湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2016年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第2節(2016年3月6日、日曜日)
- ジュビロは、立派な意志のサッカーを展開した・・逆にレッズは(特に後半!)攻めがステレオタイプ化してしまった・・(レッズvsジュビロ、1-2)
- レビュー
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- この試合については、極限の「闘う意志」を最後まで減退させることなく、選手一人ひとりが積極的に考えながら、粘り強くボールを奪い返してワンチャンスを狙いつづけたジュビロに拍手するしかない。
そうそう・・、帰りの道中では(もちろん単車移動!)、名波浩のコメントを反芻していたっけ。
なかでも、こんなコメントが秀逸だったね。
・・キックオフ直前には、ホワイトボードに書いてあった戦術ポイントをすべて消し、一言、「逃げるなっ!!」と書いたんだ・・
彼は、そのハナシの流れのなかで、こんな(ニュアンスの!)コメントも残した。曰く・・
・・もちろん我々は、シーズンが進んでいく中で、自らイニシアチブを握れるようなサッカーを志向していく・・でも今は、その前段階という意味合いでも(!?)、まず、勝ちたいという意志を前面に押し出すこと(勝負を意識すること)に集中するのが重要だと思っている・・
もちろん、プロコーチは、「美しく勝つ・・」という高質サッカーを志向すべきだ。
でもそこには、乗り越えなければならない「現実」という高い壁がある。
そして(志の高い!?)プロコーチは、そのリアリティーを踏まえた様々な手練手管を駆使し、最後は、美しく勝つための「攻守バランスの理想型」という高みに到達しようとするのである。
このテーマについては、新連載「The Core Column」で、「こんなコラム」を発表したから、そちらもご参照あれ。
ということでレッズのホームゲームに臨んだジュビロ。
彼らは、忍耐強いサッカーで「ワンチャンス」を狙うというイメージのサッカーを展開し、そして見事に結果までも引き寄せた。
それにしても、同点にされてからの(ワンチャンス!?)勝ち越しゴールは、見事の一言だった。
それだけじゃなく、柏木陽介に、見事な同点ゴールをブチ込まれる前には、完璧なカウンターから100%のチャンスも創りだしたよね・・。
ということで、試合を通したジュビロの評価だけれど・・
彼らが魅せた、攻守にわたる、ボールがないところでの動きの量と質には、とても深いコノテーション(言外に含蓄される意味)が込められていた・・と思う。
ここで、それらの、攻守にわたる「自己主張(主体)アクション」の一つひとつをピックアップしようとは思わない。でも、守備の典型ポイントについては言及してもいいですかね。
例えば・・
ジュビロ選手たちは、レッズの仕掛けパス周りに反応するだけじゃなく、同時に動き出しているレッズの3人目、4人目(=ダイレクトパス・コンビネーション要員)のほとんどを完璧にマークしてしまうんだよ。
もちろん、レッズ仕掛けプロセスでのボールの動きが少しでも停滞したら、間髪入れずに、複数のジュビロ選手たちが協力プレスを仕掛けていく。
そんな、守備におけるジュビロ選手たちの「集散アクション」を観ながら、ホントに名波浩は、とても優れた(戦術&心理)マネージメントをこなしている・・なんて感嘆していた。
たしかに前半は、レッズが仕掛ける、タテへのダイレクトパス・コンビネーションが何度もツボにはまり、ジュビロ守備ブロックが裏の決定的スペースを攻略された。
そんな攻略プロセスの多くで、両サイドから、決定的なクロスが送り込まれた。
でもジュビロ守備は、最終勝負の瞬間には、しっかりと「足を伸ばしている」んだよ。
そして、最後の瞬間にシュートをブロックしたり、ラストパス(クロス)を止めたりしちゃう。
もちろんレッズが、前半のうちに、ジュビロ守備を崩して創りだしたチャンスをモノにしていれば、ゲームは、まったく違った展開になっていたでしょ。でも・・
そう、逆にレッズは、「あの」失点を喰らってしまったんだよ。
そして「そこ」からは、ジュビロ守備ブロックの集中力が、何倍にも増幅したっちゅうわけだ。
忠実でダイナミックなチェイス&チェックはもちろんのこと、ボールがないところでのマーキングも素晴らしく忠実なモノへと進化していったんだよ。
そんなだから、美しいインターセプトや、レッズ選手のトラップの瞬間を狙ったボール奪取アタック等が、効果的に炸裂しちゃうのも道理ってわけだ。
もちろん、そんな展開は、レッズをジリ貧のゲーム展開に陥れていく。
彼らの真骨頂である、活発な「人とボールの動き」をベースにしたダイレクトパス・コンビネーションのダイナミズムがダウンし、スペースを攻略することもままならなくなっていく。
もちろん、チーム総合力でレッズに一日の長があることは誰の目にも明らかだと思う。
でもこの試合では、前半のチャンスをモノに出来ず、逆に先制ゴールを奪われてしまったことで、どんどんと「擬似の心理的悪魔のサイクル!?」にはまり込み、仕掛けプロセスが「ステレオタイプ化」してしまった・・と感じていた。
だから、例によって私は、こんな質問を投げた。
・・相手は、人数をかけて守備ブロックを固めている・・また、選手たちの守備での連動性や、強い意志に支えられた主体的アクションも、とても高い水準にある・・そんな難しい状況を打開していくには、やはり、仕掛けの変化が必要だと思うのだが・・
・・そう、早いタイミングでの放り込みとか、ミドルシュートをブチかますとか・・
まあ、いつもの質問ということで、ミハイロは、「この試合では、アンタが言った攻撃の変化という視点でも、その他のコトでも、足りないところがあったと思うよ・・」なんていうコメントに留めていた。
とにかくレッズは、(いつものように!)相手がレッズの仕掛けのリズムに慣れ、人数をかけて「流れを断ち切る」ような効果的組織ディフェンスを機能させる前に先制ゴールを奪うのが肝心なんだと、またまた再認識させられた。
とにかく、創りだしたチャンスを、しっかりとゴールに結びつけなきゃいけない。
そこじゃ、どんな困難があっても、最後はカラダで(腹でも使って!)ボールを相手ゴールに押し込む・・なんていう覚悟だって必要になってくる。
何せレッズは、チャンスだけは、しっかりと創り出せているわけだから・・。
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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ、そしてチャンピオンシップ・・という「興行」について。
- 昨シーズンの「J」は、本当にツキに恵まれた。
- 何せ、年間最多勝ち点チームというリーグ頂点に立ったサンフレッチェが、「興行チャンピオン」にも輝いたわけだからね。でも、昨シーズンの二位クラブは、ガンバ大阪なんだってサ。要は、「興行チャンピオンシップ準優勝チーム」ということらしい。
- まあ、皆さんも感じられている通り、とても、変。まあ、協会側は、この不自然なリーグシステムを「まだ」つづけるつもりらしいけれど・・サ。フンッ。
皆さんもアグリーだと思うけれど、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。
まあ、以前の「2ステージ制」とは違い、昨シーズンから始まった「今回の興行」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになることだけが、救いかな。
ということで、その後のトーナメント(チャンピオンシップ)は、まさに「興行」。
そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる(刻み込まれなきゃいけない!)。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうわけだからね。
だから、サッカー人だけじゃなく、読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむべきだと思うわけなのですよ。
この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。
- そこでは、いかに(目的が歪んだ興行の!)2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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