湯浅健二の「J」ワンポイント


2016年Jリーグの各ラウンドレビュー

 

第31節(2016年10月1日、土曜日)

 

またまた勝者メンタリティーが炸裂した!!・・(レッズvsガンバ、4-0)

 

レビュー
 
皆さんも観られた通り、レッズの完勝でした。

もちろん、時間が経過していくなかでは(後半の立ち上がりなど!?)、ガンバに勢いが「移っていきそうな流れ」はあった。

でも、その都度、レッズが、例によっての、創造的、想像的なハイレベルプレス守備をベースに、しっかりと押し返してイニシアチブを奪い返したんだよ。

私は、そんな、イニシアチブの「せめぎ合い」というグラウンド上の現象にこそ、ガンバとの、勝者メンタリティーバックボーンの「差異」が詰め込まれていると感じていた。

そう、いまのレッズは、選手同士の、勝負イメージが高質にシンクロした(!)攻守ハードワークが抜群に充実しているんだ。

だからこそ、『美しく勝てる』ハイクオリティな集団へと進化しつづけている。

私は、意識と意志の「内実」という視点で、(いつも書いているように!)いまのレッズには、本物の「勝者メンタリティー」が備わっている・・と思っている。

具体的なグラウンド上のプレーでは、何といって、素晴らしい人とボールの動きのリズムに支えられた、ダイレクトパスを織り交ぜる組織(コレクティブ)コンビネーションが徳比だ。

そう、サッカーの美しさと個の最終勝負プレーを支える「組織サッカーの質」という視点。

そのテーマについては、新連載「The Core Column」で発表した、「こんなコラム」「あんなコラム」をご参照あれ。

ということで、このゲームだけれど、ピックアップするテーマは、二つかな。

一つは、記者会見でミハイロが強調していた、ゲームを競り勝てるようになったコト。

そしてもう一つが、誰が出てきても、このレベルのレッズサッカーを体現できるまでに、チームが成長している・・というテーマ。

まず、競り勝つ・・というディスカッションだけれど・・

やっぱりミハイロは(もちろん私も皆さんも!?)、過ぎ去りし日々では、ものすごく悔しい思いをさせられた・・っちゅうことだね。

そう、(過去の!)シーズンが佳境に入ってから、ゲームのイニシアチブを握りながら、相手のワンチャンスやカウンターで沈められてしまった経験。

何度あっただろうか・・!?

そんな悔し経験の背景には、攻守両面で、大きな二つのテーマがあったと思う。

一つは、ギリギリの最終勝負シーンにおける、ディフェンスの「気づき」の遅れ。

要は、ボールウォッチャーや、シチュエーションウォッチャーになってしまい(ボール奪取やパスカット勝負のイメージングミス!!)、肝心なトコロで足が止まってしまったり、「最後の半歩」を出せなかったりするようなジリ貧シーンのことでっせ。

だから、全体的な「ボール奪取プロセス」は機能しているけれど、肝心なところで決定的シュートをブチかまされちゃったりする。

でも今シーズンは・・

そう、ギリギリのところでの「気づき」が、とても鋭く、そして忠実になった・・と感じるんだよ。

もちろん、素早く効果的な「攻守の切り替え」から、前からブチかましていくプレッシング守備は、素晴らしい機能性を魅せつづけている。

でも、やっぱり、最後の瞬間ほど大事なシーンはない。途中の守備プロセスがいい加減でも、「最後のツボ」を押さえているチームは、たしかに勝負強いじゃないですか〜。

だから、「そんな最後の勝負所」で、どのくらい効果的なアクションを繰り出していけるのか・・というのが、現場での喫緊のテーマなんだよ。

もちろん遠藤航の参加は、とても大きかった。

彼が入ったことで、最終勝負での「競り合い」に、本物の「粘り」が出てきたし、「あっ・・行かれちゃった・・」っちゅうシーンは、たしかに、減った。

もちろん、槙野智章、阿部勇樹、森脇良太、那須大亮、柏木陽介といったリーダーたちが、自己主張というニュアンスで進化していることも大きいと思う。

だからこそ、選手同士の、勝負アクションのイメージングが「連動する」ようになっている。

ちょっと大雑把だけれど、守備のハナシはココまでにして、攻撃のハナシに移ろう。

そう、「ゲームに競り勝つ」ための、攻撃でのテーマ。

もちろん、まず第一は、チャンスをゴールに結びつける・・というテーマだよね。

決定力・・!?

そうね〜・・。それは、本当に、つかみ所のないモノなんだよ。だから、極論したら、個人が持って生まれた才能・・ってなコトを言うプロコーチも多いんだ。

でも・・

そう、今シーズンのレッズでは、その「決定力」が、抜群の進化を魅せているじゃないか。

新連載、「The Core Column」でも、「決定力」というテーマを扱ったことがある。そのコラムについて「こちら」を参照していただきたいけれど、そこでは、個人の「シュートに際しての感覚ベースの決定力・・」というテーマだった。

でも、今シーズンのレッズでは、その「決定力進化」のバックボーンは、チト違う。

私は、その背景要素を、ダイレクトパスを織り交ぜた、最終勝負コンビネーションの「内容」が、とても充実してきているからこそ、互いの「勝負イメージのシンクロ状況」がアップしているから・・と考えたい。

