湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2017年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第27節(2017年9月23日、土曜日)
- まだまた課題が山積みのレッズ・・そして、素晴らしい意志のサッカーを魅せた鳥栖と、指揮官マッシモに乾杯!!・・(レッズvsサガン鳥栖、2-2)
- レビュー
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- ・・たしかに、我慢くらべ的なゲーム展開になったという見方もできる・・
鳥栖のマッシモ・フィッカデンティ監督が、試合後の記者会見で、そんな印象を述べていた。
たしかに・・
そう、その背景要因の一つに、ゲーム開始後、1分もたたないタイミングで鳥栖がブチ込んだ先制ゴールがあったのは確かな事実だったんだよ。
ということで、その後は、レッズが攻め上がり、鳥栖が、粘り強く堅牢な(ものすごくハイレベルな集中力の!!)ディフェンスから、機を見たカウンターを仕掛けていく・・ってな展開になっていったことは言うまでもないでしょ。
それにしても・・
そう、ゲーム立ち上がりの先制ゴールだけじゃなく、その後も鳥栖は、カウンター的な流れから、ポスト直撃のダイレクトシュートを放つなど、素晴らしいチャンスを創りだした。
その立ち上がり時間帯でのレッズ守備には、課題が見え隠れしていたよな。
強烈な意志を迸(ほとばし)らせるフルスプリントのチェイシング(粘り強いマーキング)だけじゃなく、創造的なスペースケアやカバーリングといった、ボールがないところでの守備プレーに対する「イメージング能力と実行力」に、明らかな問題があったと思うわけさ。
そう、安易なアタックを簡単にかわされて置き去りにされてしまったり・・、走り込む相手に対するマークが甘くなったり・・、スペースのケアやカバーリングが十分じゃなかったり・・等など。
その視点じゃ、この日の鳥栖が、とにかく素晴らしい守備アクションをブチかましつづけたと高く評価するのがフェアだろうね。
マッシモが、ハーフタイムに、「ウラのスペースケアーはうまくいっている・・」とチームを鼓舞したと言うことだけれど・・
たしかに彼らは、高い集中力(強烈な意志)をベースに、素晴らしい連動(守備)プレーのイメージングと実行力を魅せつづけた。
そう、この試合でレッズが創りだした、スペースを攻略してシュートへ至るような創造的チャンスは、ホントに数えるほどしかなかったんだよ。
このところ、攻撃「でも」調子が上向いているレッズだから、ちょっと驚かされた。
この現象については、鳥栖が、「人数を掛けてディフェンスを厚くしたから・・」ってなことじゃなく、あくまでも、鳥栖プレイヤーたちの素晴らしい意志と、高質なイメージング&アクション内容を賞賛するのがフェアだと思うよ。
とはいっても、たしかに、鳥栖が守備に回る時間は長かったよな。
・・レッズにゲームを支配されたことについては、(個の能力の総和としての!?)チーム総合力の差を認めざるを得ない・・
・・また先制ゴールのタイミングが早かったということもある・・
・・だからレッズが攻め上がってくるのは道理だし、逆にウチが、守りへのイメージを強く持ちすぎてしまったという側面もある・・
・・まあ、とはいっても、もしウチが、積極的に攻め上がるような攻撃サッカーをやったら、逆にレッズに必殺カウンターをブチかまされて負けてしまうのがオチだよ・・
・・とにかく、狙いどおりのカウンターから2点目を奪ったし、レッズに、まともなチャンスを作らせなかったことも含めて、全体的なゲーム内容には満足しているんだ・・
マッシモが、そんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。
ということで、最後は、「攻めあぐんだレッズ・・」というテーマで締めることにしよう。
そう、レッズは攻めあぐんだんだ。
私の目には、鳥栖に「ボールを持たされた・・」と映っていた。
もう何度も書いているように、レッズ攻撃の真骨頂は、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションによるスペース攻略と、機を見計らったドリブル勝負の、高次元のバランスにある。
要は、しっかりと人とボールを動かしながらスペースを突き、そこから、組織パス(クロス)やドリブルを駆使して、シュートにつながる最終勝負を仕掛けていくっちゅうわけだ。
でも・・
そう、この試合では、足許への消極パスが目立ち過ぎていたんだよ。
それでは、ドリブル勝負を仕掛けていくのも(そのための有利なカタチを創りだす作業が!?)ままならないのも道理。
その要因には、前述したように、素晴らしい鳥栖ディフェンス(イメージが素敵にシンクロした組織ディフェンス)があった。
そんな、ボールがないところでの忠実アクションに象徴される「強力ディフェンス」と対峙するのだから、たしかに、得意のダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションによってスペースを攻略していくのは、そう簡単じゃないよね。
何せ、パス&ムーブだけじゃなく、3人目、4人目のフリーランニングまで(そこで狙うスペースを!)ことごとく潰されてしまうんだから。
だからこそ、今度は、個人勝負(ドリブル勝負)を強調したり、アバウトな放り込みやミドルシュートをブチかましたりと、しっかりと仕掛けに変化をつけなきゃいけないんだ。
そんな変化を演出できて初めて、鳥栖の組織ディフェンスブロックのバランスを、少しずつ崩していけるというわけさ。
でも・・
そう、この試合では、そんな個の勝負が十分に機能しなかったんだよ。
高木俊幸と駒井善成?
基本的には、この二人に、両サイドゾーンでのドリブル突破が期待されていたよね。でも・・
そう、二人とも、チャンスはあるのに、積極的にチャレンジせず、横パスやバックパスに「逃げたり」しちゃうんだ。
たしかに、何度かは、良いカタチのクロスは上がったけれど、それは、まったく十分じゃなかった。
チャンスがあるのにトライしないのでは、チーム内での存在価値(レゾンデートル)に疑問符がついちゃうでしょ。
ちょっと厳しい評価かもしれないけれど、それは、(堀孝史監督も含めて)彼らに対する大いなる期待の反作用だからネ・・念のため。
勝負できるのに、横パスやバックパスに「逃げて」しまう・・
失敗が怖い!?
何を言ってるんだ。
美しく勝とうとするような優れたサッカーは、(積極的な!!)ミスを積み重ねるコトでしか実現できないんだよ。
ニーチェが、こんなコトを言った。曰く・・
・・名声を失ったら、努力して再び積み重ねていけばいい・・カネを失ったら、また努力して稼ぎ直せばいい・・でも、勇気を失ったら、生まれてきた価値がない・・
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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