湯浅健二の「J」ワンポイント


2016年Jリーグの各ラウンドレビュー

 

第27節(2016年8月27日、土曜日)

 

究極の心理ゲームだからこその「気抜け現象」!?・・「組織と個の対峙」という構図だったヴィッセル対レッズ・・(フロンターレvsレイソル、2-5)、(ヴィッセルvsレッズ、2-1)

 

レビュー
 
「一体どうしたんだろ〜・・」

風間八宏さんが、フロンターレの立ち上がりについて、そんな思いに駆られたそうな。

そう、私も・・。だから聞いた。

・・風間さんのコメントでは、やっぱり、その、「どうしたんだろ〜」・・っていうのがキーワードになると思うんですよ・・もちろん私も、同じような、どうしようもないからこそのネガティブ感情に苛(さいな)まれた経験がありますよ・・

・・単純なワンツーで抜け出されたり、セットプレーでのマークが外れてしまったり・・その時間帯の集中力は、完全に明後日の方向へブッ飛んでしまってましたよね・・

・・そんな気抜け現象について、風間さんだったら、私なんかよりも素敵な表現をしてくれると思うのですが?・・

そんな私の質問に対して、風間さんは、例によって真摯に、こんなニュアンスのコメントをしてくれた。曰く・・

・・実は、ゲームに入っていく選手たちの表情は、とても締まっていたんですよ・・だから私は、しっかりとゲームに入っていくに違いないと思っていたんです・・

・・でも実際には、「あんなコト」になってしまった・・

・・私は、「あの」ネガティブ現象を止められなかったことについて、最初のプレーが大事だったと思っているんです・・

・・ゲームへの入り方という意味合いなんですが、要は、守備でも攻撃でも、いつも自分たちがアタマに描いているプレーが出来ていなかったということです・・


・・ボールがないところでの動きの量と質とかに代表される攻守ハードワーク・・その中身が詰まっていなかったということです・・内実が十分ではないことを、選手たちは体感し、自分たちで何とかしなきゃいけなかったんです・・

・・でも出来なかった・・だから相手に「風」を吹かされてしまった・・そういうコトだったと思います・・

いいね〜、風間八宏。素敵な表現じゃありませんか。

あっ、そうそう。彼は、こんなコトも言っていたっけ。

・・たしかにレイソルには、その後も、カウンターやセットプレーでチャンスを作られはしたけれど、それでも私は、逆転できるって確信していたんですよ・・

たしかに、気抜けの時間帯を過ぎてからのフロンターレは、「いつもの彼ら」に戻ったよね。

とてもスマートでダイナミックな「動き」を理想的にマネージする組織サッカー。

タテへの、クサビのスルーパス。それを合図に、ボールがないところでの動きが風雲急を告げるんだよ。

そこで繰り出されるダイレクトパス・コンビネーションには、誰もが目を奪われる。

フロンターレの強者たちは、中央ゾーンで、相手ディフェンスブロックの「目を奪ったスキ」を突いて、その周りに出来たスペースを、スムーズに使っちゃうんだ。

そう、3人目、4人目のフリーランニング満載のダイレクトパス・コンビネーション。

そして彼らは、その仕掛けの流れのなかに、大久保嘉人、小林悠、大島良太といった個の才能連中がブチかますドリブル勝負も、効果的に、そして狡猾にミックスしていく。

また、中央ゾーンに相手を引きつけてからサイドゾーンに展開し、そこから必殺クロスをブチかましたりする。

そんな「変化」に富んだ仕掛けは、どのチームにとっても危険極まりないよね。

でも・・

そう、レイソル守備ブロックは、とても立派に、そして効果的に、そんな高質なフロンターレの仕掛けを受け止めていたんだ。

彼らは、素晴らしくトレーニングされていたコトを証明したというわけサ。

下平隆宏監督も、「この一週間は、どのように、あの強力なフロンターレの仕掛けコンビネーションを受け止めるのか・・というテーマに取り組んできた・・」と言う。

私は、そんな彼らの「守備イメージ」もまた、とてもハイレベルに機能していたと思っているんだ。

私は、前述したフロンターレの「仕掛けタテパス」が入った瞬間、その周りのレイソル選手たちのアクション内容に目を凝らしていた。

そして思った。

・・ナルホド・・

・・たしかにレイソル守備は、フロンターレがブチかます、守備の視線を奪ってしまう仕掛けのタテパスだけじゃなく、同時に進行する、ボールがないところでのスペース攻略フリーランニングも、しっかりとイメージできている・・

それには下平隆宏さんの戦術的な指示(サジェッション)があったのかもしれないけれど、最後は、グラウンド上のでの選手同士のコミュニケーションが、その、とても効果的な連動ディフェンスのバックボーンだったはず。

風間八宏さんが言うように、確かにフロンターレは、決定的なカタチは創りだした。

でも私は、その現象について、こんな「形容表現」を使いたいと思う。

・・たしかにフロンターレは、あれほど効果的な「守備の連鎖イメージ」を機能させつづけるレイソル守備ブロックに対しても、ダイレクトパス・コンビネーションを駆使する組織サッカーで「裏のスペース」を突けていた・・

・・でも、その頻度は、いつも程のレベルにはなかった・・

そう、この試合に限っては、レイソル守備ブロックの方に、戦術的な視点で、「軍配」を挙げたい筆者なのですよ。

もちろん、フロンターレがブチかます、高質な「動きのリズム」は、いつものように素晴らしかったけれど、この試合では、レイソル守備を、より高く評価するのがフェアだと感じていた筆者だったのであ〜る。

