湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2015年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第26節(2015年8月29日、土曜日)
- マリノスがブチかましたスーパーパフォーマンスに拍手!・・まあ、こんな日もあるさ・・(マリノスvsレッズ、4-0)
- レビュー
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- まあ、仕方ない・・
ミハイロも会見で言っていたように、「こんな日もあるさ・・」ってなゲームだった。
それともう一つ。
(これまたミハイロが言っていたように!)今シーズンの三敗のうち、こんなに「相手の戦術的なツボにはめ込まれて喫した敗北」は初めてだった・・っちゅう事実は、あるよね。
要は、内容で完璧に相手を凌駕しながら、ワンチャンスに沈められたサンフレッチェ戦やグランパス戦とは、まったく内容の異なるタイプの敗戦だったっちゅうことです。
とはいっても、この点差が、両チームが秘める(サッカーの)実力コンテンツを「象徴していた」わけじゃ全くない・・という事実だけは再認識しておかなきゃいけない。
様々な、物理的、戦術的、心理・精神的、(選手個々の!?)インテリジェンス&パーソナリティー的などなどの要因で、ゲーム展開が、まったく違うモノになってしまう・・っちゅうことさ。
それにしても、「この日」のマリノス守備は、強かった。ホントに強かった(後述)。
それに彼らの場合、このところレッズに勝てていなかったという「意地」もあったんだろうね。
そう、彼らは、頂点レベルの「意志のサッカー」を、最後まで「やり切った」んだよ。
もちろん彼らは、中村俊輔とアデミウソン、はたまた突貫小僧(齋藤学のことだよ・・ヘヘッ)という、最終勝負プロセスの「内容」に決定的な影響を与えられる「個の才能」も擁している。
そして・・、ここが最も重要なポイントなんだけれど、そんな「個の才能」連中が、自分たちが得意とするツボ(勝負イメージ)に、本当にピタリと、何度もはまり込むような素晴らしい勝負プレーをブチかましたっちゅうわけだ。
決してレッズ守備の出来が悪すぎた(マリノス攻撃のツボを抑えきれずに振り回された)・・っちゅうわけじゃない。
でも、マリノスの個の才能連中は、ゲームの立ち上がりから、何度も自分たちの「攻撃のツボ」を光り輝かせたという事実は残る(レッズ進化のための反省材料)。
アデミウソンが、ほんのわずかなスキを突いて危険なミドルシュートをブチかましたり、中村俊輔が素晴らしいゲームメイクを披露したり(チームメートたちは、常に中村俊輔を探していた≒彼らの自信の象徴!!)。
もちろんレッズは、マリノスのセットプレーでは、常に中村俊輔に冷や汗をかかされた。
ことほど左様に、前半のレッズ守備は、マリノス最終勝負がツボにはまったときの「危険度」を、何度も「体感」させられたんだよ。
そして、ここが私の視点だけれど、そんな危険(冷や汗!?)体感は、レッズ選手たちの「心を乱す」のに十分なパワーを秘めていたと思うわけだ。
もちろん、観ているこちらも、そんなレッズ選手たちの「心の揺動」を、何となく感じていた。
中村俊輔がボールを持ったら、「どうせ取れないし・・行き過ぎたらウラを取られて置き去りにされちゃう・・」と、少し引き気味で様子見になってしまった
り、アデミウソンがボールを持ったら、ちょっと焦り気味に「間合い」を詰め過ぎちゃったり(だから軽く外されてミドルをブチかまされちゃう!!)。
そうそう・・、レッズの前半での攻撃(反撃)についても言及しとかなきゃ。
でも、まあ、そんなマリノスに対してレッズが、まったくといっていいほど、流れのなかから攻め切れなかった(チャンスを作り出せなかった!)というのは事実だから、そんなに深く分析する必要もないんだけれど・・ね。
とにかく私は、流れのなかから、チャンスらしいチャンスを作り出せないレッズ・・という「事実」に対して、ちょっと戸惑っていたんだ。
何せこれまでは、流れのなかで、繰り返し、相手守備の背後スペースを攻略してしまうような(パス&ムーブや、3人目、4人目のフリーランニングが組み合わされた!)優れたコンビネーションを体感させてもらっていたわけだからね。
それも、相手が強ければ強いほど、そんな「圧倒的なサッカー内容」を、より光り輝かせられるという頼もしさだった。それが・・
まあ、とにかく、この日のマリノス守備には、シャッポを脱ぐしかない。
