湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2015年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第22節(2015年7月29日、水曜日)
- 2015_J1_第22節・・たしかに最後の20分間のサッカーには落胆させられたけれど・・(レッズvsヴァンフォーレ、1-1)
- レビュー
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- やっぱりサ、「あの」終わり方だからね、ちょっと気持ちが「ささくれ」ちゃうのも道理でしょ。
そう、ヴァンフォーレがブチ込んだ同点ゴールからタイムアップまでの、最後の20分間の(レッズの!)サッカー内容のコトですよ。
後半20分に、ヴァンフォーレ伊東純也に豪快なドリブル同点シュートをブチ込まれ、その競り合いで抜き去られたレッズ守備の岡本拓也がケガで交代。
そしてそこから、それまで優れたサッカーが展開できていたレッズが、まったくといっていいほどチャンスの流れを作り出せなくなったんだ。
それだけじゃなく、後半ロスタイムには、ヴァンフォーレ阿部拓馬に、カウンターの流れから危険なドリブルシュートをブチかまされちゃうんだよ。
そのシーンでは、ヴァンフォーレの逆転勝利が、ゲームを観ていた誰の脳裏にも浮かんだに違いない。それほど決定的なシチュエーションだった。
まあ、最後は、西川周作の右足に「神様が宿った」おかげで事なきを得たけれどね。フ〜〜ッ・・
たしかに、とても蒸し暑かった。だから、時間の経過とともに、両チームの運動量が落ちていくのも自然な流れだった。
もちろん、勝ち点3が欲しいレッズは攻めつづけるけれど、全体的な運動量がダウンしていくゲーム展開では、失点しないように守備を厚くした方のチームが圧倒的に有利なんだよ。
何せ、ボールがないところでの動きの量と質が落ちちゃうわけだからね。
人数を掛けて守る方のチームにとっては、相手の攻撃アクションの全てが「自分たちの眼前」で繰り広げられるわけだから、これほど守りやすいシチュエーションはない。
また、交代出場したレッズ選手の誰ひとりとして、勇気をもって「リスクチャレンジを仕掛けていく」ような攻撃的なダイナミックマインド(意志)を前面に押し出そうとしていなかった。
そして、ミスが怖いから(!?)単に「安全パス」をつないで、足を止めちゃうんだよ。
そんなプレー姿勢って、許されるモノじゃないでしょ。
まあ、武藤雄樹が下がってプレーするようになってからは、少しは「仕掛けのタテパス」が出るようにはなったけれど、いかんせん、周りが「その攻撃マインド」に乗ってこない。
たしかに、「あの」展開じゃ、もう一度ペースをアップさせるのは至難の業(ワザ)だよね。
でも、そんな「闘う意志」が、何人かの選手から「しか」感じられなかったのは、寂しい限りじゃありませんか。
そして最後の時間帯に、ヴァンフォーレ阿部拓馬に、前述の決定的なドリブルシュートをブチかまされちゃうっちゅう体たらく。フ〜〜ッ・・
そんな「ゲームの終わり方」だったから、チト心が「ささくれ」たというわけだ。
まあ、ネガティブな事象ばかりを取りあげても(反省は必要だけれど・・!)、元気を奪われるばかりだから、ここからはポジティブ現象にも目を向けることにします。
前半のレッズは、人数を掛けて守備ブロックを固めるヴァンフォーレを崩し切るトコロまで行けたシーンは希だったけれど、後半は(同点ゴールをブチ込まれるまでは!)、暑い気候をイメージした「柔軟なゲーム戦術」を駆使することで、何度もヴァンフォーレ守備を崩し切った。
後半のレッズは、後方でボールを動かしながら、タテへの(相手守備ブロックの背後に広がる決定的スペースへ向けた!)仕掛けのロングパスを狙うという仕掛けに、より大きなウェイトを置いた・・っちゅうことです。
「それ」が高い実効を発揮できたのは、そのロングパスを狙うパスレシーバーが、常に、決定的スペースへの「飛び出し」を狙っていたからに他ならない。
そう、決定的なコンビネーションの「イメージ・シンクロ」が、素晴らしかったんだよ。
後方で(例えば阿部勇樹とか柏木陽介)が、ある程度フリーでボールをキープする状況。
「それ」によって、決定的なロングフィード・コンビネーションの「スイッチ」が入る。
もちろん、横パスを、「ダイレクト」でロングパスを蹴り出すような高度なコンビネーションもある。
そんな「スイッチ・オン・シチュエーション」を、前戦の興梠慎三や武藤雄樹、はたまた高木俊幸たちが明確にイメージし、ウラの決定的スペースでのパスレシーブを狙うっちゅうわけだ。
また、そのロングフィード・コンビネーションに、3人目、4人目として、両サイドバックや、槙野智章たちが積極的に絡んでいく。
そんな効果的な仕掛けをブチかましつづけるレッズだったから、関根貴大や興梠慎三が、決定的なシュートチャンスに恵まれたのも道理だった。
まあ、それ以外にも決定的な流れを創り出したわけだけれど、でも、決め切れない。
私は、そんな「掴みそこねた」決定的チャンスシーンを観ながら、「これでは、勝負のプロセスが危ない流れに陥ってしまうかも・・」なんてコトを思っていた。
そして案の定・・。
ということで、この3試合、レッズにとっては、とても残念な結果に終わってしまった。
でも、いつも書いているように、サッカーの内容自体は、まったく悲観する必要はない。
またこのゲームでのレッズは、「強烈な蒸し暑さ」という厳しい気候状況にも、柔軟に対応できることを(より明確に!?)証明した。
たしかに(前期とは違い!)、ここのところ結果には恵まれていない。でも・・
そう、いまのサッカー内容(強烈な意志のサッカー)を進展させていけば、必ずや「セカンド・ウェーブ」に乗れる。
とにかく、ここからの「レッズの軌跡」を、わたし自身の学習会としても、存分に楽しませてもらおうと思っている筆者なのであ〜る。
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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ・・という「興行」について。
メディアは、「1.ステージ優勝」なんていうテーマで盛り上がっている。
でも・・ね・・
皆さんもご存じのように、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。
以前の「2ステージ制」とは違い、今シーズンからの「それ」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになるはずだからね。
その後のトーナメントは、まさに「興行」。
そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうからね。
だから、「J」に関わっているサッカー人は、そして読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむっちゅうわけだ。
この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。そこじゃ、いかに2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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