湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2015年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第18節(2015年7月11日、土曜日)
- 2015_J1_第18節・・今節も、2ゲームの連チャンレポートということになりました・・(フロンターレvsFC東京、2-0)&(松本山雅vsレッズ、1-2)・・(2015年7月11日、土曜日)
- レビュー
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- ・・我々は、フロンターレに先制ゴールを奪われるまでは・・いや、2点目の追加ゴールを取られるまでは、高い位置からの効果的なプレスも含め、優れたサッカーが展開できていたと思う・・
・・フロンターレはビルドアップで苦労していた・・でも2点目が入ってからのフロンターレは、彼ら本来の優れたコンビネーションサッカーを魅せていたとは思うが・・
FC東京、マッシモ・フィッカデンティー監督が、そんなニュアンスの内容をコメントしていた。
実はわたしも、ゲーム内容について、同じような印象をもっていたんだ。でも・・
そう、フタを開けてみたら、シュート数が、フロンターレの16本に対し、FC東京は、たったの6本。ちょっと、印象とはかけ離れた「数字的な内容」に驚かされた。
そして、ハタと考えた。
・・そうだよな〜・・たしかに、前田遼一がチャンスを得たし、太田宏介という危険なキッカーを擁するセットプレーでも、何度かはチャンスの芽があったよな〜・・
・・でもサ、全体的に見れば、シュートまで行けるような実効レベルの高い仕掛けプロセスが多くなかったのも確かな事実だよな・・
武藤嘉紀の不在・・!?
でも、そんなコトを質問するのは、チト気が引ける。
だから、武藤嘉紀については呑み込み、FC東京が展開した、効果的なボール奪取プロセの「連動スイメージ」について質問してみた。
・・リーグ随一の「動きのリズム」をもつフロンターレだから、安易にアタックを仕掛けたら、簡単に、ダイレクトパスで抜き去られてしまう・・FC東京は、どのようなイメージでフロンターレのボールを奪い返そうとしていたのだろうか?・・
マッシモさんは、例によって、とても真摯に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・
・・相手のボールが動いているときは、注意深くアプローチする・・そこでは、奪いにいくのか、ウェイティングなのかを明確にする・・
・・そして、フロンターレのボールが足許に入ったときが(トラップしたときが!)プレスを仕掛けていくチャンスというわけだ・・後半も、2点目を奪われるまでは、そんな効果的プレスを仕掛けられていたと思う・・
フムフム・・。
たしかに、中盤でのボールを巡るせめぎ合いでは、互角に近いイメージはあったよね。でも、実際に「数字」を見てみたら、その「差」が歴然としていたっちゅうわけだ。
フロンターレは、例によって、人とボールが軽快に動きつづける、高質なコレクティブ(組織)サッカーを魅せてくれた。
そのコトについては、新連載の「The Core Column」で発表した「このコラム」をご参照アレ。
でも、特に前半は、レナトのドリブル突破や、何度かの、センターゾーンからのミドルシュートなど、どうも組織コンビネーションでスペーを攻略したというイメージは薄かった。
それが、マッシモさんや私の「ゲーム内容イメージ」の根拠になっていたんだろうね。でも・・
そう、後半に入ってからは、フロンターレの人とボールの動きに、風雲急を告げるような「変化」が見られるようになったと感じたんだ(まあ、全体的な印象としては、前述したように互角に近かったけれどネ・・ヘヘッ)。
その「変化」だけれど、要は、素早く軽快な「動きのリズム」だけじゃなく、その動きに「広さ」も加わっていったんだよ。
(カウンターシーンは別にして!)組み立てでは、まず一方のサイドへ展開し、そこから、例によって、スッ、スッと、ボールを動かし、そして気付いたら、最初とは逆のサイドで、まったくフリーのボールホルダーを作り出していたっちゅう具合。
先制ゴールシーンは、まさにソレだった。
素早く、正確に、そしてリズミカルにボールを動かしつづけるフロンターレ。最後は、左サイドで、まったくフリーになっていた小宮山尊信の前のスペースへとボールが運ばれた。
そして最後は、タメにタメた小宮山尊信が、中央にポッカリと空いてしまったゴール前スペースへ、逆サイドから走り込んでくるエウシーニョの足許へ、ピンポイント・グラウンダー(ラスト)クロスを送り込んだっちゅう次第。
また、その後にも、まったく同じような展開から、例によってフリーになった左サイドの小宮山尊信にパスが回り、最後は、ニアポストの勝負スポットに走り込
