湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2015年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第6節(2015年4月16日、木曜日)
- レイソル監督、吉田達磨さんに乾杯!・・(レイソルvsアントラーズ、1-3)
- レビュー
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- ・・たしかに負けた・・でもそれは、今シーズンに喫した二つの敗戦とは、内容がまったく違う・・私は、このゲームでは、大きな転機として、次につながるサッカーを展開できたと思っているのだ・・
・・そこで選手たちがピッチ上に表現した素晴らしい集中力、走り切る強烈な意志・・その内容に、とても満足している・・
記者会見の冒頭、レイソル吉田達磨監督が、確信を込めた表情で、そう言い切った。
この試合、アウェーのアントラーズが、「1-3」というスコアで大勝を収めた。でも・・
そう、私も、吉田達磨さんと同様に、内容的には、レイソルが、「有為な差」をもってゲームのイニシアチブを握りつづけたと思っているのですよ。
ボールがないところでの動きの量と質で、明らかにレイソルに後れを取っているアントラーズ・・ってな具合。
そんなだから、アントラーズ攻撃では、足許パスのオンパレードになってしまうのも道理。そして、個のブツ切り勝負をブチかましていくばかり。
そんなだから、流れのなかでは、まったくウラスペースを突いていけなかったアントラーズだったけれど、唐突に、セットプレーから先制ゴールを奪ってしまうんだ。そう、それもまたサッカー。
対するレイソル。
とにかく彼らは、攻守にわたるハードワークの量と質で、完璧にアントラーズを凌駕していた。
そして、長い距離の「追い越し」オーバーラップ&スルーパスなどで、アントラーズ守備ブロックのウラに広がる決定的スペースを何度も攻略しちゃう。
ことほど左様に、戦術的には、レイソルに一日以上の長があったと評価していた筆者なのです。
だから、レイソルが同点ゴールをブチ込んだ後半のゲーム展開を観ながら、「これは、レイソルに決勝ゴールが生まれるのも時間の問題だな・・」なんて思っていた。
でも実際は、ワンチャンスをモノにしたアントラーズがリードを奪い、後半ロスタイムには、レイソル守備が冒した「自爆ミス」で3点目までもブチ込まれちゃった。
確かにそれらの失点は、ゲーム内容的なロジックからすれば、「理不尽」ってな印象の方が強いモノだったけれど、そこには・・
・・アントラーズの勝ち越しゴールが生まれた状況でレイソル守備が冒した、一瞬のボールウォッチャーというドツボや、ポジショニング調整の遅れといった
「小さなところ」にこそ、雌雄を決するだけじゃなく、サッカー内容を左右する根源的ファクターが内包されている・・というディスカッションもありますよ。
いくら戦術的に素晴らしいサッカーを展開しているとはいっても、肝心な勝負どころで集中力を欠いてしまうのでは、「美しく勝つ」という理想型を目指すためのファンダメンタルズが備わっていない・・ってな批判を受けても仕方ないと「も」思うのですよ。
それでも・・
そう、常にリスクへチャレンジしていくという基本的な姿勢がなければ、決して、進化、発展できないというのも、歴史が証明している確かな事実なのです。
そうだな〜・・
要は、リスクチャレンジと、リスクヘッジ(リスクマネージメント)の内実に関するディスカッションですよね。そう、バランス感覚。
この試合でのレイソルは、たしかにリスキーな積極(攻撃的)サッカーを展開した。でも、次のディフェンスも、ある程度は「うまく」機能させられていた・・と思う。
彼らは、人数とポジショニングの「バランス」を、しっかりとマネージ出来ていたっちゅうわけなのですよ。でも・・
そう、そんな高質サッカーが出来ていたにもかかわらず、一瞬の集中切れや「偶発的なミス」によって一敗地にまみれてしまった。
でも・・サ、だからといって、「小さな勝負ファクター」をも完璧にマネージするために、セキュリティー要素を「より充実させる」というのでは、まさに本末転倒なんだよ。
とにかく、『美しく勝つ』という究極の目標へ近づいていくために、常に、限界レベルの「攻守にわたるリスクチャレンジ」を、勇気をもって心がけなきゃいけないっちゅうわけだ。
このゲームの、チト「理不尽とも思える結果」を体感しながら、そんなコトにも思いを馳せていた筆者だったのです。
最後に・・
とても良い仕事をしているレイソル監督、吉田達磨さんに乾杯。
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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