湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2015年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第25節(2015年8月22日、土曜日)
- レッズにとって、様々な意味合いの「深くて広い意義」が内包されたウィニングマッチだった・・(レッズvsベガルタ、3-1)
- レビュー
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- いや〜、ホントに良かった、良かった。
何が良かったのかって!?
もちろん、「結果」もそうだけれど、そこに至るまでのプロセスが、特筆だったんだよ。
そう、あれほど「結果」を競り合っているゲーム展開のなかで(もちろんゲーム展開のイニシアチブはレッズが握りつづけている!!)、しっかりと追加ゴールをブチ込めたことで、「横綱相撲の勝利」を(まさに自らのチカラで!!)つかみ取ったというわけだ。
そりゃ、点差をつけて勝利したゲームはたくさんあるよね。
でも、そのほとんどが、「最初から相手を圧倒してゴールを重ねた勝利」とか、「相手の勢い(意志)や集中力が目に見えてダウンしてきたことで追加ゴールを挙げられた(点差が開いた)勝利」・・ってな感じだった。
それに対して、優れた若手プロコーチ、渡邉晋監督が率いるベガルタは、本当に、最後の最後まで意志と集中力が途切れなかった。
もちろんベガルタは、レッズ守備を崩してチャンスを作り出すのに四苦八苦していたわけだけれど、それでも彼らは、最後の最後まで、何らかの「具体的目標イメージ」を見据えて闘った。
だからこそ、レッズの、(苦労して!?)挙げた追加ゴールによる順当な(余裕の)勝利には、格別の意義があったと思うわけだ。
そう、レッズ選手たちは、ギリギリの(結果をめぐる!)競り合いのなかで追加ゴールを奪って「勝ち切れた」という体感から、確実に、自信と確信のレベルを深化させたと思うんだよ。
もちろん、その自信と確信は、「闘う意志」を高揚させる。
一昨年シーズン、そして昨シーズンのレッズは、1点差に泣いたゲームが多かった。
内容で大きく上回っていながら、ギリギリのところで負けてしまうっちゅうゲームが多かったんだよ。多くのチャンスを潰しつづけ、最後は、相手のワンチャンスに泣かされた・・とかネ。
そして、レッズには、勝負弱い・・っていう、有り難くないイメージが付きまとってしまう。
もちろん選手たちの「言いしれぬ不安感」も増幅され、それが選手たちの心の奥底を、徐々に「蝕んで」いく。
でも、そんな厳しい「現実の体感」を積み重ねた今シーズンの彼らは、様々な意味合いでフッ切れたと思う。
彼らは、内容で上回るだけじゃなく、勝利を「も」しっかりと掴み取れるほどに洗練され、粘り強くなっていると感じるんだよ。
そう、「もう、やるっきゃない・・」ってな強い意志に支えられた立派な(ホントに粘り強い!)闘いが展開できているんだ。
もちろん「そこ」には、ミハイロ・ペトロヴィッチの、優れた「首尾一貫心理マネージメント」が成果を魅せはじめてきているという側面もあるでしょ。
そう、選手一人ひとりが主体的に考え、強い責任感と強烈な意志をもって(攻守にわたって)リスクにもチャレンジしていく・・という、本物の(高質)プロである個人事業主のグループ。
だからこそ、これまでとは「逆の現象」も起きてくるっちゅうわけだ。
そう、幸運に恵まれた勝利。
まあ、そんな書き方をしたら、(様々な意味合いで覚醒し、強烈な意志をブチかましつづける!)選手たちに失礼だろうけれど、それでも、確かに今シーズンは、幸運に「も」恵まれているよね。
そうだね〜・・、攻守にわたって強烈な意志を前面に押し出せているからこそ掴み取れている「ラックの恩恵」ってなことなんだろうね。
あっと・・。また別のテーマ(視点)もあった。
素晴らしいサッカーで、内容的には圧倒したけれど、結局は相手のワンチャンスに沈められた、最近のサンフレッチェ戦とグランパス戦。
またそれ以外でも、守りを固める相手ディフェンスに苦労させられ、結局は引き分けに持ち込まれてしまったというゲームもあった。
あれだけの「無敗シリーズ」をつづけていた直後の「不運」。だから、ちょっと、悪い「雰囲気」が漂っていた。
でも私は、何度もコラムに書いたように、「この内容のサッカー(選手たちの強い意志!)だったら、必ず、セカンドウェーブが来るはずだ・・」って確信しているし、実際に・・
とにかく今のレッズには、どんなに「悪い雰囲気」や「心理的なネガティブサイクル」にまとわりつかれようとも、「それ」を打破していくだけの、物理的、心理・精神的な「内実」が詰め込まれていると思うんだよ。
そんな、悪い流れを断ち切って、再び、自分たち主体でポジティブ(良いサッカーと結果の)ウェーブに乗る・・という視点でも、今シーズンのレッズは、一味も二味も違うと思うわけだ。
最後に・・
ミハイロ・ペトロヴィッチの「采配」にも触れなきゃいけない。そう、選手交代。
後半20分には、柏木陽介を少し休ませるため(!?)と中盤ディフェンスを強化するために(!?)青木拓矢を投入する。そして実際に、中盤ディフェンスが、着実に安定していった。
そんなゲーム展開の「揺動」を感じながら、ミハイロ・ペトロヴィッチが、今度は、これまた疲れの見えた興梠慎三に代えてズラタンを投入するんだよ。
要は、中盤ディフェンスの安定を目的にした青木拓矢につづき、前戦での「組み立てとチャンスメイクの仕事人」だった興梠慎三に代えて、高さとパワー(またスピードも!?)に支えられた「一発の勝負力」があるズラタン「も」投入したっちゅうわけだ。
皆さんも観られたとおり、そんな「攻守にわたる二つの思惑」が、まさにピタリとツボにはまったっちゅうわけだ。
このハードマッチには、わたし自身の「深い」学習機会という意味合いも含め、とても意義深いコノテーション(言外に含蓄される意味)が内包されていたんですよ。
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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ・・という「興行」について。
メディアは、「1.ステージ優勝」なんていうテーマで盛り上がっている。
でも・・ね・・
皆さんもご存じのように、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。
以前の「2ステージ制」とは違い、今シーズンからの「それ」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになるはずだからね。
その後のトーナメントは、まさに「興行」。
そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうからね。
だから、「J」に関わっているサッカー人は、そして読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむっちゅうわけだ。
この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。そこじゃ、いかに2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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