湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2015年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第6節(2015年4月18日、土曜日)
- 正しい発展ベクトル上を、質実剛健にひた走るレッズ・・(レッズvsマリノス、2-1)
- レビュー
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- そのとき息が止まった。
ゲームを支配して攻め上がっていくレッズのウラを突いたマリノスの必殺カウンター。何本あっただろうか。アデミウソンが、伊藤翔が。そして・・
そう、マリノスが、そんな必殺カウンターから先制ゴールをブチ込んだんだよ。そのとき、呑み込んでいた息が、溜め息となって口をついた。
それは、マリノス監督モンバエルツの策略が功を奏した瞬間でもあった。
彼自身も、そんなカウンター主軸のゲーム戦術をイメージしていたと言っていたっけ。
でも、そこから・・
そう、レッズが、何か、一皮むけ始めている・・と感じさせてくれるような「高質サッカー」を展開したんだよ。
昨シーズンのコラムでは、何度も繰り返して使った、「勝者メンタリティー」という心理・精神的ファクター。でも昨シーズンは、「それ」が実をむすぶことはなかった。
でも今は、昨シーズンから「自分たちのモノ」として掴み取りはじめた勝者メンタリティーの心理ベースに、より「充実した内容」がともないはじめた!?
まあ、その表現に「こだわり過ぎる」のは止めよう。昨シーズンは、本当に残念な思いをさせられたわけだから。
とにかく今シーズンのレッズは、何か、一皮むけ始めている(凄みが出てきている!?)・・なんて「感じ」ていることが言いたかった筆者なのですよ。
その「感じ」の内実だけれど、まず何といっても、前半で逆転までもっていった試合運び。
先制ゴールをブチ込んだマリノスは、もちろん守備を固め、そして次のカウンターチャンスを虎視眈々と狙っている。
そんな状況だし、何といってもマリノス守備はとても強力だから、その時点じゃ、ちょっとネガティブな思いがアタマを駆けめぐったモノだった。でも・・
そう、レッズは、流れのなかからマリノス守備を切り崩し、同点ゴールにとどまらず、逆転ゴールまでブチ込んじゃったんだよ。
先制ゴールを奪われたことで積極的に攻め上がるレッズ。もちろんそこには、マリノス得意の強力カウンターの危機が待ち構えている。
でも、そんな危機感を背負いながらも、レッズの強者どもは、まさに後ろ髪を引かれることなく、勇敢に攻め上がっていった。
ちょっと微妙なニュアンスだけれど、私は、勇気をもって(自信と確信をもって!)仕掛けていけば、そう簡単には、ミスパスなどしないと思っているのですよ。
だからコーチ時代は、選手たちに、常に自信と確信をもって、リスクにチャレンジさせた。
もちろん何度かはしっぺ返しを喰らった。でも、そんなコト(失敗)にめげることなく、リスクチャレンジこそが「命」ってなノリで、選手たちを鼓舞したっけ。
もちろん、ストロングハンド、ミハイロ・ペトロヴィッチも、そんな「強烈マインド」を前面に押し出すプロコーチだよ。
だからこそ選手たちも、決して中途半端になることなく、フッ切れた勢いで、思いっきり仕掛けていった。
そしてだからこそ、無為なミスで(中途半端なカタチで)ボールを奪われることなく(≒マリノスのカウンターチャンス!)、多くのケースで攻撃の流れを完遂できた。
そしてレッズは、流れのなかから二つのゴールを奪って逆転した。
そんなプロセスだったからこそ、「何か・・一皮むけた!?」なんていう「感じ」がアタマに湧(わ)いてきたっちゅうわけだ。
そして、もう一つ、その「感じ」を、より強くしてくれたのが、後半のレッズが魅せた試合運び。
質実剛健のディフェンスをベースに、(前半の!)マリノスのお株を奪うような・・いや、それに輪をかけた危険なカウンターをブチかましていったんだよ。
守備では、たしかに1回だけ、阿部勇樹の「ヒール」に助けられた絶対的ピンチはあった。
そのマリノスの攻めは、伊藤翔のヒールパスから、流れるように受けたアデミウソンがブチかました。(筆者注釈:この部分、事実誤認がありましたので事後手的に訂正しました・・悪しからず・・)
でも、それ以外は、レッズ守備ブロックは、まさに質実剛健に、マリノスの仕掛けの芽を効果的に摘みつづけたんだよ。
そこでは、誰ひとりとしてボールウォッチャーに落ち込むことはなかった(まあ何度かは、擬似のフリーズ=ボールウォッチャー=シーンはあったけれど・・あははっ・・)。
だから、そのポイントについて、ミハイロ・ペトロヴィッチに聞いた。
・・前半の逆転プロセスもそうだけれど、私は、後半にマリノスの攻撃をしっかりと抑え込んだことの方に、より強い印象を受けた・・そのことについて、コメントをいただけないか・・
それに対してミハイロは、例によってエネルギッシュに、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれたっけ。曰く・・
・・私も、後半のディフェンスには本当に満足している・・特に、選手たちが、主体的に考え、決断し、勇気をもってアクションを起こしつづけたことを誇りにさえ思う・・
・・私は、守備に特化したトレーニングは、そんなにやらない・・そうではなく、ゲーム形式のトレーニングにおいて、選手たちに、積極的に考えさせ、工夫させるようにしているんだ・・
・・ゲームがはじまってしまえば、後は、選手たち自身が主体的に闘わなければいけない・・それも、瞬間的な決断とアクションが連続的に要求される環境においてだ・・
・・それがサッカーだからこそ、私は、トレーニングから、考えつづけることをベースに主体的にプレーさせるようにしているんだ・・もちろんそこでは、勇気をもって、リスキーなプレーにもチャレンジしていかなければならない・・
・・それこそが、進歩するための唯一のリソースだからね・・
フムフム。いいね・・
ところで武藤雄樹。
この試合でも、抜群の存在感を発揮したじゃありませんか。
彼の、攻守にわたる、主体的なチャレンジ(ハードワークと創造性アクション)は、観ていて心地よい限りです。
それに、この試合じゃ、同点ゴールまでブチ込んだ。
そのシーンでの「最初のシュート」は秀逸だった。
浮き球を一発トラップし、間髪入れずにシュートを打つ。
そう、例の「トット〜ン」っちゅうリズムでのシュート。
それがポストを叩き、シュート後の忠実なパス&ムーブで、相手ゴール前までフォローアップしていた武藤雄樹が、「自ら」こぼれ球を蹴り込んだ。
武藤雄樹が大好きな筆者は、そのとき、思わずガッツボーズをしてしまった。フリーランスの中立ジャーナリストにあるまじき行為ではあったけれど・・。でも、まあ、いいか・・
ところで、この「トット〜ンというリズム」のプレー。そのテーマについては、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」を参照してください。
そこでのモデルは、ジネディーヌ・ジダンだよ。
ということで・・
発展ベクトル上をひた走るレッズ。これで興梠慎三、鈴木啓太、石原直樹といった実効プレイヤーたちが復帰してくれば・・
さて次は、火曜日の「ACL」だね。今から楽しみです。
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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