へへっ・・

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さて、ということで、ヴィッセル対レッズ。

ゲームの「構図」は、もちろん、「組織対個」ってなコトになるでしょ。

たしかにヴィッセルも、しっかりとボールは動かそうとはしている。でも「それ」は、あくまでも、最終勝負プロセスがはじまる前段階まで。

そして最後は、ペドロ・ジュニオール、レアンドロ、渡辺千真といった才能連中が、(タメや小さなコンビネーションも含めた!)個の最終勝負をブチかましていくっちゅうわけだ。

もちろん、あくまでも「チーム戦術イメージ的な傾向」のことだよ。念のため・・

ということで、テーマは、「スペース攻略プロセスの内実」ってなことになりますかね。

レッズは、最終勝負へ至るスペース攻略(ある程度フリーのボールホルダーの演出!)では、あくまでも、ダイレクトパス・コンビネーションを主体にした組織サッカーを前面に押し出していく。

それに対してヴィッセルは、堅いディフェンスブロックをベースに、前述した個の才能連中を中心に、素早くタテへ仕掛けていく。

もちろん「そのなか」で、才能連中の「ワンツースリー」なんていうダイレクトパス・コンビネーションも出てくる。でも基本は、個のタメや突破ドリブル&シュート・・っちゅう趣なんだよ。

実際このゲームで彼らが奪った2ゴールも、完璧なカウンターの流れからだったよね。

ネルシーニョさんは、とても優れたプロコーチ。

だからこそ、「個の才能」という自分たちの武器を、最大限に活かし切ろうとする。そして、それが3連勝という結果をもたらした。

ところで、チーム戦術のコンセプト(基本的な方向性)イメージというテーマ。

世界的な傾向は、もちろん、組織と個のハイレベルな「バランス」へと向かっている。

なかでも世界最高峰クラブでは、世界選抜ともいえそうな「個の才能たち」に、極限の(組織的な!)攻守ハードワークを求めるんだよ。

そのために、全てのポジションにおいて、「極限の競争環境」を整えるっちゅうわけだ。

そりゃ、スーパーな「組織と個のバランスサッカー」を演出できるはずだよね。

でも、そんな「トップ中のトップクラブ」以外の普通のクラブじゃ、そうはいかない。

そこでは、個の才能を活かし切るために、組織サッカーの内実を整えなくちゃいけない。だから、選手タイプを上手くバランスさせることに腐心する。

そしてそこで、プロコーチの「チーム戦術コンセプト」が大きく関わってくるっちゅうわけさ。

もちろん、考え違いしている才能に、攻守ハードワークを(主体的に!)やらせる・・という真理マネージメントも含めてネ。へへっ・・

そして、その「組織と個のバランスサッカー」という視点で、いまの「J」では、言うまでもなく、レッズとフロンターレが「ツートップ」を組んでいる。

そう、「美しく勝つ」という絶対的コンセプトに基づいたサッカー。

このテーマについては、新連載「The Core Column」で、「こんなコラム」「あんなコラム」を発表したから、そちらも参照していただきたい。

そこでのモデルは「レッズ」だったけれど、それを「フロンターレ」に置き換えても、まったく違和感なく読めるはずでっせ。へへっ・・

でも今節では、そんな「高質な2チーム」が一敗地にまみれてしまった。

だから、私のマインドも、ちょっとダウン気味。

でも、まあ、ゲーム内容としては、「サッカーだから、そんなこともあるさ・・」ってな出来事に過ぎなかったとは思うけれど・・ネ。

レッズは、「この」ヴィッセルと、ルヴァンカップ(旧ナビスコカップ)で2ゲームを戦う。

とても興味深いよね。まあレッズの場合は、代表選手が何人か抜けるわけだから、状況は異なるんだろうけれど、それでも「チーム戦術コンセプト」には変わりはないし、そこには優秀なバックアップ選手たちも控えているわけだから・・ね。

私は、その第二戦(レッズのホームゲーム)をスタジアム観戦するつもりです。

ということで、今日は、このあたりで・・


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あっと・・

私が愛用しているウエストポーチやバックパックについて、何人かの方から質問されたこともあって、友人のデザイナーが主催するブランド、「METAS」のプロモートをさせてもらうことにしました。

この方は、有名メーカーのデザイナーから独立し、自らのブランドを立ち上げました。シンプルイズベスト・・スローライフ・・などなど、魅力的なキーワードを内包する「METAS」


とてもシンプル。でも、その機能性は、もう最高。お薦めしまっせ。

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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ、そしてチャンピオンシップ・・という「興行」について。

昨シーズンの「J」は、本当にツキに恵まれた。

何せ、年間最多勝ち点チームというリーグ頂点に立ったサンフレッチェが、「興行チャンピオン」にも輝いたわけだからね。でも、昨シーズンの二位クラブは、ガンバ大阪なんだってサ。要は、「興行チャンピオンシップ準優勝チーム」ということらしい。

まあ、皆さんも感じられている通り、とても、変。まあ、協会側は、この不自然なリーグシステムを「まだ」つづけるつもりらしいけれど・・サ。フンッ。

皆さんもアグリーだと思うけれど、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。

まあ、以前の「2ステージ制」とは違い、昨シーズンから始まった「今回の興行」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになることだけが、救いかな。

ということで、その後のトーナメント(チャンピオンシップ)は、まさに「興行」。

そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる(刻み込まれなきゃいけない!)。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうわけだからね。

だから、サッカー人だけじゃなく、読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむべきだと思うわけなのですよ。

この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。

そこでは、いかに(目的が歪んだ興行の!)2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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