湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2015年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第17節(2015年6月27日、土曜日)
- ゲームを観ていて、またまた勝者メンタリティーっちゅうテーマをディスカッションしたくなった・・(レッズvsアルビレックス、5-2)
- レビュー
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- 「レッズは、激しくプレーしつづけた・・攻守の切り替えの早さだけじゃなく、そこから、誰ひとりとしてサボることなく、猛然とボールを奪い返しにくるんだよ・・我々も、前からプレスを掛けてゲームのイニシアチブを握りたかったけれど、叶わなかった・・」
アルビレックス、柳下正明監督が、そんなニュアンスのコメントを残した。
そう、レッズは、素晴らしく積極的な組織サッカーで、内容だけじゃなく、結果でも、アルビレックスを凌駕した。
たしかに立ち上がりの10分ほどは、前から積極プレスを仕掛けてくるアルビレックスに、イニシアチブを握られた。
でもレッズは、そんな「ネガティブ雰囲気」に動じることなく徐々に盛り返し、まさに「自分たちのサッカーを貫いていった。
そのときの「盛り返し方とプロセスの雰囲気」に、ものすごく実の詰まった「何か」を感じた。
ホンモノの勝者メンタリティー!?
以前に何度も触れたように、この2年間つづいた、あの「あり得ない失速」の悔しい体感が残っているから、この表現を使うのには気が引けた。
何せその当時は、繰り返し、「ホンモノの勝者メンタリティーが・・」なんて、一人で盛り上がっていたからサ。そして・・、フ〜〜・・。
でも今シーズンは、これからの「後期」へ臨むにあたって、やっぱり、一丸となれる「キーワード」を共有することは大事だよな・・なんて思い直したんだよ。
そう、今度こそ「ホンモノの勝者メンタリティー」を・・ってな具合。
ここで言う「勝者メンタリティー」のベーシックなニュアンスは、自信にあふれた、攻守にわたる主体的リスクチャレンジ・・とか、結果をイメージしたバランス感覚・・等などってなことになるんだろうけれど、ここでは、グラウンド上の現象に置き換えて表現しようかな。
・・例えば、素早い攻守の切り替えからの爆発チェイス&チェック・・積極的に「仕事」を探すプレー姿勢に「も」、勝者メンタリティーのエッセンスが内包されている・・
・・例えば、協力プレスを積極的に探りつづける姿勢・・例えば、ボールから遠いところから決定的スペースへ走り込む相手プレイヤーをピタリとマークする意志・・
・・例えば、ルーズボールを自分のモノにするための強烈な意志(球際の強さ!)・・例えば、2人目、3人目の協力プレス要員として、積極的に「仕事」を探すという、ハードワーク(≒フルスプリント!?)を繰り返す姿勢・・
・・例えば(攻撃で!)、ボールがないところでスペースへ入り込んでいく積極性・・例えば、コンビネーションの流れに乗って、(とても薄い可能性だとしても!)危険なスペースへ、2人目、3人目のフリーランナーとして走り込んでいく姿勢・・
・・等など、「例えば・・」にはキリがない。
まあ基本的には、どんな状況下でも、自信に裏打ちされた積極プレー(ハードワーク)を繰り出していける・・ということだね。
「そんな強烈な意志」を、どんな逆境に陥っても、しっかりと表現できること。それこそが、勝者メンタリティーを進化&深化させていくための決定的ファクターっちゅうことだね。
でもまだ、チト舌っ足らず。
もちろん、自分たちに「勝負の流れ」が来ないギリギリのゲームで、「この試合は引き分けでもいい・・」と、冷静に判断し、それでチームメイト達をドライブしていける「リーダーシップ」だって、重要な「勝者メンタリティー」の要素だよね。
まあ、この勝者メンタリティーというテーマについては、これからも繰り返しディスカッションしていくことになるでしょ。
あっと・・そういえば、ミハイロも、記者会見で、そんな勝者メンタリティーのエッセンスについて言及していたっけ。曰く・・
・・ヴィッセル戦のあと(ファーストステージチャンピオンになった後!?)、テレビ出演や各種の取材対応など、いろいろな「浮かれてしまうイヴェント」がつづいた・・
・・今日は、そんな雰囲気のなかでのゲームだった・・要は、集中を欠いたプレーが出てもおかしくなかったということだ・・
・・でも選手たちは、スパッと気持ちを切り替え、集中してゲームに臨んでくれた・・
だから聞いた。
・・先ほどミハイロさんは、浮かれた一週間の後のゲームだからこそ大事だったし、そこで、しっかりとしたサッカーが出来たことは大きな成果だったと言われた・・
・・そこで質問だが・・そんな立派なサッカーが出来たことのバックボーンには、この2年間つづいた、とても悔しい経験があったと思うのだが・・
そんな私の質問に対してミハイロは、例によって、とても真摯に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・
・・たしかに、過去2年の、悔しさやショックという「体感」が、このような難しいゲームで「も」立派なサッカーを展開できたということの背景にあったと思う・・
・・世界には、そんなショッキングな出来事が原因で、大きくパフォーマンスを減退させてしまうチームも多い・・でも我々は、そんな逆境を、しっかりと糧にして次へ進化できていると思う・・
・・それが、今シーズンは、あまり良くないサッカー内容でも、しっかりと結果を出せていることの背景にある・・
フムフム、まあ、そういうことなんだろうね。
今日のテーマ、「勝者メンタリティー」だけれど、自分で取りあげておいて言うのも何だけれど、ホントに面白そうだよね。
イレギュラーするボールを足で扱うサッカー。そこには、不確実な要素が満載。だからこそプレイヤーは、瞬間的に変化しつづける状況のなかで、勇気をもって、判断、決断し、リスクにもチャレンジして(実行して)いかなければならない。
そう、だからこそサッカーは、究極の「心理ゲーム」っちゅうわけだ。
フムフム・・興味深い。
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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ・・という「興行」について。
既にメディアは、「1.ステージ優勝」なんていうテーマで盛り上がっている。
でも・・ね・・
皆さんもご存じのように、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。
以前の「2ステージ制」とは違い、今シーズンからの「それ」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになるはずだからね。
その後のトーナメントは、まさに「興行」。
そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうからね。
だから、「J」に関わっているサッカー人は、そして読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむっちゅうわけだ。
この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。いかに、2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかが分かりますよ。
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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