湯浅健二の「J」ワンポイント


2016年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第4節(2016年3月20日、日曜日)

 

チョウ・キジェの素敵なコメント・・また、レッズの進化が止まらないというテーマも・・(ベルマーレvsレッズ、0-2)

 

レビュー
 
・・今日のゲームでは、いまの自分たちのチカラを確かめるために、(攻守にわたって!?)勇気をもってリスクへチャレンジしていくのがテーマだった・・

またまた、ベルマーレのチョウ・キジェ監督が、会見の冒頭で、そんな素敵な表現をブチかましてくれたんだよ。

だから、聞いた。

・・たしかに前半は、おっしゃるように、ベルマーレの成長を身に染みて体感できるほど素晴らしい出来だったと思う・・あのまま(あのラッキーな!?)先制ゴールが入らなかったら、後半にかけても、本当にギリギリの勝負になったはずだ・・

・・でも実際は、追加ゴールを奪われたことも含めて、後半はちょっとペースが落ちた(だからレッズとの底力の差を体感させられた!?)という印象が残っているのだが・・

そんな私の(チト失礼な!?)質問に対し、チョウ・キジェ監督は、例によって誠実に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・

・・湯浅さんは、後半のサッカー内容が落ちたとおっしゃいましたが、私は、必ずしも、そうは思っていないんですよ・・

・・たしかにミスが重なって、悔しい失点を喫しましたが、その後も、決して落ち込むことなく、最後まで、攻守にわたって積極的に仕掛けていけたと思っているんです・・

・・だから、忍耐強くハードワークを積み重ねてリスクへチャレンジしていけば、必ず良い流れがくるにと思っていたんです・・その意味でも、あの2失点目が痛かった・・

・・とにかく、強いレッズとやるときは、相手がビックリさせるほどに(積極的に)仕掛けていかなきゃいけない・・だからこそ、チャレンジに対する選手の意志や勇気が大事だったんです・・

・・そして、それが出来ていたからこそ、あのような(良い内容の!)ゲームが可能だった・・まあ、「あのくらいはできるかな・・」とは思っていましたけれどネ・・

・・たしかに結果にはつながらなかったけれど、このゲームで得たモノは大きかった・・レッズには勝てていない・・でも、毎回、伸びた(差が縮まった!?)という実感はあるんですよ・・

・・とにかく、いまはチャレンジあるのみ・・それこそが「次」につながるキーファクターだと思います・・それをつづけていれば、最後には美しい花を咲かせられるはずと確信しているんですよ・・

いや、ホント、流石(さすが)にチョウ・キジェ。素晴らしいコメントだった。

「湯浅さん、こんなコメントでいいですか??」・・なんて、こちらに「振る」モノだから、思わず、「素晴らしいコメントでした〜」なんてネ。

へへっ・・

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ということでレッズ。

今シーズンのリーグ戦やACLで魅せつづけているように、このゲームでも、自分たちが主体になった(相手に呑み込まれず、逆に恐れを抱かせるような!!)素晴らしいチャレンジサッカーを魅せてくれた。

ミハイロは、今日の会見でも、(日本サッカー界も含め!)サッカーを発展させるために、攻守にわたる「リスクチャレンジ」の重要性を、繰り返し説いていた。

まさに、おっしゃる通り。

不確実な要素が満載のサッカーでは、最後は、自由に(そして勇気をもってチャレンジャブルに!)プレーしていかざるを得ない。

もし少しでもビビッたり、逃げたりしたら、そのネガティブビールスが瞬間的に伝播し、チーム全体が心理的な悪魔のサイクルに陥ってしまう。

サッカーが、不確実であるからこそ、互いのミスを補い合わなきゃいけない「ホンモノの組織スポーツ」であるという現実。

そんな「心理・精神的なメカニズム」について、イビツァ・オシムと長年パートナーを組んでいたミハイロ・ペトロヴィッチは、深く熟知しているんだよ。

そう、美しく勝つためのリスクチャレンジと攻守のバランス・・。

しつこいけれど、この「美しく勝つための攻守バランスの理想型」というテーマについて最近(The Core Columnシリーズで!)発表した「このコラム」も参照して下さい。

前段の(ベルマーレの!)内容と、ちょっと矛盾するような感じになってしまったけれど・・

とにかく、レッズが、とても強いサッカーを展開したからこそ、ベルマーレも(チョウ・キジェ監督と選手たちも!!)自分たちが発展していることをしっかりと体感できた・・っちゅうわけサ。

そのコトが言いたかった。

最後に・・

交替出場した青木拓矢。

素晴らしい「意志のハードワーク」を披露した。そこで彼がブチかました全力スプリントの量と質には、私も含め、誰もが心を動かされたはず。

だから、彼だけじゃなく、「ACLコラム」でも書いたけれど、これまでパフォーマンスが落ち込んでいたサブの選手たちが、とても元気になっている・・というテーマで締めようと思った。

永田充、橋本和、李忠成、高木俊幸、ズラタン(まあ、復帰した石原直樹もかな!?)・・などなど、ホントに良くなっている(気持ちが入れ替わった!?)と思うんだよ。

まあ、ミハイロも言っていたように、1人の監督が、長い期間マネージすることで、その考え方がより深く浸透し、実際の行動に転化されてきている・・という側面もあるだろうし、新しくレッズに加入してきた移籍選手(競争環境の先鋭化!?)という刺激もあるんだろうね。

とにかく、今シーズンのレッズが、様々な意味合いで「一皮も二皮も剥けつつある・・」というコトも言いたかった。

では、また・・

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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ、そしてチャンピオンシップ・・という「興行」について。

昨シーズンの「J」は、本当にツキに恵まれた。

何せ、年間最多勝ち点チームというリーグ頂点に立ったサンフレッチェが、「興行チャンピオン」にも輝いたわけだからね。でも、昨シーズンの二位クラブは、ガンバ大阪なんだってサ。要は、「興行チャンピオンシップ準優勝チーム」ということらしい。

まあ、皆さんも感じられている通り、とても、変。まあ、協会側は、この不自然なリーグシステムを「まだ」つづけるつもりらしいけれど・・サ。フンッ。

皆さんもアグリーだと思うけれど、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。

まあ、以前の「2ステージ制」とは違い、昨シーズンから始まった「今回の興行」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになることだけが、救いかな。

ということで、その後のトーナメント(チャンピオンシップ)は、まさに「興行」。

そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる(刻み込まれなきゃいけない!)。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうわけだからね。

だから、サッカー人だけじゃなく、読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむべきだと思うわけなのですよ。

この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。

そこでは、いかに(目的が歪んだ興行の!)2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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