湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2015年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第31節(2015年10月17日、土曜日)
- 2015_J1_
第31節・・ベルマーレがブチかましつづけた意志のサッカー(粘りの連動ディフェンス!!)・・また、内容的には問題ないレッズ・・まあ「こんなこともあ
るさ」ってなゲームだった・・(FC東京vsベルマーレ、1-2)、(ガンバvsレッズ、2-1)・・(2015年10月17日、土曜日)
- レビュー
-
- すごかったネ〜、ギリギリのせめぎ合い。
ホント、のめり込むほどに堪能させてもらった。
両チームともに、特にディフェンスでの「意志のプレー」が特筆のチームだよね。
FC東京については、以前のコラムで、「マッシモ・フィッカデンティは、FC東京をイタリアにしてしまった・・」なんていうタイトルのコラムを書いたっけ。
でも、このゲームに関してだけは、総合力で、FC東京に一日の長があることで、やっぱり、ベルマーレの意志のディフェンスの方に、「より」感動させられたっちゅうわけだ。
彼らは、抜かれても、抜かれても、必死に追いかけ、そして爆発スライディングでボールを奪い返したりしてしまう。
また、ボールがないところでの「アクション」の量と質も、本当に素晴らしいから、マーキングやカバーリング、また協力プレスでの集散アクションなども見応え十分だぜ。
彼らは、誰一人として「波に流されたり」せず、常に、ホントに一つの例外もなく、仕事(ハードワーク)を探しつづけるんだよ。
もちろん、何度もピンチに見舞われた。
でも、そのたびに、危ないスポット(最終的にシュートを打たれる可能性の高いスポット!!)に、誰かが入り込み、しっかりと備えるんだ。
FC東京がスルーパスを送り込む場面でも、(特に太田宏介の!!)必殺クロス場面でも。
この「現象」については、大住良之さんが質問していたし、私も彼の見立てにアグリーだったけれど、確かにこの試合では、太田宏介のクロス攻撃が、うまく「ツボにはまら」なかったよね。
でもその現象は、決して、太田宏介がブチかますクロス攻撃の「実効レベル」が低かったからじゃないと思う。
そうではなく、ベルマーレの「意志のディフェンス」が、抜群の機能性を発揮しつづけたからに他ならないと思うわけだ。
何せ、太田宏介の必殺クロスが狙うスポットには、常に二人のベルマーレ選手が入り込んでいるんだから・・ね。
一人は、そのスポットを明確にイメージし、カバーリングとして(事前に!)入り込んでいたベルマーレ選手。
そして、もう一人が、そのスポットで、太田宏介からのクロスボールを「叩こう」する東京の選手を、忠実にマークしつづけていたベルマーレ選手。
私は、そんな、「太田宏介クロス潰し」のシーンを何度も目撃したぜ。
とにかく、そんなこんなで、私は、ベルマーレの守備に対して(そこで炸裂しつづけたスーパーな『意志』に対して!)、心の底からの拍手をおくっていた。
- そんな「湘南スタイル」を貫くベルマーレ。彼らについては、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も、ご参照アレ。
まあ、そんなだから、ベルマーレの個人をピックアップするつもりはない。あの、素晴らしい連動(スーパー粘り)ディフェンスは、まさにチームワークそのものだから。でも・・
そう、一人だけ。
この試合での先制ゴール場面でアシストを決めた、高山薫。
彼の、攻守にわたる素晴らしいハードワークの内実については、もう書くまでもないよね。私も、彼を観るたびに感動させられている。
また、先日の天皇杯3回戦(BMWスタジアムで松本山雅に惜敗した勝負マッチ)では、交替出場してから、ものすごい「意志の炸裂プレー」を魅せた。
それは、それまでの彼のプレーイメージとは、ちょっとタイプが違うモノモノだった。
例によっての、攻守にわたる「最前線での爆発ハードワーク」は、そのままに、ボールをもってから、より積極的に、個の勝負に挑んでいったんだよ。
ドリブル突破チャレンジは言うまでもなく、決定的スルーパスを出すための「創造的なタメ」を演出したり、決定的コンビネーションの仕掛け人になったり。
たしかに、スーパーゴールも決めたけれど、交替出場してからの総体的なプレーコンテンツには、本当に、魅力的なコノテーション(言外に含蓄される意味!!)が満載だったんだ。
そんな「イメチェン・プレーの片鱗」は、このゲームでも感じられたっけね。
彼は、攻守ハードワークは「そのまま」に、もっと、もっと個の勝負にチャレンジすべきだと思う。
絶対的キャプテン、永木亮太とともに、今のベルマーレをジャンプアップさせるための「支柱」の一人なのだから。
実は、このポイント(主体的な意志のサッカー!)について、チョウ・キジェ監督に質問したんだよ。でも、まあ、そのテーマについては、新連載の「The Core Column」ででも書きましょうかネ。
