湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2015年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第8節(2015年4月29日、水曜日)
- 今節は、まず、スタジアム観戦した2試合のポイントを整理します・・(フロンターレvsレイソル、1-4)&(マリノスvsサンフレッチェ、1-2)
- レビュー
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- まず、フロンターレvsレイソル(1-4)から。
この試合は、レイソル吉田達磨監督の「ゲーム戦術」が、まさにピタリとはまった・・っちゅう展開でしたかネ。
吉田達磨さんは、フロンターレ中盤の王様コンビ、牛若丸(中村憲剛)と大島僚太のゲームメイクを抑制するというイメージでゲームに臨み、それが、まさに100%機能したのですよ。
あっと・・
とはいってもサ、フロンターレが先制ゴールを決めるまでは、完璧に彼らが試合をコントロールしていたんだよ。まさに、完璧に・・。
フロンターレの攻めでは、組織パスコンビネーションを基調に、そのなかに、レナトや小林悠、そして大久保嘉人といった個の才能連中がドリブル勝負を、効果的にブチかましていく。
そう、組織コンビネーションと個のドリブル勝負が、まさに高質にコラボレートしていたんだ。
また大島僚太が、後方から決定的スペースへ飛び出し、そこへ正確なスルーパスが通される・・なんていうシーンもあった(残念ながらゴールにはつながらなかったけれど・・)。
そんな、フロンターレが支配するというゲーム展開のなかで、フリーキックから、フロンターレが先制ゴールまで叩き込んじゃうんだよ。
そりゃ、その時点では誰もが、フロンターレの完勝をイメージしたでしょ。でも・・
そう、そこから、フッ切れたレイソルが、ガンガンと押し上げるようにゲーム内容が変容していったんだよ。
とはいってもサ、フッ切れたレイソルとはいっても、そう簡単に、フロンターレ守備ブロックのウラを突けるはずもない。
それは、レイソルにとって、チト、重い雰囲気だった。でもそこで、唐突に、武富孝介のドリブルシュートが飛び出しちゃうんだ。いやホントに、見事な同点ゴールだった。
それは、前半ロスタイムの出来事だよ。
そして後半・・。
信じられないことに、その立ち上がりから、レイソルが、カウンター気味に、ポンポ〜ンッてな感じで、次々にフロンターレゴールを陥れちゃうんだよ。
その二つの勝ち越しゴールは、ともに工藤壮人のヘディングシュート。アシストは、2点目がレアンドロで、3点目はキム・チャンスだった。
素晴らしいクロスボールと、工藤壮人の、絵に描いたような「飛び込み」。素晴らしかった。
そう、まさに「アレヨアレヨ・・」ってな感じの大逆転ドラマだったんだよ。そして気がついたら、「1-3」。ちょっと信じられなかった。
でも、現実。
もちろんフロンターレは、前へ行こうとする。でも、風間八宏さんが言うように、この日の(特に後半の!)フロンターレは、完全にリズムを失っていたんだ。
もちろん「その背景」には、レイソル吉田達磨さんが仕掛けた「ゲーム戦術」もあった。そう、牛若丸と大島僚太の「無力化」。
もちろん、それでも彼らボランチコンビは、しっかりとゲームを組み立ててはいたよ。でも、周りが、その流れに「うまく呼応しない」から、ほとんどの仕掛けが中途半端に終わってしまうんだ。
また、そんなジリ貧の流れのなかで、レナトが「ゴリ押しのドリブル」を仕掛けてボールを奪われたり、良いカタチで最終勝負コンビネーションが流れそうに
なっているのに、3人目、4人目がバックアップしてこなかったりと、とても「チグハグ」なサッカーに終始してしまうんだよ。
「あの」フロンターレのことだから、そんなゲーム展開はチト信じられなかったけれど、まあ、それも現実だったっちゅうわけだ。
そして最後は、クリスティアーノに、カウンターからのドリブルシュートまでブチかまされちゃう(これで、1-4)。
