湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2018年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第18節(2018年7月28日、土曜日)
- サンフレッチェが魅せた美しく勝つサッカー(イメチェン!?)・・そして、オズワルド・オリヴェイラが魅せた素晴らしい「勝負勘」采配!?・・(サンフレッチェvsレッズ、1-4)
- レビュー
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- このゲームから、まずピックアップするのは、何といっても・・
そう、(数字的には!)大敗を喫してしまったサンフレッチェ広島だったけれど、彼らがブチかました(もちろん私にとっての!)イメチェンが、ものすごくインプレッシブだったんだよ。
サンフレッチェは、ゲームのイニシアチブを握り、その流れのなかで、後方からの積極的なオーバーラップも含めて、人数を掛けて攻め込んで決定的スペースを攻略したんだ。
私の認識が不足していたのかもしれないけれど・・
城福サンフレッチェについて抱いていたのは、手堅くボールを奪い返し、パトリックを軸に、素早くシンプルに相手ゴールに迫る・・っちゅう印象だったんだ。
それが・・
そう、たしかに前半立ち上がりは、レッズに主導権を握られた。
ただ10分もしたら、徐々にサンフレッチェが(全体的に!!)盛り返していったんだ。
そして、まさに「横綱相撲」ってな風情をも醸(かも)し出す。
選手たちも、自信たっぷりに、積極的で攻撃的なプレーを展開している。
そしてゲームのイニシアチブを奪い返しながら、それなりの「組み立てプロセス」から、スペースを攻略しちゃったりする。
たしかにパトリックは槙野智章に、かなり抑えられてはいたけれど、それでも、後方からの「サポートの波」がぶ厚いから、「そこ」で潰されても、次の仕掛けの展開につなげていける。
こりゃ、本物だ・・
そう、思った。
でも、そんなゲーム展開のなかで、武藤雄樹と興梠慎三が、えも言われぬほど美しい「イメージ・シンクロ・コンビネーション」を決めて、レッズ先制ゴールをブチ込んでしまう。
でも、私には、その先制ゴールからは、このゲーム展開からすれば、何か「唐突」という印象も受けてしまった。
それほどサンフレッチェが、立派に、「美しく勝つサッカー」を展開していたっちゅうことさ。
ということで、そんなゲーム展開だったからこそ!?・・
サンフレッチェの、セットプレー同点ヘディングゴールを、何か、勝負の流れからすれば、とても自然な同点ゴールのように感じてしまったんだ。
そして思った・・
これは、どちらが勝ってもおかしくない、ものすごくハイレベルな「勝負マッチ」になる・・
そして後半・・
サンフレッチェが、「ドミネーションの勢い」を加速させることになるんだ。
そう、レッズは、(ダゾンのインタビューで、オズワルド・オリヴェイラも、フェアに、そして素直に認めていたように!)完璧なイニシアチブを掌握されてしまったんだよ。
そんなサンフレッチェに対してレッズは、「耐えるサッカー」を展開していたっちゅうわけさ。
でも・・
そう、そんなレッズの、「ワンチャンスを狙う!?」忍耐ゲーム戦術イメージが、サンフレッチェ左サイド、柏弘文と佐々木翔のコンビによってズタズタに切り裂かれてしまうんだよ。
まず後半10分。
レッズ守備を引きつけた柏弘文から、ベストタイミングのスルーバスが、オーバーラップしてきた左サイドバックの佐々木翔にピタリと合う。
そして、そこからのダイレクト・クロスを、中央のパトリックが、完璧なヘディングシュートを見舞う。
でもそれは、僅かに、バーを越えてしまう。
それだけじゃなく・・
そう、その2分後の後半12分。