とにかく、あれほど、選手たちを「主体的に闘う気持ちにさせられる・・」という、チョウ・キジェの心理マネージメントに対して、心から拍手を送っていた筆者なのであ〜る。
________________
ということで、ガンバ対レッズ。
それにしても「あの」交通事故ゴール(阿部浩之の先制ゴール!)によって、かなりゲーム展開が(選手たちのゲーム展開イメージが!?)変わってきちゃったよね。
まあ、変わってきたというか、当たり前の展開になった・・とも言える。
そう、ガンバが、守備ブロックを固めてカウンターを狙う・・という展開。
逆にレッズは、ボールを「持たされる」ようになって、動きが停滞気味になってしまう。
そう、精神衛生上も、あまりポジティブではない状態。それじゃ、例によって、(ダイレクトパスコンビネーションが少ないことも含めて!)うまくスペースを攻略できない「寸詰まり」の展開になってしまうのも道理だった。
とはいってもレッズは、たまに上がってくるガンバの「組織的な攻め」の逆を突いた(擬似)カウンターから、武藤雄樹や興梠慎三、はたまたセットプレーからもチャンスを作り出したけれどネ。
ということで、前半は、かなりフラストレーションが溜まる展開だった。でも・・
そう、後半は、高木俊幸が入ったことで(関根貴大との交替・・梅崎司が右サイドバックの位置へ!)、より、サイドからの効果的な仕掛けが増えていった。
それだけじゃなく、(高木俊幸によるセットプレーチャンスも含めて!)立ち上がりから、レッズが何度も決定機を作り出すんだよ。
高木俊幸は、先日もコラムで書いたけれど、ホントに良くなっている。
「変な遠慮」がなくなり、より、自分が主体になってリスクチャレンジを仕掛けていけるようになった(実のある自己主張ができるようになった!?)ということなんだろうね。
だからこそ、コンビネーションでもセットプレーでも、はたまた個のエゴイスト勝負(ドリブル突破勝負)でも、周りのチームメイトが「頼りにする」ほどの実効プレーをブチかませるようになった。
特筆なのは、パスを受ける動きが、抜群に活性化したことだね。
長い距離のフリーランニングや、(相手マーカーを背負ったカタチでの)足許への鋭いタテパスを要求したりと、ボールがないところでのプレーの実効レベルが大きくアップしているんだ。
後半立ち上がりの、決定的的なクロス攻撃の仕掛け人は、高木俊幸だった。「あの」二つのクロス攻撃は惜しかった。
でも、決められない。そしたら・・
そう、後半13分に、遠藤保仁のフリーキックから、交替出場した長澤駿の(フリックで流すような)ヘディングシュートが、コロコロと、ファーサイドのゴールネットに入っていっちゃったんだよ。
そりゃ、落ち込むよね。
そしてゲームが、(ある程度コントロールされたカタチで!)オープンなモノへと変容していった。
要は、2点リードを奪ったガンバが心理的に「解放」され、より積極的に攻め上がっていくようになった・・っちゅうことでしょ。
もちろん対するレッズも、より効果的にチャンスを作り出せるようになった。
それにしても後半ロスタイムにズラタンがブチかました「100%」チャンス。
「あれ」が外れたんだから、もう今日は「レッズの日」じゃなかったって諦めるのが肝要だね。
そう、次だ、次だ。
______________
ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ・・という「興行」について。
メディアは、「1.ステージ優勝」なんていうテーマで盛り上がっている。
でも・・ね・・
皆さんもご存じのように、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。
以前の「2ステージ制」とは違い、今シーズンからの「それ」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになるはずだからね。
その後のトーナメントは、まさに「興行」。
そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうからね。
だから、「J」に関わっているサッカー人は、そして読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむっちゅうわけだ。
この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。そこじゃ、いかに2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。
==============
最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
-
===============
重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
==============
ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
-
-
-
-