湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2015年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第19節(2015年7月15日、水曜日)
- 2015_J1_第19節・・石崎信弘モンテディオがブチかました意志のサッカー・・でもジリ貧ゲーム展開のレッズも、最後まで立派に闘った・・(モンテディオvsレッズ、0-0)
- レビュー
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- いやホント、レッズは、最後の最後まで(勝負どころで!)集中を切らさず、アウェーでの貴重な「勝ち点1」をもぎ取った・・というのがフェアな評価でしょ。
皆さんもご覧になった通り、この試合では、石崎信弘モンテディオがブチかました素晴らしい「意志のサッカー」に拍手をおくるしかないということです。
そう、素晴らしくダイナミックで忠実なディフェンス。
ということで、この試合からピックアップする最初のテーマは、何といっても、モンテディオが魅せた、「堅牢守備がベースになった攻撃のペースアップ」っちゅう現象だね。
モンテディオは、相手がレッズということで(!?)、前回の対戦同様に、全員の「守備意識(闘う意志)」が、天文学的なレベルへと突き抜けていた。
ボール周り(忠実チェイス&チェック)だけじゃなく、カバーリングや、協力プレスを効果的に機能させる「ダイナミックな集散」等などの、ボールがないところでの守備アクションの量と質が、尋常じゃないレベルまで高まっていたんだよ。
もちろん彼らは、引いて(リトリートして)受け身に守る・・なんていう低次元のサッカー(ボール奪取プロセス)なんかじゃないよ。
前戦のロメロ・フランクやディエゴから始まる、積極的な「前からチェイス」をベースに、次、その次というボール奪取(集中)アクションが、見事に連動しつづけるんだよ。
そして、レッズが得意とするボールの動きやコンビネーションの流れ(パス&ムーブや、コンビネーションでのボールなしの3人目、4人目の動き等など!)を、ことごとく封じてしまうんだ。
まあ、それでも何度かは、レッズにもチャンスが巡ってきた。でもそれも、最後の瞬間にブチかます、モンテディオ選手たちの「魂のアタックやカバーリング」によって潰されてしまう。
そして、ここから、最初のテーマに入っていくっちゅうわけだ。それは・・
・・モンテディオが魅せた、ダイナミック守備を絶対的なベースに、そこからゲームのイニシアチブまでも掌握していくというゲームの流れの変化の演出・・
自分たちのサッカーを「うまく」展開できないことで(心理的にネガティブになって!?)、サポートの動き「も」減退していったレッズ。
それに対し、最高のディフェンスを基盤に、何度か、まさに「自分たちのカタチ」である必殺カウンターで決定的チャンスを創り出してしまうモンテディオ。
レッズは、十分にサポートを繰り出していけないことで、「魂パワー」のモンテディオ守備に対して、どうしてもミス(パス)が増え、セカンドボールを拾ったモンテディオに必殺カウンターを喰らわされてしまう・・っちゅうシーンがつづいたんだよ。
そしてモンテディオが、本当の意味でゲームのイニシアチブを握りはじめるんだ。そう、彼らは、流れのなかから「も」チャンスを作り出しはじめるんだ。
そんな「ゲームの流れの変化」が、最初のテーマっちゅうことです。
そんな「ゲームの流れの変化」のバックボーンは、何といっても、モンテディオ選手たちの自信と確信のレベルが、限界を突き抜けてアップしつづけたこと。
もちろんソコには、逆にレッズ選手たちの「自信と確信」が地に落ちていったという側面もあった。
サッカーは本物の心理ボールゲーム・・
このゲームには、そんなサッカーの面目躍如ってなコノテーション(言外に含蓄される意味)が込められていた・・なんてコトも考えていた筆者だったのです。
モンテディオ選手たちは、明らかに、レッズの「意志の減退」を、肌で感じ取っていた。
だからこそ彼らは、「やれるぞっ!!」ってな感じで自分たちを奮い立たせ(素晴らしいセルフモティベーション能力!)、実際にレッズを押し込んでチャンスまでも創り出せたんだ。
そしてここから、二つ目のテーマに入っていくっちゅうわけだ。オブジェクトは、レッズ。
それは・・
那須大亮がレッドカードを喰らったコトも含めて、あんな「ジリ貧のゲーム展開」に落ち込んでしまったにもかかわらず、レッズ守備が、最後の最後まで集中を切らすことなく、立派に闘った・・こと。
彼らは、最後のトコロで、耐えに耐え、粘りに粘って持ちこたえ、立派に「勝ち点1」をもぎ取ったと思うんだよ。
それもまた、高揚しつづけている「勝者メンタリティー」の為せるワザ・・。
私は、そう思う。
それにしてもレッズは、自分たちの「良さ」を、ものすごく効果的に「消されて」しまうという「ネガティブな袋小路」に、見事に押し込められちゃったよね。
そう、擬似の、心理的な悪魔のサイクル。
そんな「グラウンド上の現象」は、ものすごく「堅い殻」に包み込まれているのが常。その「殻」を破るのは容易じゃない。
それもまた、「心理ゲーム」の為せるワザっちゅうわけだ。
そんな「堅く閉ざされた袋小路」から抜け出す唯一の方法。
それは、相手に輪をかけた勢いの「強烈に攻撃的なディフェンス(ボール奪取パワー)」をブチかますこと。あんなゲーム展開を打開していくには、もう、それしかない。
そう、一人の例外もなく全員が、限界パワーで、チェイス&チェックをブチかましていくんだよ。
相手ボールホルダーに対してだけじゃなく、次のパスレシーバーや、フリーランニングを仕掛ける相手へのチェイス&チェック(強烈にタイトなマーキング!!)。
そんな、「フザケルナヨ〜・・生意気な〜っ!!」ってな感じの「逆切れダイナミック守備」のみが、心理的な悪魔のサイクルの、「堅いチェーンを断ち切る」唯一の方法なんだ。
だからこそ、強烈なリーダーシップが求められるっちゅうわけさ。
オレが読売サッカークラブでやっていたときにゃ、「あの」ラモス瑠偉がいたからね。
ヤツは、そんな、チーム内のネガティブな心理を感じ取った次の瞬間から、怒鳴りはじめるんだ。
「テメ〜・・何やってんだ〜!!・・もっと闘え〜っ!!」ってなコトを叫びながら、自ら、次元を超えた「勢い」のチェイス&チェックをブチかましはじめるんだ。
そしてチームに活気が甦ってくる。
今日のレッズを観ながら、そんなコトを思い出していた。
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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ・・という「興行」について。
メディアは、「1.ステージ優勝」なんていうテーマで盛り上がっている。
でも・・ね・・
皆さんもご存じのように、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。
以前の「2ステージ制」とは違い、今シーズンからの「それ」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになるはずだからね。
その後のトーナメントは、まさに「興行」。
そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうからね。
だから、「J」に関わっているサッカー人は、そして読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむっちゅうわけだ。
この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。そこじゃ、いかに2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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