湯浅健二の「J」ワンポイント


2018年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第15節(2018年5月19日、土曜日)

 

ベルマーレというチーム全体にとって、この勝利が内包する心理・精神的なコノテーション(言外に含蓄される意味)は、とても広く、深い・・(ベルマーレvsジュビロ、1-0))

 

レビュー
 
・・たしかにポゼッションという視点ではイニシアチブを握られる時間はあったけれど、我々も、しっかりと押し返してチャンスを創りだしたし、最後の最後まで気を抜かずに、決定的なピンチを未然に防げていた・・

ベルマーレ監督チョウ・キジェが、会見で、そう胸を張っていた。

そう・・まさに、その通り・・

名波浩は、内容的にはジュビロが勝っていたし、チャンスは創りだしたと語っていた。

確かに、全体的な「見え方」では、そう評価できないわけじゃない。

でも私は、根源的サッカー内容の(攻守チームプレー&ハードワークの!)量と質という視点で、ベルマーレに一日以上の長があったとすることに躊躇(ちゅうちょ)しない。

もちろん個のチカラでは、明らかにジュビロに分がある。

でも、この試合で両チームが表現した「本質的な組織サッカーの内実」という視点では、あきらかにベルマーレが勝っていたんだよ。

でも・・

そう、ゲーム立ち上がり30秒における決定的ピンチでは、ベルマーレファンの誰もがフリーズしたはず。

また前半に、もう1本の大ピンチ、後半にも、クロスからの絶対的ピンチがあった。

でも、その三つの絶体絶命シーンで、ベルマーレのディフェンダーが、まさに「最後の半歩」をブチかまし、そのピンチを、まさに理路整然と切り抜けたんだ。

そのワンシーンでは、最後の半歩を出してピンチを切り抜けたディフェンダーが、「ガッツポーズ」を魅せたっけ。

「よ〜〜しっ!!」・・ってね・・

それは、ホントにギリギリのスーパーディフェンス(シュートブロック)シーンだった。

ところで、最後の半歩・・

そこには、極限の「闘う意志」が明確に表現されていたっちゅうわけさ。

だから、チョウ・キジェに聞いた。

・・ゲームがはじまる前、高山徹がわたしのところへ挨拶に来てくれたんですよ・・

・・だから、「ケガしたの?」って聞いたんです・・そしたら・・

・・いや、湯浅さん、普通に外されたんです・・と、言うじゃありませんか・・

・・だから・・

・・そうか〜・・さすがにチョウ・キジェだな・・って反応したんですよ・・

・・高山薫は、チョトンとしていたけれど・・

・・とにかく私は、それまでベンチを温めたり、メンバーに含まれていなかった若手も含めて、新しい顔を、先発させたりベンチに置いたチョウさんの決断を、心からレスペクトしたんですよ・・

・・そして選手たちは、限界を超えて躍動しつづけた・・

・・要は、そのことを、チームの心理的なダイナミズムを活性化させる、チョウ・キジェのリスクチャレンジ(ギリギリの心理マネージメントの一環!?)だと思ったわけです・・

・・そうそう・・

・・それって、チョウさんの言う、湘南スタイル(=勇気)そのものじゃありませんか・・

そんな私の問いかけに対してチョウさんは、例によって真摯に、そしてダイナミックに、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれたっけ。

曰く・・

・・そうですね・・

・・ダイナミックなボール奪取や、その後の、人数を掛けた攻め上がりなど、フッ切れたエネルギーの爆発があったですよね・・

(そういえば、名波浩も、ベルマーレの前からの守備と、次の攻撃での、セカンド&サードウェーブサポートが素晴らしかったと賞賛していたっけね・・)

・・この試合では、高山薫だけじゃなく、外国人選手も、ケガなどではなく、多くをメンバーから外しました・・

(そう・・そりゃ、チームにとっては、ものすごい刺激だっただろうネ・・なんて筆者の独り言・・)

・・だからこそ、この勝利は、チーム全員で勝ち取ったという実感が生まれると思うんですよ・・

・・たぶん選手たちにしても、全員が、トレーニングで良いプレーをしていれば、自分にも確実にチャンスがめぐってくるって体感できたと思います・・

・・たとえば、トレーニングでの守備で・・

・・タイミングや読みが悪くて抜かれたりマークを外されたりしたとき・・

・・「まあ・・仕方ない・・」なんて、流してしまうようなネガティブ姿勢ではなく・・

・・瞬間的に切り替え、全力で追いかけながら闘い切るという覚悟でプレーするんです・・

・・そんな強烈な意志のプレーこそが日の目を見る・・

・・そんな雰囲気がチームに浸透すれば、それは素晴らしいことだと思うんです・・

(ちょっと脚色しているかもしれないけれど、とにかくチョウさんの言いたいことは内包されていると思いますよ・・もしクレームがあれば、いつでもどうぞ・・筆者、脚注・・)

・・そこには健全な競争があるじゃないですか・・そう、決して、年功序列なんかじゃない・・

・・この、健全という言葉のホントの意味を、選手たちには、しっかりと理解し、噛みしめてもらいたいという思いもあります・・

・・とにかく私は、目を輝かせてトレーニングに励んでいる選手をつかったつもりです・・

・・その視点じゃ・・(高山)薫にしても、今日外されることで(その刺激によって!!)エネルギーを、さらに充填させられるに違いないとも確信しているんです・・

・・もちろん、あれだけ選手を替えて結果を出せなかったら、(監督というタスクと責任からすれば!?)大きなリスクにはなりますよね・・

・・でも私が、その先発を送り出すことに、まったく躊躇(ちゅうちょ)しなかったコトだけは確かな事実ですから・・

・・とにかく、チームにとって・・

・・とても深〜いコノテーション(言外に含蓄される意味)を内包する「健全な競争」という雰囲気を盛り上げることには、格段のポジティブな意味合いがあると思っているんです・・

そんな「対話」の後を受けて、後藤健生さんや大住良之さんから、「どうして、この(リーグ戦の!)タイミングで、このような先発にしたのか??」・・とか、「リーグではなく、ルヴァンカップでやる方が?・・」なんていう質問が飛んだわけだけれど・・

でもチョウ・キジェは、ステージ(ゲームの状況や意味合い等など)を考慮し、選択して実行するのではなく、あくまでも、プロの実戦という日常のなかで、自然な流れとして実行するのがよいと思ったと述べていた。

だから、まったく躊躇がなかった・・

ホント、素晴らしい・・

とにかくベルマーレは、前半の立ち上がり30秒ほど、ジュビロに攻め込まれ、ズタズタにされながら決定的ピンチを迎えるといった「喧噪」の後は、まさに互角のサッカーを展開し、しっかりと勝ち切ったわけだから・・

もちろん、「ゴール機会の量と質」という視点では、個の能力に長けたジュビロにも、特筆の見所はあったよね。

でも、チームとして一体になり、抜かれても、外されても、決してめげることなく、最後の最後まで、120%の闘う意志をブチかましつづけた(冒頭で指摘し た3つの決定的ピンチシーンを、最後の半歩で守り切ったディフェンス!)このベルマーレには、サッカー的な感動をもらった。

とにかく・・

様々な意味合いを内包するベルマーレの「リスクチャレンジ」によって、いまの(官僚的なアティテュードに支配されつつある!?)リーグの雰囲気に、ものすごく刺激的な一石を投じてくれたチョウ・キジェに対して、心から乾杯!!

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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