んできたチームメイトに(たぶんレナトか大久保嘉人!?)、これまたズバッと、ピンポイント・グラウンダー(ラスト)クロスを送り込んだ。
シュートされたボールはゴールに入ったけれど、その前に、オフサイドがあったことでノーゴールっちゅうことになった。
そんなだったから、風間八宏さんに聞かざるを得なかった。
・・今日も、軽快なコンビネーションサッカーを魅せてもらった・・でも、実際のチャンスメイクという視点では、やはりサイドからのピンポイントクロスが効果的だと感じた・・そのポイントについてコメントをいただけないか・・
風間八宏さんは、例によって真摯に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・
・・私は、3辺からバランスよく仕掛けるというイメージをもっている・・要は、両サイドとセンターゾーンということだけれど、もちろん選手たちは、考えながら、効果的なスペースを探す・・
・・もっと人数を掛ければ、真ん中からでも効果的に割って入れると思っている・・
・・でもサッカーでは変化がもっとも大事だから、ソコばかりというわけではなく、一つのサイドを攻め込むことで相手守備をソチラへ寄せ、そこから素早く、センターゾーンや逆サイドを突いていけば、(今日のように)スペースを攻略できる・・
・・クロスによる最終勝負だけれど、もちろん(今日のような!)ピンポイントを決めるというイメージも、選手たちは臨機応変に描ける・・まあ、たしかに、クロスからの(ゴールを奪う!)確率は、とても高いですよね・・
「あの」フロンターレのことだから、サイドスペースをもっと有効活用すれば、今日のようなピンポイント・グラウンダー(ラスト)クロスという「美しいゴール」を量産できるような気がするけれどね。
あっと・・、もちろん「ソレ」が多くなりすぎたら、相手も軽快するようなっちゃうだろうから、風間八宏さんが言うように、「3辺からの仕掛け」という発想をベースに、柔軟な「変化」を付けていけば、再びフロンターレが、リーグの台風の目になること請け合いだぜ。
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さて、ということで、ビデオ観戦した「松本山雅対レッズ」も簡単に振り返ります。
まず何といっても、武藤雄樹がアタマでブチ込んだ先制ゴールシーンに内包されているコノテーション(言外に含蓄される意味)から入っていかざるを得ないよね。
何せ、松本山雅は、あくまでも「人」をタイトにマークする(特に興梠慎三、武藤雄樹、梅崎司のトップスリー!)、マンオリエンテッドな守備のやり方でゲームに臨んでいたわけだからね。
たしかに、忠実に、そして効果的に、レッズのパスレシーバー(人)を潰しつづける松本山雅だけれど、それでも、最終勝負が、スルーパス(コンビネーション)やドリブル突破などではなく、ピンポイントのクロス攻撃の場合は、守り切るのは難しい・・ということなんですよ。
そのコトを象徴していたのが、武藤雄樹が挙げた先制ゴールシーンだったわけだ。
サイドから、(グラウンダーやハイボール)のクロスが上げられるシーンじゃ、「中」のディフェンダーは、自分がマークすべき相手とボールを(相手ボールホルダーの意図を)確実に掌握しつづけるのは至難のワザなんだよ。
だからこそ、相手が、厳しいタイトマンマーク戦術でゲームに臨んできた場合は、クロスボールが、殊の外、効果的っちゅうわけだ。
武藤雄樹の先制ゴールシーンを観ながら、そんなコトを思っていた。
その後は、もちろんレッズが試合のイニシアチブを握りつづけ、追加ゴールのチャンスを何度も作り出す。
彼らは、松本山雅のタイトなマンマークを、素早く、広いダイレクトパスコンビネーションで「外し」つづけるんだよ。
ダイレクトのパスコンビネーションだからね、そこでは、パス&ムーブを、何重にも繰り返さなきゃいけない。でもレッズは、そんなハードワーク・コンビネーションを、いとも簡単にやってのけちゃうんだよ。
ホント、いまのレッズは、最高に強いチームだね。
そう、(あまり強調したくはないけれど・・)深化しつづける勝者メンタリティー。
そんなレッズに、全力で対抗する、立派な松本山雅。
彼らも、チャンスと見るや、まさに鬼神の勢いで、何人もの選手がサポートへ上がっていく。
たしかに数は少ないけれど、それでも、チャンスの流れを、しっかりと、何らかのフィニッシュやチャンスメイクへ持っていってしまうのは、立派としか言いようがない。
そしてフリーキックやコーナーキックを奪ったら、彼らの真骨頂が炸裂するっちゅうわけだ。
そう、セットプレーからのチャンスメイク。
セットプレーを得たときの彼らは、ボールがないところで、まさに「猛禽類の眼」でチャンスをうかがっていると感じる。
