湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2017年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第8節(2017年4月21日、金曜日)
- 戦術サッカーと解放サッカーをうまく使い分けられるようになれば・・(フロンターレvsエスパルス、2-2)
- レビュー
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- この試合・・
さまざまな視点で興味を惹(ひ)かれるゲーム展開の「変遷」があったから、その視点で、短くまとめてみることにしました。
まず、エスパルスが、カウンター先制ゴールをブチ込むまでの展開・・
エスパルスは、例によって(!?)、ショートカウンター狙いの戦術サッカーで立ち上がった(小林伸二監督によれば・・相手によって、やり方は変わってくるけれど・・)。
もちろん、ゲームのイニシアチブ(ボール支配)は地力で勝る(!?)フロンターレが握っている。
でも・・
そう、エスパルスは、フロンターレ組み立てプロセスでの「パスの流れ」をイメージし、それを読んで狙っていたんだ。
そして、案の定、まさに願ったり、叶ったりのタテパスインターセプトを成功させ、そのまま金子翔太の先制ゴールへとつなげてしまったんだよ。
それは、まさに(ゲーム戦術イメージにピタリとはまったという視点でも!)理想的なショートカウンターゴールではあった。
でも、その後のエスパルスは・・
そう、まったく鳴かず飛ばずの「引きこもりサッカー」に陥ってしまったんだよ。
とはいっても、前半でのフロンターレのサッカーが、チト鈍重だったことに助けられ、前半は、そのまま一点リードで折り返すことができた。
ここで、フロンターレのサッカーを形容するのに使った「鈍重」という表現だけれど・・
要は、私の眼に、フロンターレの「動き」が、とても重たく映っていたということです。
確かにボールは軽快に動きつづけるし、勝負のタテパスも出る(チャンスの流れも創りだした!)。
でもそれは、ボール「だけ」が、選手たちの足許から足許へ動く、動きの変化に乏しい組織サッカー(ダイレクトパスを織り交ぜる組織コンビネーション)だったんだよ。
何といっても、パス&ムーブが少なすぎた。
だから、本来の「フロンターレの動きのリズム」とはほど遠い、似非の組織サッカーだったんだよ。
でも・・
そう、後半のフロンターレの「動き」に、俄然、本格感がともなうようになったんだ。
もちろんソレは、人とボールが動きつづける、ダイレクトパスを織り交ぜた軽快なコンビネーションサッカーのことだよ。
だからエスパルス守備ブロックも、背後のスペースまでも攻略されちゃうまでに揺さぶられはじめたんだよ。
そんな、風雲急を告げるようなエキサイティングなシーンは、前半は観られなかった。
私は、そんな動きのある軽快な組織サッカーを観ながら、「そうそう・・これこそがフロンターレのサッカーなんだよ・・」って、悦に入っていた。
そして、まさに順当に、同点ゴール、勝ち越しゴールが決まるんだ。
私は、「さて、これでゲームは終わったかな・・」なんて、安易に考えてしまった。
でも・・
そう、そこからエスパルスが(チームのマインドが!?)、解放され(!?)、まさにフッ切れた攻撃サッカーへと変貌していったんだ。
私は、その時点までのエスパルスからは考えられない積極サッカーに度肝を抜かれていた。
要は、フロンターレを、そこまで攻め立てられるエスパルスの地力に、ビックリしていたっちゅう体たらくだったわけさ。
フ〜〜・・。スミマセン、エスパルスの皆さん。甘く見ていました。
そしてゲームの顛末・・
最後は、エスパルスが、後半ロスタイムに、チアゴ・アウベスの単独ドリブルシュートで同点に追い付いたわけだけれど、それだけじゃなく、(牛若丸に見事な
勝ち越しゴールをブチ込まれるという刺激によって!?)勢いを増してからのエスパルスの仕掛けの「圧力」たるや、まさに充実した内容の本格的な攻撃サッ
カーだった。
あっと・・
チアゴ・アウベスの同点ゴールだけれど、そのシュートは、牛若丸に当たって変化したんだ。だから、フロンターレのスーパーGKチョン・ソンリョンも反応できなかったんだよ(!!)。
ということで、このコラムの最後のテーマは、エスパルスが魅せた、(私の想像を絶するほどの!!)積極的な仕掛けマインド・・っちゅうことになりますかね。
とにかく、その高揚プロセスに、ちょっとレベルを超えるモノがあったということが言いたかった。
その絶対的ベースが、積極的なボール奪取勝負&デュエル(中盤からの積極ディフェンス)にあったコトは言うまでもないよね。
そして、ボールを奪い返した直後からブチかましていく、人数をかけた組織的な仕掛け。
その内容にも、目を見張るモノがあったっけネ。
何だ、ヤツらは、こんな素晴らしい攻撃サッカーも魅せられるのか・・
私は、そんな思いとは逆に、こんなコトも考えていた。
もちろん、相手が強いフロンターレということもあって、最初から、そんな「解放された攻撃サッカー」を仕掛けていったら、たぶん、かなり手痛いしっぺ返しを喰らっただろうな〜〜・・。
そう、チーム総合力の差を考えれば、それは大きなリスクなんだよ。
でも・・
そう、小林伸二監督も言っていたように、選手たちは「解放サッカーによる成功」を体感できたわけで、それが自信になって「次」につながる・・というのも確かな事実だよね。
次・・というか、普遍的に目指すべきターゲット・・
もちろん、それは、「美しく勝つサッカー」のことだよ。
どうだろうね・・今後のエスパルス・・
我慢の「戦術サッカー」と、この試合では成功体感まで至れた「フッ切れた解放サッカー」を、状況や時間に応じて使い分けられるようになることをターゲットにしたら・・!?
とにかく、(小林伸二さんも言っていたように!!)、フッ切れた攻撃サッカー「も」ターゲットにトレーニングに励めば、選手たちのモティベーションも天井知らず・・ってな、ポジティブな雰囲気に包まれるはずだと確信している筆者なのであ〜る。
へへっ・・
ちなみに・・
すべてのサッカー人が目標とすべき、「美しく勝つサッカー」というテーマについては、「The Core Column」で発表した、「このコラム」や、「あのコラム」もご参照ください。
では今日は、こんなところで・・
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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