湯浅健二の「J」ワンポイント


2016年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第14節(2016年5月29日、日曜日)

 

今日も連チャンでした・・(マリノスvsレイソル、3-0)、(FC東京vsガンバ、1-0)

 

レビュー
 
この、連チャン観戦した二つのゲームについては、例によってランダムに、目立ったポイントだけを列挙することにしますよ。

ということで、まずマリノス対レイソル・・

・・レイソルの下平隆宏監督も言っていたけれど、基本的にこのゲームは「守り合い」ってな構図のせめぎ合いになった・・

・・要は、両チームともに、守備がとても堅いということ・・だから一点を争う、ある意味では緊迫したゲーム展開になったっちゅうわけだ・・

・・とはいっても、下平隆宏さんも言っていたように、マリノスの守備ブロックは、ベテランパワーによって、堅さのレベルがとても高かった・・

・・だから、攻め上がり、ゲームを支配する(追いかける!)レイソルだったけれど、まったくといっていいほど、決定的スペースを攻略することは出来なかった・・

・・逆にマリノスは、コーナーキックから加点していくことで、レイソルを万事休すというところまで追い込んでいった・・

・・そう、セットプレーが雌雄を分けたんだよ・・

・・言わずもがなだけれど、そこでの中村俊輔の存在感は、光り輝いていた・・

・・ところで中村俊輔のチーム内での基本的なタスクだけれど、少しだけ、攻守ハードワークから解放される方向にあるようだ・・

・・だからこそ逆に、創造性プレーが冴えわたるっちゅうわけさ・・

・・ゴールを奪ったコーナーキックやフリーキックだけじゃなく、ボールを持てば、しっかりと「タメ」ながら、レイソル守備がもっとも嫌がるゾーンへ正確なパスを送り込む・・