マリノスのモンバエルツ監督にも、「とにかくボールがないところでの守備アクションの質が素晴らしかった・・だからタイミングよく、高い位置でボールを奪い返して必殺カウンターをブチかませた・・」なんていう内容を語ってしまった。
まあ、その内容については、モンバエルツ監督も、アグリーだったね。
要は、マリノス守備ブロックが、レッズ得意のコンビネーションを、しっかりとイメージしながら守備に入っていたっちゅうことだ。
・・様子見になることなく・・それでも、「行き過ぎる」こともなく・・
マリノスは、そんな、メリハリの効いた「ボールがないところでの守備」と「協力プレス」が炸裂させつづけた。
そこで展開された、組織的な(イメージ連動)ディフェンスの中心的な存在だったのは、言わずもがなだけれど、両ストッパー(中澤佑二とファビオ)とダブルボランチ(中町公祐と三門雄大)で構成する「センタースクエアー」だった。
その機能性は、もう、抜群。もちろん両ストッパーのヘディングの強さも素晴らしかったしね。
後半のレッズ。
たしかに、完璧にイニシアチブを握って(人数をかけて!)攻め込んだ。
そんな「いつものレッズの雰囲気」に、ちょっと胸をなで下ろしたっけ。それほど、前半のゲーム内容には課題が山積みだったんだ。
でも、その割には、決定的チャンスの量と質が、満足いくレベルには到達しなかった。
それほど、今日のマリノス守備ブロックは、強力だったということか。フ〜〜・・
最後に・・、もういちど中村俊輔。
ホント、観ていて、ほれぼれさせられた。
チカラの抜けた美しいトラップから、ものすごくシンプルで効果的なタイミングでパスを回す(ボールを動かすマネージメント!!)。
たまには、スッと「タメ」ながらレッズ選手の逆モーションを取り、逆サイドへの正確なサイドチェンジパスをブチかましたりする。
もちろん前が空いたら、すかさず(スペースをつなぐ)ドリブルや、勝負のドリブルをブチかます。
まあ、セットプレーやラストパスの凄さについちゃ、もう書く必要もないでしょ。
とにかく、完璧に「復調した」中村俊輔とともに、これから、マリノスの逆襲がはじまる・・ってなコトに思いを馳せていたっけ。
あっと、レッズ・・
ミハイロも言っていたように、この敗戦の「要因」を、不必要に(こじつけるように!)探すような愚だけは、止めて欲しいね。
「あの」中村俊輔のフリーキック&コーナーキックや、突貫小僧(齋藤学)のゴールは見事だったし、特に(中村俊輔の!)先制フリーキックゴールについちゃ、誰も西川周作を責めないでしょ。
まあ確かに、アデミウソンにシュートチャンスを「安易に!?」与えてしまった球際での競り合いや、相手のカウンターシーンを効果的に潰せなかったり、その
流れで、相手(シューター!)をフリーにしてしまうようなポジショニングミス(周りの状況に対応したイメージングのミス!!)といった戦術的な内容につい
ては、ビデオで「反芻」する必要はあるけれど・・ね。
まあ、次だ、次だ・・
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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ・・という「興行」について。
メディアは、「1.ステージ優勝」なんていうテーマで盛り上がっている。
でも・・ね・・
皆さんもご存じのように、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。
以前の「2ステージ制」とは違い、今シーズンからの「それ」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになるはずだからね。
その後のトーナメントは、まさに「興行」。
そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうからね。
だから、「J」に関わっているサッカー人は、そして読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむっちゅうわけだ。
この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。そこじゃ、いかに2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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