ということで試合は、「こんな日もあるさ・・」ってな感じの顛末だったという次第でした。
それでも、フロンターレが、いまの「J」のなかで、もっとも洗練され、高質なサッカーを展開していることは疑いのない事実です。
でも、サッカーが「美しすぎる」ことで(!?)、相手の「粘り」に、時として、勝負という視点で「勝負弱さ」が露呈しちゃうことも多い。
とにかく、これからの風間八宏さんのウデに期待しましょう。
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ということで、ラジオ文化放送のライブ中継で解説した、マリノス対サンフレッチェ戦。
この試合は、全体的としてみた場合、まさに、サンフレッチェ広島の完勝という評価が妥当でしょ。
とはいっても、立ち上がりのマリノスが、強さを魅せたのも事実。
そして先制ゴールまでブチ込んだだけじゃなく、その数分後には、完璧なカウンターから、100%の追加ゴールチャンスまで作りだしてしまうんだ。
そこまでの展開を観ながら、(先制ゴールと追加ゴールピンチシーンが、サンフレッチェ守備の大きなミスが原因だったことで!!)質実剛健のサンフレッチェにしては、あり得ないピンチだな〜・・なんて思っていた。
でも、そこからサンフレッチェが、見事に立ち直っていくんだよ。
両サイドのウイングバック、柏好文とミキッチのダイナミックな仕掛けだけじゃなく、センターゾーンで縦横無尽に効果的なチャンスメイクを演出するドウグラスも抜群の存在感を発揮する。
また守っては、マリノス前戦プレイヤーの動きが「鈍重」なこともあって、彼らの組み立てを完璧に抑え込んじゃう。
そんなだから、サンフレッチェが、完璧にイニシアチブを握りつづけるのも道理ってな具合。
ボールを効果的に奪い返しては、両サイドを中心に仕掛けていくサンフレッチェ。
そして遂に、ミキッチからドウグラスへと、グラウンダーの鋭いクロスパスが回り、ドウグラスが、力強いシュートをブチ込んだ。
同点ゴール。
それが大きかった。
マリノスは、立ち上がりに先制ゴールを奪ってからというモノ、まったくといっていいほど、人とボールの動きがなくなってしまったんだよ。
だから彼らの攻めは、サンフレッチェ守備ブロックの「眼前」で鈍重に「動く」ばかり。それも、足許パスのオンパレードだからね、顛末は、推して知るべしでしょ。
私は、ハーフタイム後の(後半の)マリノスは、大きく改善するに違いないと思っていた。
でも、そんな期待に反して、後半立ち上がりのマリノスは、前半に輪をかけ「鈍重」なプレーに終始してしまうんだよ。
そんなだから、サンフレッチェの佐藤寿人が「こぼれ球」を押し込んで決勝ゴールを挙げたのも、まさに理の当然の帰結だと感じていた。
- そして・・
そう、「そこ」からゲームが熱を帯びていくんだ。キッカケは、中村俊輔の登場。
たしかに最初の数分間は、まったく機能しなかった。でも、時間の経過とともに、すべての「人とボールの動き」が、彼を経由するようになっていくんだ。
そうなったら、もうマリノスのモノだよね。
それまでの鈍重なサッカーからは想像もつかないほどダイナミックな仕掛けを繰り出せるようになっていったんだ。
それは、まさに次元を超えた「変身」だった。
私は、そんな「変容プロセス」を演出した中村俊輔のリーダーぶりに、舌鼓を打っていた。
まあ、最後は、サンフレッチェの忠実でスマート、そして粘り強いディフェンスに守り切られてしまったわけだけれど、それでも、中村俊輔によって「あれほど」サッカーが変わることを体感させてもらったことは、とても貴重な学習機会だったと感じていた。
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今日は、とても疲れたから、ヴァンフォーレ対レッズの試合は、明日にビデオ観戦してからレポートすることにします。
悪しからず。フ〜〜ッ・・。
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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