誰ひとりとして、「待ちの姿勢」などに陥ることはない。そうではなく、常にアクションを「自ら起こしていく」というマインドにあふれているんだよ。
そんな彼らの確信レベルたるや、まさに限界を突き抜けている。
勝負師、反町康治の「強烈な意志」が選手たちのマインドに乗り移っている・・!? まあ、そういうことなんだろうね。
あっと・・ゲーム。
その後レッズが、ゲームの内容からすれば順当と言える追加ゴールを奪うんだ。でも・・
そう、後半7分に興梠慎三が奪った追加ゴールの10分後には、松本山雅が、待望の「追いかけゴール」をブチ込んじゃうんだ。
そしてゲームが、エキサイティングに白熱していく。
両チームともにチャンスを作り出す。でも、決められない。
最後の時間帯での松本山雅のセットプレーチャンスも含めたギリギリの攻防。それでもレッズは、質実剛健に1点のリードを守り切った。
そのプロセスでは、何といっても、青木拓也の、イメチェンとも言えそうな「強烈な意志のディフェンス姿勢」にスポットを当てなきゃいけない。
これまでは、もう何度も書いているように、「トンコ・トンコ・・」っちゅう、「意志」の感じられない、ぬるま湯のプレー態度ばかりが目立っていた。
「掴み取りたいターゲット」をアタマに描けていないからこその、十分ではない全力スプリントの量と質。そんなディフェンダーは、もう完全に失格なんだよ。
いままでの青木拓矢は、そんな失格の烙印を捺されても仕方のないプレー姿勢だったんだ。私は、彼の能力の高さを知っている。だからこそ腹が立つし、とても歯がゆかった。
要は、彼の場合、ギリギリの「勝負どころ」に臨んだときの大前提になる「意志の爆発」が明確に感じられないのだよ。そう、無為な様子見・・。
いつも書いているように、サッカーでは、勝負へ行かなければ(リスクチャレンジをしなければ!)、ミスもしない。また、そんな受け身で消極的なプレー姿勢が目立つこともない。だから・・
でも、そんなプレー姿勢では、進歩なんて望むべくもないし、チームメイトに対しても、とてもアンフェアだよね。
だから私は、彼の、強い意志が感じられない「ぬるま湯プレー」に腹を立てていたんだ。でも・・
そう、この試合での青木拓也は、「意志の爆発プレー」を連発したんだ。
そんな、青木拓也が魅せた「連続的な意志の爆発プレー」は、記憶にない。だから私は、心の底から喜んでいたし、嬉しかった。
そのときの彼は、明確に、「仕事を探していた」んだよ。そして身体を張っていた。
だからこそ、攻撃にうつったときに、彼の才能プレーが、より光り輝いていた。
彼は、この貴重な勝利の立役者の一人として賞賛されていいと思った。
それにしても、松本山雅がブチかました、最後の時間帯での連続コーナーキックシーン。
レッズを支持する誰もがフリーズしていたに違いない。本当にレッズは、よく守り抜いた。
そして、勝者メンタリティーが積み重なっていく・・。
- お詫び:そのとき何を考えていたのか・・。松本山雅をヴァンフォーレ甲府と混同していました。両クラブを応援されている方々に対し、心か
らお詫びします。ホントに、穴があったら入りたい。また、この間違いをご指摘いただいた方に対し、心から感謝申し上げます。ホントに恥ずかしい・・
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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ・・という「興行」について。
メディアは、「1.ステージ優勝」なんていうテーマで盛り上がっている。
でも・・ね・・
皆さんもご存じのように、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。
以前の「2ステージ制」とは違い、今シーズンからの「それ」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになるはずだからね。
その後のトーナメントは、まさに「興行」。
そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうからね。
だから、「J」に関わっているサッカー人は、そして読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむっちゅうわけだ。
この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。そこじゃ、いかに2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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