湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2017年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第10節(2017年5月4日、木曜日)
- 強豪同士の激突・・そこじゃ、様々な意味を内包する「忍耐」こそが求められる・・(レッズvsアントラーズ、0-1)
- レビュー
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- それにしてもアントラーズの石井正忠監督は、ホントに良い仕事をしている。
まあ、そんな高い評価は、優れた戦術家・・としてのモノだけど・・ネ。
この試合でも、レッズの良さを存分に消しまくり、そして虎の子の一点までもブチ込んだ。
その後は、もうお決まりの、カテナチオ&カウンター。
こんなゲーム展開は、これまでに何度も見せつけられたものでした。
それにしてもアントラーズの守備ブロックは堅い。
そのバックボーンは、言わずと知れた、粘り強さや集中力という要素も含む「強烈な意志」と、イメージが見事に連動しつづける(優れたグループ戦術ベースの!)組織ディフェンス。
もちろん、日本を代表するアントラーズ最終ラインについては、語るまでもないでしょ。
とにかくここでは、アントラーズのゲーム(守備)戦術が、本当に、見事にハマりつづけたコトが言いたかった。
それも、これも、高い意識をもって考えつづける選手たちの、主体的なコラボレーション(協力作業)がレベルを超えていることの証明っちゅうわけだ。
そう、「あの」レアルでさえ手を焼いた、徹底的なゲーム戦術サッカー。
そんなアントラーズ守備が、レッズの、ダイレクトパスを織り交ぜる優れた組織コンビネーションの芽を、効果的に摘み取りつづけちゃうんだよ。
また、アントラーズ両サイドバックは、レッズ両サイドの関根貴大と宇賀神友弥がブチかますドリブル突破の「内実」も、イメージトレーニングによって入念にアタマに叩き込んだ!?
そう思えちゃうほど、アントラーズの両サイドバックは、レッズ攻撃の生命線の一つであるサイドからのドリブル突破を効果的に抑え込んでいたんだよ。
また、ボールがないところで飛び出していく3人目、4人目のフリーランナーにしても、強烈な意志で、ことごとくマークして無力化しちゃう。
その(自軍ゴール前まで戻ってくる!)マーカーには、アントラーズ最前線のプレイヤーたちもいるわけだから、そりゃ、「大したモンだ・・」って、感嘆するのも道理だよね。
ことほど左様に、アントラーズの戦術サッカーは、素晴らしい機能性をブチかましつづけたというわけなのです。
でも・・
そう、そんなゲーム展開になるのは戦前から予想されていただろうし、レッズ選手たちも(ミハイロの指摘や指示を背景に!)その展開を明確にイメージしながらプレーしていたはず。
だから彼らも、アントラーズ選手たちと同様に、とても、とても注意深くプレーしていたんだよ。
ということで、両チームともに、組み立てプロセスからは、ウラの決定的スペースを攻略するような効果的な仕掛けを、そう簡単には繰り出していけなかったのも道理っちゅうワケさ。
でも・・
そう、アントラーズには、土居聖真、金崎夢生、ペドロ・ジュニオール、遠藤康といった「個の仕掛け人」が揃っているんだよ。
彼らは、サポートなしの単独でも局面を打開し、危険な個の勝負をブチかましていけるんだ。
もちろんレッズのラファエル・シルバや興梠慎三も、危険な「個の勝負」をブチかませる。
でもそれは、あくまでも、周りのチームメイトとの「組織コンビネーション」をベースに発展したカタチだからね。
アントラーズ守備は、そんなレッズの人とボールの「組織的な動き」だけじゃなく、個の勝負プレーや両サイドバックの仕掛けなどを、ことごとく封じてしまったんだよ。
でも・・
そう、前述したように、そんな厳しい「耐えるプロセス」のなかでもレッズは、何度か、ゴールチャンスは創りだした。
左サイドでのタテパスに抜け出した槙野智章が、ニアポストスペースへ走り込んだ武藤雄樹へラストパスを送ろうとしたシーン。
興梠慎三が、「これぞレッズ!!」ってな感じのダイレクト・ラスト浮き球パスを、ラファエル・シルバへ通し、そのままラファがフリーシュートにトライしたシーン。
後半の立ち上がりには(この試合でもっとも可能性の高かった!)ラファエル・シルバのフリーシュートシーンもあった。
このシュートシーンは、右サイドをドリブルで駆け上がった関根貴大からのパスを、武藤雄樹が、これまたダイレクトでラファエル・シルバへ「流した」ことによって創られた。
またドリブルで持ち上がった那須大亮のミドル弾や、これまたダイレクトパス・コンビネーションから、槙野智章が放ったダイレクトシュートという場面もあった。
まあ、後半については、「行くしかない」レッズが、少し多めに人数を掛けたことで、アントラーズのペドロ・ジュニオールと金崎夢生に、完璧なカウンターシュートをブチかまされたけれど・・ね。
ということで、このゲームの総括だけれど・・
とにかくレッズは、相手がアントラーズのような強豪の場合でも(強い相手が、強烈な戦術サッカーでゲームに臨んできた場合でも!!)、クリエイティブに、そして最高テンション(緊張感)をもって「耐える」ことで、必ずチャンスを創りだせる・・ということを体感したはず。
それは、大いなる価値(成功体感!)として、脳内のイメージタンクに蓄積されるでしょ。そして、必要なときに、自然と、脳内スクリーンに映し出される。
だからこそ価値がある。
そしてソレこそが、表面的にはマイナスの現象から「も」、しっかりとエッセンスを抽出して「次」につなげられる強いグループの証でもあるっちゅうわけさ。
とにかく、シーズンは、まだ序盤。これからもレッズは、今回の連敗のような、様々な困難と対峙することになるでしょ。
でも彼らが目指す「美しく勝つサッカー」には、日本サッカーの将来のためにも、絶対に成功してもらわなきゃいけない。
だから私は、ミハイロ・ペトロヴィッチが率いるレッズの進化&深化プロセスを、最後まで見届けようと思っているわけさ。
しつこいけれど、この「美しく勝つサッカー」というテーマについては、「The Core Column」で発表した、「こんなコラム」や「あんなコラム」をご参照あれ。
では今日は、こんなところで・・
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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