湯浅健二の「J」ワンポイント


2017年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第11節(2017年5月14日、日曜日)

 

2017_J1_第11節・・柏レイソルがブチかました素晴らしい組織サッカーに乾杯!!・・レッズの、ダイレクトパス・コンビネーション・・(FC東京vsレイソル、1-2)(アルビレックスvsレッズ、1-6)・・(2017年5月14日、日曜日)

 

レビュー
 
今日は味スタ。

少し早めに到着し、そのままプレス席に着いたんだけれど、そこで、元日本代表監督で、現在はFC東京のアドバイザーを務める、石井義信さんから肩を叩かれた。「ヨ〜ッ!!」って。

だから、「石井さん、一緒にゲーム観ましょうよ・・」って、誘ってみたんだよ。そしたら、「たまにゃ、いいね〜・・」って、わたしの横に座ってくれた。

たしかに、FC東京アドバイザーという肩書きの石井さんと一緒にゲームを観たのは前半だけだったけれど、それは、それは、刺激的な時間だった。

後半は、社長さんをはじめとしたお歴々への解説があるからと席を立った。

でも、その会話には、ホントに素敵な示唆が詰め込まれていたんだ。

もちろん私も、自分なりの「見方や考え方」を石井さんに投げる。

石井さんは、決して否定せず、すべての考え方、見方を受け容れ、そしてご自分の「なか」でプロセス(以前の体感と照らし合わせるインテリジェンス作業!?)する。

そして、これまた素敵にレスポンスしてくれる。

なかには、お互いに、すぐさま「そうそう・・!!」ってなコトで意見が一致するような素敵な内容も多かった。

例えば・・

・・監督は、日々のトレーニングで、本当に「小さなトコロ」に気を遣い、そこでの「足りないコト」を選手たちに示唆するんだ・・繰り返し、繰り返し・・

・・そりゃ、小さなコトだけれど、塵も積もれば山となるってわけさ・・

・・それこそが監督の、デイリーな「ハードワーク」・・

・・とにかく、様々な「小さなトコロ」に気がつく「目」を養い・・気付いたコトについて、様々な意味合いを内包する「刺激」とともに、選手へ効果的にフィードバックするんだよ・・

・・監督・コーチの仕事は、そんな「ハードワーク」の繰り返しと積み重ねなんだ・・

・・等など・・

ホントに、素晴らしく刺激的な時間ではありました。

もちろん、これから書くことは、そんな(立場のある!?)石井義信さんの意見や見解、示唆とは関係のない、あくまでも筆者の個人的なコメントだからね。念のため・・

とにかく、まず、そのことだけは明確にしておかなきゃ・・と思ったのさ。

へへっ・・

あっと、石井義信さんについては、「The Core Column」で、対談した記事をアップしたことがあるから、ソチラもご参照あれ。

あっとゲーム・・

石井義信さんは、ホントに、小さいけれど、実際は、とても大事な(!)事象について、気がつく。

・・例えば・・相手への寄せ・・次の相手パスのインターセプト・・協力プレスへの動き出し・・勇気をもった勝負パス・・そう勇気・・等など・・

あっと・・、これも、コーチを志す者にとっての、決定的に重要なテーマだった。

そう、気づき・・

このところ、よく使う「表現」だけれど、守備でも、攻撃でも、その目的を達成するために、積極的に「ハードワークを探す」ことが重要な意味をもつんだよ。

サッカーじゃ、「行かなくても」、周りに気付かれないケースが多い。

ミスだと批判されないようなグレーゾーンの「ボールなしの勝負プレー」が多いんだよ。

でも、「そんな小さな勝負プレー」を避けたら、結局「チリが積もって山となった」ネガティブ現象によって、内容でも、結果でも、相手に凌駕されちゃうのがオチ。

そう、だからこそ、積極的に、スペースを狙ったり、次の「ボール奪取ポイント」をイメージしたりするための絶対的ベースである「小さなトコロへの気づき」は、とても大事なテーマなんだ。

