湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2017年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第3節(2017年3月10日、金曜日)
- リスクチャレンジをブチかましつづけたヴァンフォーレ(吉田達磨)にも拍手!!・・(レッズvsヴァンフォーレ、4-1)
- レビュー
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- ・・4点もブチ込まれて、こんな言い方をするのは、そぐわないかもしれませんが・・でも、毎日のトレーニングでは、本当に、やれることが増えてきていると体感しているんですよ・・
ヴァンフォーレの吉田達磨監督が、そう話しはじめた。
いいね〜・・
彼らが志向しているのは、まさしく、「美しく勝てるサッカー」なんだよ。
この、「美しく勝つ」というテーマについては、「The Core Column」シリーズで、「こんなコラム」や「あんなコラム」を発表したから、そちらもご参照あれ。
要は、サッカー内容の進化&深化を志向する「発展の王道」をトレースしようとするヴァンフォーレ・・っちゅうわけさ。
そういえば、コンサドーレにも同じコトが言える(先日のマリノス戦を三ツ沢で観戦した!)。
彼らのサッカー(強い志向イメージ)からも、このヴァンフォーレのように、「王道」をトレースしようとする強烈な「意識と意志」を感じたんだ。
もちろん、その「王道」をトレースするための絶対条件は、攻守にわたる積極リスクチャレンジ。
でも、そんな「リスクチャレンジ」を繰り返したら、どうしても、(個の総合力に劣ることでフィジカル的なマイナスも出てくるから!?)決定的な勝負所で、フッと気が抜けて、ウラの決定的スペースを突かれてしまったりする。
そう、(個の才能レベルで上回る!?)相手のカウンター。
そして、優れたチャレンジングサッカーを展開しながらも、結局は惜敗してしまう・・という厳しい結果と対峙することになる。
でも・・
そう、「王道」を、しっかりと、そして粘り強いトレースをつづけていれば、着実にチカラがついてくるものなんだよ。
そして最後は、勝負にも勝ち切れるまでに成長し、その結果をベースに、勝者メンタリティーにも実が詰まっていく。
でも、多くの「弱者」たちは・・
個のチカラを「単純総計」したチーム総合力で劣るからと、はじめから守備ブロックを主体にチーム戦術を組み立てたりする。
もちろん、そんなサッカーなら、最初の頃は、結果がついてくるかもしれない。
でもそれじゃ、サッカーの「戦術的な質」という意味で、決して「次のステップ」へ進めないし、選手たちにとっても、まったく面白くない(刺激されない!)日常になってしまうよね。
そう、イレギュラーするボールを足で扱うという不確実なサッカーにとって、壊滅的な結果を引き起こす「ディ・モティベーション」という(心理)現象。
とはいっても、結果が出なければ、同様に落ち込むのも自然の成り行きだよね。
だからこそコーチは、サッカーの内容と、結果を追い求める「戦術サッカー」的な(進歩にとって後ろ向きの!?)要素を、いかに高いレベルでバランスさせるのか・・という難しいテーマと取り組むんだよ。
でも、あくまでも、リスクチャレンジが絶対的なベースだよ。その精神と実効アクションに欠け、安全プレー「ばかり」に終始した場合、進化や深化なんて、望むべくもない。
そうそう・・
例えば、チョウ・キジェ。
またコンサドーレにしても、今日のヴァンフォーレにしても・・
たしかに負けたとき、選手たちの気持ちは、一時的にダウンするかもしれないけど、それでも彼らの場合は、次の日には、またまた、新しいモティベーションをもって、希望に満ちあふれた輝くような表情で、「ニュー・チャレンジ」に向かっていけるはずだよね。
選手たちにとって大事なことは・・
・・自分たちが目指す方向性がはっかりとしていること・・その方向性が、自分たちの誇りとして価値があること・・そして、日々のトレーニングで(吉田達磨さんが言っていたように!)自分たちのやれることが増え、サッカーの進歩を体感できること・・
それらは、とても、サッカーの進化にとって、とても、とても大事なファクターなんだ。
そう、誰もが知っている通り、リスクチャレンジのないところに進歩もない・・んだよ。
この「リスクチャレンジ」というテーマについても、「The Core Column」で、以前に「こんなコラム」を発表したっけ・・ね。
そう、サッカーでは、石橋を叩いて渡る・・ような姿勢は、マイナス以外の何ものでもないんだ。
選手たちは、常に、サッカーという不確実な環境のなかで、攻守にわたって、しっかりと積極的に、リスクチャレンジの仕事を探しつづけられなきゃいけないんだよ。
私は、ベルマーレ、コンサドーレ、そしてヴァンフォーレに代表されるチャレンジャーたちの積極サッカーこそが(スミマセン、それ以外のチームは観ていない
ので・・)、とてもポジティブなコノテーション(言外に含蓄される意味=日本サッカーにとって重要な価値)を内包していると思うわけさ。
あっと・・レッズ。
私の質問に、例によってミハイロが、真摯に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。
質問は・・
・・前半15分までの絶対的チャンスを決められていたら(興梠慎三、ラファ、武藤雄樹など)、まったく問題なかっただろうけれど・・そのチャンスをゲットできなかった後は、タテパスが思うように入らなくなった・・だから、攻撃が停滞してしまった・・
それに対して、ミハイロ・・
・・そうなんだよ・・だからハーフタイムに、自分たちのサッカーを思い出せ・・もっと、もっとチャレンジングな、仕掛けのタテパスを送り込め・・もちろん、そのために、ボールがないところでの動きが大事だ・・なんて檄を飛ばしたんだ・・
そう、たしかに後半は、見違えた。まさに我々がイメージする「レッズの優れたサッカー」が甦ったんだよ。
ところで、うまく入らなくなっていた縦パス(ウラの決定的スペースを攻略する勝負の仕掛けパス等など)。それが、前半の半ば以降のレッズ停滞の原因になっていたのだけれど・・
先制ゴールシーンでは、タテに走り抜けた関根貴大へ、森脇良太から、そんな素晴らしい(リスキーな!)タテのスルーパスが出たんだよ。
そして、関根貴大のタメからの決定的クロスが相手ミスを誘い込んで興梠慎三の先制ゴールにつながった。
もちろん、ミハイロの(ハーフタイムでの)檄が効いたことで、後半の立ち上がりからレッズの仕掛けの(リスクチャレンジの!)勢いは、格段にアップしていたわけだけれど、それでも、やっぱりゴールという刺激がもたらす効果は絶大だった。
その先制ゴール以降にレッズが見せたオフェンスは、まさに「ダイナミズムの権化」だった。
私は、そんなレッズを観ながら、一つのゲームの中の様々な「紆余曲折」がもたらす、とても貴重な学習機会(体感)に関しても思いを馳せていた。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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