レッズ選手たちのコメントでも、「オレの動きを、仲間のボールホルダー(ダイレクトでパスを出す次のパスレシーバー!?)が、しっかりと感じてくれている・・」なんていう、素敵な表現が多いよね。

素晴らしい。彼らは、ホントに、主体的に良く考えている。もちろんソレは、ミハイロの、心理マネージャーとしての真価の証明でもある。

この試合でも、ダイレクトも含むラストクロスやラストパスと、センターゾーンで走り込んでくる味方アクションが、ピタリと合ったシーンがテンコ盛りだった。

そしてもう一つ。

ダイレクトパスを織り交ぜた勝負コンビネーションや勝負クロス「だけ」じゃなく、しっかりと、仕掛けに「変化」をつけられている・・という視点も強調したい。

そう、興梠慎三やズラタンのアタマを狙った、アバウトな(!?)アーリークロスと、そこからのこぼれ球を狙って突っ込んでいったり、ミドルシュートを狙ったり、はたまた、最後方から、「一発勝負ロングパス」をブチかましたり。

そんな仕掛けの変化があるからこそ、彼らの真骨頂である、ダイレクトパス・コンビネーション「も」威力を発揮する・・っちゅうわけさ。

スミマセンね・・長くなりすぎないようにしま〜す。

ということで、もう一つのテーマである、「誰が出てきてもレッズのサッカーを体現できる・・」というディスカッション。

このテーマについては、先日の「J」で、フロンターレの風間八宏さんとも話し合ったっけね。

要は、「サブメンバーの効果的な進化」という視点でっせ。

この試合では、何といっても、右サイドバックに入った駒井善成が、抜群の存在感を発揮した。

また、先発した高木俊幸、交替出場した青木拓矢やズラタンもまた、本当に「実の詰まった」パフォーマンスを披露してくれた。

日本代表のいない「ル・ヴァンカップ準決勝」では、彼らの真価を体感できるはずだよ。

あっと・・那須大亮。彼もまた、決して外せない「ファースト・チョイス」選手だよね。そのことは、ここ数試合のプレーコンテンツが如実に証明している。

言いたいことは、ミハイロ・ペトロヴィッチが、時間をかけて育ててきたチームが、様々な意味合いで、ホントに花開きつつある・・というコトです。

ミハイロ・ペトロヴィッチの、優れた「ストロングハンド」が見える、見える。

それがあるからこそ、時とともに、サッカーの内実が、着実にアップしつづけるというわけさ。

優れた心理マネージャーでもあるミハイロだからこそ、「時とともに・・」という表現を使えるし、絶対的な「哲学コンセプト」である、「継続こそチカラなり・・」という考え方も、積極的に「このレッズ」に当てはめられるっちゅうわけだ。

さて次は、アウェーでのアルビレックス戦。

とてもガッカリすることに、優れたプロコーチである吉田達磨さんが、アルビレックスと袂を分かつことになったそうな。

それでも、彼が作り上げたチームは、とても良いサッカーをやるし、ミハイロも言っていたように、とても強いチームに育っている。

そのアルビレックスが、いまや、「降格リーグ」を闘っているんだから、サッカーは魔物だ。

今日のゲーム(アウェーでのジュビロ戦)では、内容でも凌駕した勝利をもぎ取った。

次節は、その強いアルビレックスと、彼らのホームで闘わなきゃいけない。そりゃ、難しいゲームになるでしょ。

でも私は、いまのレッズならば、着実にチャンスをモノにして勝ち切ってくれるモノと確信していますよ。

あっと・・その前に、FC東京と対峙する「ル・ヴァンカップ準決勝」だった。

こちらも楽しみで仕方ありません。

ということで、これからヴィッセル対フロンターレの勝負マッチをテレビ観戦しま〜す。


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あっと・・

私が愛用しているウエストポーチやバックパックについて、何人かの方から質問されたこともあって、友人のデザイナーが主催するブランド、「METAS」のプロモートをさせてもらうことにしました。

この方は、有名メーカーのデザイナーから独立し、自らのブランドを立ち上げました。シンプルイズベスト・・スローライフ・・などなど、魅力的なキーワードを内包する「METAS」


とてもシンプル。でも、その機能性は、もう最高。お薦めしまっせ。

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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ、そしてチャンピオンシップ・・という「興行」について。

昨シーズンの「J」は、本当にツキに恵まれた。

何せ、年間最多勝ち点チームというリーグ頂点に立ったサンフレッチェが、「興行チャンピオン」にも輝いたわけだからね。でも、昨シーズンの二位クラブは、ガンバ大阪なんだってサ。要は、「興行チャンピオンシップ準優勝チーム」ということらしい。

まあ、皆さんも感じられている通り、とても、変。まあ、協会側は、この不自然なリーグシステムを「まだ」つづけるつもりらしいけれど・・サ。フンッ。

皆さんもアグリーだと思うけれど、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。

まあ、以前の「2ステージ制」とは違い、昨シーズンから始まった「今回の興行」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになることだけが、救いかな。

ということで、その後のトーナメント(チャンピオンシップ)は、まさに「興行」。

そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる(刻み込まれなきゃいけない!)。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうわけだからね。

だから、サッカー人だけじゃなく、読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむべきだと思うわけなのですよ。

この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。

そこでは、いかに(目的が歪んだ興行の!)2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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