私は、「イメージング能力」なんて表現も使うけれど、まあ「気づき」の方が分かりやすいですかね。

もちろんコーチにとっても、「気づきのチカラ」は絶対的な基本だよね。

その視点で、石井義信さんには、今でも、多くの「学ぶべきトコロ」があると体感させられたっちゅうわけさ。

いくつか、石井さんに指摘されるまで「気づかなかった」ことで忸怩(じくじ)たる思いにさせられたシーンもあった。

そして、すぐに、「そうそう・・」って、自分のアタマのなかの記憶タンクにしまい込んでいた「体感」を引っ張り出すんだ。

ホント、石井さんとの時間は、ものすごく素敵な刺激にあふれていた。

石井さん・・どうもありがとうございました。

あっとゲームだった・・

たしかに、全体としては、攻守にわたって素晴らしくダイナミックなプレーを展開した柏レイソルの、順当な勝利・・と評価するのがフェアだよね。

でも・・

そう、FC東京の立ち上がり時間帯は、攻め込まれるシーンも多かったけれど、逆に何度かは、効果的に押し返して決定的チャンスを創りだしてもいたんだよ。

このチャンスについては、レイソルGKの中村航輔に心からの拍手をおくらなきゃいけない。

彼のセービングやキャッチングは、まさに「スーパーレベル」だった。

そして、ボランチの手塚康平がブチかましたスーパーミドルが決まって、レイソルが(順当な!)リードを奪ったという次第。

そこからのFC東京の「落ち込み度合い」は、ショッキングなほどに大きかった。

でも逆に、柏レイソルがブチかましつづけた「あの勢い」の協力プレスサッカーからすれば、そんなFC東京の「沈滞現象」は、自然な成り行きだったとも思えてくるよね。

そして・・

「0-2」とリードを奪われたFC東京が、ルヴァンカップ先発メンバーをグラウンドに送り出すことで、「ゲーム展開の転換点」を模索しはじめたんだ。

まずピーター・ウタカ、つづいて中島翔哉と田邉草民。

(ルヴァン先発メンバーの投入など!)予想していたコトだけれど、この選手交代によって、まさにガラリと、FC東京のサッカー内容が好転しはじめたっちゅうわけさ。

そう、全体的な人とボールの動きが活性化したことで、どんどんと組織的にスペースを攻略できるようになったし、大久保嘉人をはじめとした「個の才能」によるドリブル勝負も、より効果的に繰り出せるようになっていったんだ。

でも・・

そう、そんな「前掛かり」になったFC東京のスキを突き、レイソルが、何度も、カウンターで決定的チャンスを創りだしてしまうんだよ。

それらは、まさに決定的。ゴールにならなかったことが奇跡に近かった。

ということで、この試合は、まさにスーパーな組織サッカーをブチかました柏レイソルが、まさにフェアな順当勝利を手にしたっちゅうわけさ。

__________

ということで、アルビレックスvsレッズ。「ダゾーン観戦」だから、ポイントだけ簡単に。

この試合では、何といっても・・

アルビレックスが頑張っていたからこそ、レッズの強さが際立った・・という視点を特筆すべきだろうね。

レッズの強さ・・

その源泉は、もちろん、(追い込みとボール奪取勝負イメージが!)ものすごく効果的に連動しつづける組織ディフェンスにあり。

要は、チェイス&チェック、周りの連動マーキング、インターセプト、相手トラップの瞬間を狙った効果的アタック、そして協力プレスへの集散アクションの積み重ね等などの守備アクション(イメージング)が、素晴らしく有機的に連動しつづけているっちゅうことさ。

だからこそ、ボールを奪い返してからの攻撃でも、チーム内での「イメージング」が、素晴らしく高いレベルで「シンクロ」する。

そう、ボールがないところでの動きの量と質が、高みで安定しているんだ。

この試合じゃ、同点ゴールと勝ち越しゴールシーンに、レッズ選手たちがアタマに描きつづける勝負イメージの「シンクロドラマ」が凝縮されている。

この両ゴールともに、何度かのダイレクトパスを織り交ぜたコンビネーションから右サイドの「タテスペース」へパスが回り、そこから、これまたダイレクトで中央ゾーンへクロスが折り返されたことで生まれた。

そう、シュートを決めた武藤雄樹と興梠慎三は、クロスボールが、ダイレクトで折り返されてくることを完璧にイメージして、決定的スペースへ動きつづけていたんだよ。

そこへ、まさに「ピタリ」の、トラバースクロスが、ダイレクトで折り返されてきた。

レッズでは、このダイレクトパスを織り交ぜたコンビネーションが、本当に高いレベルで安定しているんだよ。

それもまた、レッズの強さを形作る源泉の構成要素だね。

だからこそ、ホントに「狭いパスコース」でも、勇気をもってチャレンジしちゃう。

そして、だからこそ、(ダイレクトのタイミングで!?)スルーパスが通されると確信するラファとか興梠慎三が、その、ダイレクトでのラストパスが出される「一つ前のボールの動き」で既に、決定的なフリーランニングをスタートしているというわけさ。

だから、相手も、簡単には「最後まで」マークし切れない。

もちろん決定的フリーランニングのスタートにしても、マークする相手の「視線を盗みながら」だし、そのスタートタイミングにも、最終勝負イメージを「共有」しているからこその緻密さがある。

ということで、そんな、「ダイレクトパス・コンビネーション」のイメージを、チームに深く浸透させたミハイロ・ペトロヴィッチに、心からの拍手を惜しまない筆者なのさ。

そしてレッズは、「美しく勝つ」という理想へ邁進する。

この、「美しく勝つ・・」というテーマについては、The Core Columnシリーズで発表した、「こんなコラム」「あんなコラム」を参照してください。

では、また〜・・

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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