピンチのシーンから。
「あそこ」では、誰もが、しっかりと「クビを振って」周りの状況を(イメージ的に!)把握しながら、絶対にフリーな相手を作らないコトを強烈に意識しなければならなかった。
最初にヘディングでボールに触った石津大介。そして、「そこ」から流れてきたボールに触りそうになった(逆サイドのスペースへ動いた!!)マルキーニョス。
「あそこ」で、最後の勝負の瞬間に、どの相手も「イメージ」できずに、ボールウォッチャーになっていたのは誰だったか。
後でビデオで確認し、しっかりと反省して欲しいね。
あれほどの優れたサッカーでゲームを支配していたレッズが、最後の瞬間の「気抜けプレー」で負けてしまう。それって、悪夢でしょ。
私が言っているのは、「ほんの小さなトコロ」で勝負が決まってしまう・・という現実のコトなんだよ。
だからこそ、「集中力」と「イメージング力」の精進が、ものすごく大事なんだ。
前半では、西川周作と宇賀神友弥が「神様」になったことで難を逃れたけれど(マルキーニョスの空振りとポストに助けられたシーンもあったっけ・・)、そのシーンも、同様の、効果的な「学習オブジェクト」っちゅうわけさ。
とにかく、ビデオを活用したイメージトレーニングほど、様々な意味合いで「実効レベル」の高い学習プロセスはないんだ。そのことが言いたかった。
ゲーム全般については、前述したように、レッズが、まさに質実剛健の「強さ」を発揮したとすることに躊躇(ちゅうちょ)しませんよ。
攻守にわたる組織サッカーのレベルが高いからこそ、個のチカラも最大限に活かすことができる。それがレッズの質実剛健な「強さ」のバックボーンということだね。
そして、だからこそ、最後の勝負の瞬間における「集中力」と「イメージング力」を、より以上にアップさせて欲しいと願っている筆者なのだ。
簡単だけれど、(ビデオ観戦だったこともあるから!?)このゲームでは、もっとも大事なコト「だけ」を集約して主張しようと思った。
その方が、印象に残るでしょ。
ホントに・・。ここで取りあげた、「小さなトコロ」での集中力とイメージング力(≒意志のチカラ)ほど、良いプレイヤーになるために重要になってくるファクターはないんだ。
それだけが言いたかった。
かしこ・・
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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ・・という「興行」について。
既にメディアは、「1.ステージ優勝」なんていうテーマで盛り上がっている。
でも・・ね・・
皆さんもご存じのように、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。
以前の「2ステージ制」とは違い、今シーズンからの「それ」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになるはずだからね。
その後のトーナメントは、まさに「興行」。
そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうからね。
だから、「J」に関わっているサッカー人は、そして読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむっちゅうわけだ。
この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。いかに、2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかが分かりますよ。
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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