湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2016年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第9節(2016年4月29日、金曜日)
- 変化に富んだレッズの仕掛け・・また、レッズの二人の新人についても・・(レッズvsグランパス、4-1)
- レビュー
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- ちょっと前のコトになるけれど、今シーズンの「主役」について、こんな主張をした。
「美しく勝つための攻守バランスの理想型」という視点で、いまもっとも輝いているのは、レッズとサンフレッチェ、そしてアントラーズとフロンターレだろう・・。
また、それにつづくのが、ガンバ、FC東京、そして(希望的観測として!?)ベルマーレにも頑張ってもらいたい・・なんて書いたっけ。
ちょっと的が外れている(外れてしまった!?)チームもありそうだけれど、あくまでも、サッカー内容や、志向するチャレンジ内容という基準に照らした主張だから・・ネ。
もちろん、結果も(内容に見合って!)伴っているのが、前述の4チームというわけだ。
やはり彼らは、美しく勝つという進化ベクトルの上を、ひた走っている。
その「美しく勝つための攻守バランスの理想型の追求」というテーマについては、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」もご参照あれ。
ということで、この「レッズ対グランパス」戦だけれど、皆さんも観られたとおり、内容でも、結果でも、レッズの完勝ということに落ち着いた。
この試合で特筆だったのは、レッズがブチかましつづけた、変幻自在の「最終勝負」。
前半では、遠藤航から、まさにピンポイントの「一発ロングラストパス」が2度も(!?)通された。
グランパス守備ブロックは、面食らったに違いない。最後のトコロでは事なきを得たけれど、彼らが対応に苦慮していたのは誰の目にも明らかだった。
それは、後方で「落ち着いて」ボールを動かしながら、相手ディフェンスの一瞬のスキを突くという、まさに「蜂の一刺し」という表現がピタリと当てはまる必殺ロングだった。
観ている誰もが、手に汗握ったに違いない。
もちろんレッズは、例によっての、3人目、4人目のフリーランニングも効果的にミックスする、ダイレクト(パス)コンビネーションを頻繁に繰り出す。
ところで・・
この、ボールを止めないパスやシュートという「グラウンド上の現象」の呼称については、新連載「The Core Column」において、サッカー協会の意向に反して(!?)、こんなコラムを発表したから、そちらもご覧あれ。
とにかく、ボールを止めない、ダイレクトパスや、ダイレクトシュートというのは、不確実な要素が満載のサッカーだからこそ、ものすごく「特別なプレー」なんだよ。そのことが言いたかった。
だから、「ワンタッチ」なんていう淡泊な表現で済ませるのは、(多くのサッカー人の方々同様に!?)まったく納得いかないし、違和感でアタマが一杯になっちゃう。
あっ・・またまたエモーショナルに脱線しちゃった。へへっ・・
そう、その、ダイレクト(パス)コンビネーション。
レッズは、それを駆使し、中央突破、サイドゾーン(スペース)の攻略など、ものすごく変化に富んだ仕掛けをブチかましていくんだよ。
今のレッズでは、全員のコンビネーションイメージが、ものすごく高い次元で「シンクロ」していると感じる。
この3人目、4人目のフリーランニング(クリエイティブなムダ走り)をベースにした高質コンビネーション・・というテーマについても、新連載「The Core Column」において、「こんなコラム」をアップしたから、そちらもご参照アレ。
たしかに、点差が開いてからの(心理的に解放されてからの!?)コンビネーションの内容は、それまでの、ちょっと「粘度が高い」人とボールの動きからは、目に見えてアップした。
要は、そんな現象もまた、サッカーが、最高の真理ゲームであることの証明でもある・・っちゅうわけさ。
ことほど左様に、レッズ攻撃には、とても素敵な「変化」が満載されていたんだよ。
あっと・・もちろん、ロング&ミドルシュートも含めてネ。
だからこそグランパス守備ブロックは、ボール奪取イメージを「連動させ切れなかった」と思う。
もちろん、前述の、高質コンビネーションに、タイミングよく、一発ロング勝負パスやロング(ミドル)シュートをミックスしていくレッズだから、相手守備も、惑わされ続けたというわけさ。
そのあたりの「メカニズム」について、グランパスの、小倉隆史監督が、こんな素敵な表現をつかっていたっけ。曰く・・
・・我々は、自分たちのサッカーをやり切れていなかった・・まあ、意志を貫きとおせなかったと言えるかもしれない・・
・・それに対してレッズは、自分たちのサッカーに対するイメージが、確固たるカタチを為しているだけではなく、それを、しっかりと、最後まで「やり切れて」いたと思う・・今日のスコアは、そんなサッカー内容のフェアな帰結だと思っている・・
ところで、小倉隆史。
彼のことを、ちょっと甘く見ていたかもしれない。今日の監督会見での彼の受け答えは、とても立派で、インテリジェンスに富んでいたんだよ。
そういえば、このところ、グランパスのサッカーに徐々に実が詰まりはじめているとも感じていたっけね。
小倉隆史さんは、ご自身が言っていたとおり、しっかりとした組織サッカーを志向しているし、チームも、そのベクトル上を、しっかりと進化&深化していると感じさせてくれた。
これからは、グランパスの進化&深化にも、注視していくことにしますよ。
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ということで、ここからは、レッズ選手の話題。
まず駒井善成。