・・一発タテパスだけじゃなく、レイソル守備ブロックを「視線」で釣り出してから飛ばす、逆サイドへの決定的サイドチェンジパスとかね・・

・・とにかく、この試合での中村俊輔は、組織ハードワーカーだけじゃなく、絶対的な「創造性リーダー」でもあった・・観ていてワクワクさせられた・・

・・中村俊輔については、かなり前になるけれど、新連載「The Core Column」で、「こんなコラム」をアップしたから、そちらもご参照アレ・・

ということで、FC東京対ガンバ・・

・・このゲームは、互いに仕掛け合い、チャンスを作り出すなど、見所豊富だった・・

・・でも、その見所ポイントは多岐にわたるから絞り込まざるを得ない・・例えば・・

・・「組織と個」というテーマ・・

・・ガンバは、組織コンビネーションがハイレベルなだけではなく、前戦の「天才連中」の存在感も群を抜いている・・

・・城福浩さんも、「たぶん彼らは、リーグ随一だろう・・」と言っていた・・

・・でも・・

・・そう、だから聞いた・・

・・ガンバには、ドリブル、高さ、スピード、パワーという「個の才能」が揃っている・・リーグ随一の才能を散りばめているとも言える・・

・・でも、組織プレーと個人勝負プレーの、ハイレベルなバランスという視点では、多くの才能を擁していることは、逆に、諸刃の剣になりはしないか?・・

・・そんな問いに対して長谷川健太監督は・・開口一番・・

・・いや、そんなコトは(諸刃の剣になるコトなど!?)ありません・・

・・私は、ウチのサッカーが個のチカラ中心とは思っていないし、組織コンビネーションでも効果的な仕掛けを繰り出せると思っているんですよ・・

・・まあ、それでも、個のチカラも武器ではありますよね・・だから活用しない手はない・・

・・でも今日のゲームでは、パトリックにしても宇佐美貴史にしても、ゴールを割るとこまでは行けなかった・・

・・あっと・・個のチカラをどのように活用するのかというディスカッションですが、それは、やはり監督のコンセプト(チーム戦術)に拠りますよね・・

・・才能レベルが高い選手がいる・・それでは、その選手たちを活用して、どのようなサッカーを目指していくのか・・それは、監督のチーム戦術(考え方)に拠りますよね・・

・・たしかに今日は負けたけれど、私は、いま目指している我々のサッカーが「ダメ」だとは思っていません・・

・・こんな紆余曲折を経ながら、よりハイレベルなサッカーを志向していくのです・・

私は、そんな長谷川健太監督のコメントを聞きながら、こんなコトに思いを馳せていた。

・・そうそう、長谷川健太さんは、「美しく勝てるサッカー」を志向しているんだっけね・・

・・そのために、個の才能を、組織的に活用する・・それが彼のコンセプトだった・・

・・だからこそ、パトリックに対しても、宇佐美貴史に対しても、攻守ハードワークを要求しつづけているんだっけ・・

・・そういえば、マリノスから移籍したアデミウソンも、攻守ハードワークという視点で「も」、とても良くなっているよね・・

・・それなのに、「あんな質問」をしてしまった・・長谷川さん、失礼があったらお許しアレ・・

・・ということで次のテーマだけれど、それは、倉田秋・・

・・私は、彼の「立派なボランチぶり」に、チト驚かされていたんだ・・

・・まさにイメチェン・・というか、私が、彼の本質について無知だったということなのかもしれない・・

・・ホントに、倉田秋の攻守ハードワークと、ボール絡みの創造性プレーは、とてもインプレッシブだった・・倉田秋は、ガンバのなかでも高い才能に恵まれているしね・・

・・それがあるから、ベテランの遠藤保仁も、多くの場面で、創造性プレーに集中できる・・

・・とにかく、この試合での倉田秋は、私にとっての新たな発見だった・・

・・繰り返しますが、その「新たな発見」って、単に、私の「無知」の為せるワザだったのかもしれないけれど・・サ・・へへっ・・

・・次は、城福浩さんとのコミュニケーション・・

・・彼のコメントが秀逸だったから、そのニュアンスを、まとめてみようと思った・・

・・あっと、まず私の質問から・・それは・・

・・たしかに、何度か、もしあそこで失点していたら・・とか・・「あの明らかなPK」をレフェリーが取ってくれていたら・・などなど・・タラレバのシーンはあった・・

・・でもFC東京は、そんなタラレバの雰囲気に呑み込まれることなく(情緒的な悪影響を受けることなく!?)、最後まで集中し、そして勝ち越しゴールを奪って守り切った・・そのプロセスについて、少しお話しいただけないか・・

・・そんな私の分かり難い質問に対しても、例によって城福浩さんは、誠実に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた・・曰く・・

・・たしかにタラレバのシーンはあった・・でも我々は、そんなプロセスに影響されることなく、結果をつかみ取った・・

・・ガンバは、個のチカラではトップクラス・・特に宇佐美貴史は、日本人のなかではとても秀でた才能だと思う・・でも、そんな宇佐美貴史に「やられた」決定的シュートシーンは、一つだけだったと思う・・

・・あっと・・タラレバというテーマ・・

・・私は、それによる情緒的な影響を考えるよりも、あくまでも、確率論をベースにディスカッションしたいのですよ・・そう、あくまでもロジカルなアプローチです・・

・・要は、トレーニングをロジカルに突き詰めることによって、確実に、タラレバのシーンを減らすことができると確信しているということです・・

(・・もちろん・・優れたトレーニングによって、そのタラレバ現象からの情緒的な悪影響を、より経験させたり、当たり前の環境にすることができる・・そして、結果として、タラレバ現象自体が減っていく・・!?)

・・フムフム・・いいね・・

ということで、今日は、「まず」連チャン観戦のコラムをアップすることにした次第です。

レッズの試合コラムと、UEFAチャンピオンズリーグ決勝のコラム(たぶんThe Core Columnで掲載)については、明日ということにさせてください。

では・・

===========

ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ、そしてチャンピオンシップ・・という「興行」について。

昨シーズンの「J」は、本当にツキに恵まれた。

何せ、年間最多勝ち点チームというリーグ頂点に立ったサンフレッチェが、「興行チャンピオン」にも輝いたわけだからね。でも、昨シーズンの二位クラブは、ガンバ大阪なんだってサ。要は、「興行チャンピオンシップ準優勝チーム」ということらしい。

まあ、皆さんも感じられている通り、とても、変。まあ、協会側は、この不自然なリーグシステムを「まだ」つづけるつもりらしいけれど・・サ。フンッ。

皆さんもアグリーだと思うけれど、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。

まあ、以前の「2ステージ制」とは違い、昨シーズンから始まった「今回の興行」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになることだけが、救いかな。

ということで、その後のトーナメント(チャンピオンシップ)は、まさに「興行」。

そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる(刻み込まれなきゃいけない!)。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうわけだからね。

だから、サッカー人だけじゃなく、読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむべきだと思うわけなのですよ。

この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。

そこでは、いかに(目的が歪んだ興行の!)2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。

============

最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


===============

 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

==============

 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





[トップページ ] [湯浅健二です。 ] [トピックス(New)]
[Jデータベース ] [ Jワンポイント ] [海外情報 ]