湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2016年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第5節(2016年4月2日、土曜日)
- やっぱり、仕掛けイメージの共有こそが!・・(フロンターレvsアントラーズ、1-1)
- レビュー
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- 試合は、時間とともに、トップレベルのエキサイティングマッチへと拡大していった。
だから、心から「入り込んで」楽しめた。
そう、互いに、持ち味を前面に押し出しながら(逆に、相手の良さを効果的に消しながら!?)、とてもバランスの取れたサッカーで積極的に攻め合ったんだよ。
個の能力にしても、(監督さんの!)サッカーコンセプトや(心理)マネージメント能力にしても、はたまたチームに共通する攻守(ハードワーク)イメージと実効アクションのレベルにしても、この2チームが日本のトップにあることを体感させられた。
そんな2チームだから、その衝突エネルギーによって、魅惑的なエキサイティングマッチへと進化していくのも道理だったんだ。
ここまでの「J」では、レッズ、サンフレッチェ、フロンターレ、そしてアントラーズが、明確なトップフォーだね。
そう、彼らは、もっとも高い確率で、内容を結果に結びつけられる「強いチーム」なんだよ。
その彼らにつづくのが、言わずと知れたガンバ、そしてFC東京といったところか。
また、もう1チーム。志向するベクトルが個性的で魅力的なベルマーレ。
この7チームについては、指揮官の考え方やリーダーシップも含め、とても気になる存在だから、彼らの動静に注目しているんだよ。
あっと、またまた余談が過ぎた。さて、ということで、ものすごくエキサイティングだったフロンターレ対アントラーズ。
このコラムでは、一つのテーマに注目し、それを短くまとめようと思います。それは・・
・・たしかに、ゲームのイニシアチブを握って攻め込むという視点では、両チームともに、とてもハイレベルに同格だったと思う・・でも・・
・・そう、その仕掛けの流れを、どこまで「やり切れた」のか・・要は、どのくらい決定的チャンスを創り出せたのかという視点では、違い(差)が見え隠れしていたんだ・・
そこで、両監督に、同じ質問を投げてみることにした。
・・仕掛けプロセスの内実では、たぶん8割方は同格だった・・でも、最後のところ・・要は、決定的チャンスの量と質では、明らかにアントラーズに軍配が挙がるが(ちょっと刺激的に、アントラーズの方が倍以上よかったが!?)・・その要因は、どこにあると思われるか?・・
そんな質問に、両人とも、同じようなコノテーション(言外に含蓄される意味)を内包するコメントを出してくれた。
要は、その仕掛けプロセスに関わる「人の内容」と、彼らが描く「イメージの内容とその連動性」という視点だ。
アントラーズのストロングハンド石井正忠監督は、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれたっけ。曰く・・
・・フロンターレの場合、ボックスへ攻め入ってくるプロセスは、中村憲剛に拠るところが大きい・・要は、彼からのスルーパスによるチャンスメイクが多いということだ・・
・・それに対して我々(アントラーズ)は、入れ替わり立ち替わり、多くの選手が、崩しのプロセスに絡んでいけていたと思う・・そして、コンビネーションやドリブル突破など、様々なタイプの、高い実効レベルの崩しを仕掛けていけた・・
・・そこでは、選手たちの仕掛け(コンビネーション)イメージが、しっかりと連動しているという点も大きい・・要は、互いに、チームメイトの特長をしっかりとシェアできているということだ・・それがあるからこそ、それぞれの選手の特長を活かしていける・・
フムフム・・
それに対して風間八宏監督のコメントは、こんなニュアンスの内容だった。曰く・・
・・この試合では、フロンターレらしいリズムを奏でられた時間は、短かった・・(私は)誰とでも(仕掛けイメージの!?)コンビネーションを深めていけるように指導しているつもりなのだが・・
・・まあ、これほどメンバーが入れ替わったり、何人かのフォーム(物理的、心理的な状態)が100%戻っていないとなると、やはり厳しい・・
・・この試合では、同じようなテンポ(リズム)でプレーしてしまい、そこに変化を演出することが叶わなかった・・要は、自分たちのリズムのサッカーができなかったということだ・・
そう、両監督ともに、絡んでくる選手が、どのくらい、アタマのなかに描写する仕掛けプロセスのイメージを(主体的に!!)共有できていたか・・というポイントに焦点を当てていたんだよ。
そんなコメントを聞きながら、自分のグラウンド上での現役時代に思いを馳せていた。
・・そうだよな・・選手たちが、自分たち自身で仕掛けイメージを創り、それを主体的にシェアしながら、実際のリスクチャレンジアクションに転化させていくという作業は難しいよな・・
・・コーチが、自らのイメージを「強要」し過ぎたら、そのレベルで、イメージ描写の進化や深化が止まってしまうかもしれないんだよ・・そう、オーバーコーチング・・
・・そうそう、コーチングは、「場の設定」と「厳しく緊張感のある雰囲気」を醸成するだけに留めるのが正解なんだよな・・
・・戦術的に「志向すべきベクトル」のなかで、どのように、その目標を達成していくのかは、やはり選手の自主性に任せるのが(考えさせるのが)コーチングの王道というわけさ・・
・・でも、やっぱり言いたくなるよな・・
・・フ〜〜ッ・・
とにかく、この両チームには、今後とも、様々な「刺激」をもらうつもりで〜す。
よろしくお願いします・・ネ、風間八宏さん、石井正忠さん。
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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ、そしてチャンピオンシップ・・という「興行」について。
- 昨シーズンの「J」は、本当にツキに恵まれた。
- 何せ、年間最多勝ち点チームというリーグ頂点に立ったサンフレッチェが、「興行チャンピオン」にも輝いたわけだからね。でも、昨シーズンの二位クラブは、ガンバ大阪なんだってサ。要は、「興行チャンピオンシップ準優勝チーム」ということらしい。
- まあ、皆さんも感じられている通り、とても、変。まあ、協会側は、この不自然なリーグシステムを「まだ」つづけるつもりらしいけれど・・サ。フンッ。
皆さんもアグリーだと思うけれど、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。
まあ、以前の「2ステージ制」とは違い、昨シーズンから始まった「今回の興行」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになることだけが、救いかな。
ということで、その後のトーナメント(チャンピオンシップ)は、まさに「興行」。
そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる(刻み込まれなきゃいけない!)。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうわけだからね。
だから、サッカー人だけじゃなく、読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむべきだと思うわけなのですよ。
この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。
- そこでは、いかに(目的が歪んだ興行の!)2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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