私は、右サイドバックとして交替出場した駒井善成にパスが回されてくるたびに、こんな大声を発していた。
「寄るな〜・・コマイを勝負させろ〜・・アイツのドリブル勝負を邪魔するな〜〜っっっっ!!!」
・・なんてね。
何度か、寄ってきたチームメイトに横パスを「出してしまった」駒井善成。私は、そんなシーンを観ながら、怒り狂っていましたよ。
とにかくチームの「新人」である駒井善成は、勇気をもってドリブル突破にチャレンジし、そのうちの何本かで結果を出すことで、チームメイトにアピール出来なきゃいけないんだよ。
要は、あの「ドリブルの才能」は、しっかりと「開花」させなきゃいけない・・ということなんだ。
そう、2年前の関根貴大のようにね。
ドリブル勝負の、心理・精神的なバックボーンは、何といっても自信と確信。その自信と確信という心理的バックボーンに、実を詰めなきゃいけないということだ。
まあ、勝負を怖がるような選手は、最初から「本物のドリブラー」になんか、なれっこない。
だから、駒井善成に大いなる期待を抱いている私は、彼のドリブル勝負を「邪魔」してはいけない・・と思っていたんだよ。
ゲームの勝負は、ほぼ決まっていた。だからこそ・・
そう、だからこそ、サポートで「寄っていく」ことは、(この状況では!)まさにマイナスの意味しかなかったんだ。そして案の定、駒井善成は、(遠慮からか!?)、そのサポート選手に横パスを出してしまう。
フ〜〜ッ・・
だから叫んでしまった。
「邪魔するな〜〜っっっ!!」ってね。
でも・・
そう、5回目(!?)のチャンスで、ようやく駒井善成が、勇気をふりしぼってドリブル突破にチャレンジし、成功させたんだよ。
まあ確かに、相手を抜き去ってゴールライン上を進んだまではよかったけれど、結局、ラストクロスは、相手に弾き出されてしまったけれど・・サ。
それでも私は、そんなリスクチャレンジの「成功体感」ほど価値のあるモノはないと確信していたから、その「半サクセス」を、心から喜んでいたっちゅうわけさ。
また駒井善成は、その「成功体感」の後でも、ドリブルシュートにチャレンジしていたね。
そうそう、その積極性(リスクチャレンジ姿勢)こそが、発展のための唯一のリソースなんだよ。
あっと・・、もう一人、注目した抗体選手がいたんだよ。
この試合がデビュー戦となった高校ルーキーの伊藤涼太郎。
ものすごい才能だよ。
・・素晴らしいトラップ&ボールコントロール・・高い状況の認知(掌握)能力・・そして優れたパスやドリブル、そしてシュート能力・・
どれをとっても、見るからに、「特別な才能」なんだ。
ウワサは聞いていた。でも実際に勝負のゲームで観られたことで、ちょっと興奮した。何せ相手は、「強い」グランパスだからね。
ボールタッチとパス「だけ」を観るだけで、伊藤涼太郎の才能は、すぐに見分けがつく。こりゃ、日本を代表するプレイヤーに育つかもしれない・・。
だから、ミハイロに聞いた。
もちろん彼も、私の意見にアグリーだった。でも・・
そう、何度かあったディフェンスシーンや、攻守にわたって、ボールがないところでアクションしなければならないシーンを観ながら、彼のイメージングの内容と意志(実際のアクション)に課題を見出していたんだよ。
そう、まだまだ、ぬるま湯。また、アリバイ的なアクションもあったし、ボールウォッチャーになったシーンもあった。
ミハイロは、そんな課題ポイントについて「も」アグリーだったね。
私は、ミハイロ・ペトロヴィッチというプロコーチの「ウデ」を、深く信頼している。
だから私は、この天賦の才(伊藤涼太郎)が正しく開花していくコトに、大いに期待しているっちゅうわけさ。
ということで、また明日。
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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ、そしてチャンピオンシップ・・という「興行」について。
- 昨シーズンの「J」は、本当にツキに恵まれた。
- 何せ、年間最多勝ち点チームというリーグ頂点に立ったサンフレッチェが、「興行チャンピオン」にも輝いたわけだからね。でも、昨シーズンの二位クラブは、ガンバ大阪なんだってサ。要は、「興行チャンピオンシップ準優勝チーム」ということらしい。
- まあ、皆さんも感じられている通り、とても、変。まあ、協会側は、この不自然なリーグシステムを「まだ」つづけるつもりらしいけれど・・サ。フンッ。
皆さんもアグリーだと思うけれど、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。
まあ、以前の「2ステージ制」とは違い、昨シーズンから始まった「今回の興行」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになることだけが、救いかな。
ということで、その後のトーナメント(チャンピオンシップ)は、まさに「興行」。
そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる(刻み込まれなきゃいけない!)。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうわけだからね。
だから、サッカー人だけじゃなく、読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむべきだと思うわけなのですよ。
この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。
- そこでは、いかに(目的が歪んだ興行の!)2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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