まったく同じようなカタチから、柏弘文のパスを受けた佐々木翔が、これまたダイレクトで、クロスを上げたんだ。
それが、今度はティーラシンにピタリと合う。
でも、その爆発的なヘディングシュートは、レッズGK西川周作のファインセーブで防がれてしまうんだよ。
サンフレッチェは、この2本の絶対的チャンスを決められなかったコトが、(ダゾンのインタビューで城福浩監督も言っていたように!?)最後まで響いた・・のかもしれない。
もちろん、心理・精神的にネ・・
そして・・
そう、その直後のタイミングで、オズワルド・オリヴェイラの「鋭い勝負イメージ采配」が炸裂するっちゅうわけだ。
その大ピンチ直後の後半13分。
オズワルドが、武藤雄樹に代えて、阿部勇樹をピッチに送り出したんだ。
そして柏木陽介の基本ポジションイメージを「一つ」上げる。
決して武藤雄樹のプレー内容が悪かったわけじゃない。
でも・・
そう、その交替によって、中盤ディフェンス(高い位置での相手攻撃の抑制とボール奪取!)が、よりダイナミックに変容し、攻撃でのダイナミズムもアップしたんだ。
これは、どうしようもないことなんだけれど、選手たちのプレー内容は、その時々に変容する、攻守にわたる「何らかの(物理的、心理的な!?)機能性」によって、大きく揺動する。
その選手たちが、強烈な意志をもって全力プレーを「やろう」としているにも関わらず・・
そう、それもサッカーなんだ。
だからこそ、プロコーチの、物理的、心理・精神的な「采配」が、ものすごく重要なキッカケになることがあるっちゅうわけさ。
そう、まさに、武藤から阿部勇樹への交替のようにネ・・
それと、この交替によって変容したモノとして・・
そう、忘れちゃいけないのは、柏木陽介が、一段上がったのと同時に、ファブリシオのプレーイメージ「も」、もう一つ前線へ押し上げられたコト。
これが、とても大きかったと思う。
それによって、チャンスメイカーの柏木陽介と前線の(まあ、青木拓矢と阿部勇樹も参加する!)中盤のリンケージが、明確に「増強された」っちゅうイメージなんだ。
要は、ファブリシオが、より高い位置でプレーするようになったことで、レッズ攻撃の「ハバ」が広がり、より効果的に「タテへ仕掛けて」いけるようになった・・っちゅうイメージなんだ。
そのことこそが、柏木陽介の、「あの状況でのクロス」に、後方から飛び出していくという勇気あるフリーランニングを引き出したと「も」思うわけさ。
そして、その後の「完璧カウンター」からの3点目ゴールについても・・ネ。
もちろん、そんな柏木陽介の「フッ切れたプレー」は、阿部勇樹と青木拓矢がいればこそ。
そう、その攻守にわたる、「創造的でカッチリとしたボランチコンビネーション」の機能性は、ホントに抜群だった。
そして、だからこそ、そんな「ダイナミックなイメージ連鎖」を生み出したオズワルドの、実効ある采配に「も」心からの拍手をおくるのさ。
最後に、あと二つのポイントを・・
一つは、ファブリシオのスーパーミドル弾。
決まって、本当に、良かった。
オズワルドも、ホントに喜んでいたでしょ。たぶん「その喜び」は、この試合で、もっとも大きかったんじゃないのかな。
そう、ファブリシオは、オズワルドにとって、今シーズンの「これから」を左右する、最も大きく期待される新戦力に違いないからネ。
そして最後に・・
そう、前述した二つの大ピンチシーンを、「間接的」に演出した、レッズ右サイドバック橋岡大樹。
彼は、紛れもない「期待の星」だよ。ホントに、素晴らしい才能に恵まれている。
だから、敢えて、言う・・
そう彼は、前述した二つの大ピンチだけじゃなく、後半26分に興梠慎三がPKを決めた、その3分後のサンフレッチェCKシーンでの大ピンチについて「も」大反省しなきゃいけないんだ。
まあ、私が言うまでもないだろうけれど・・サ。
とにかく、橋岡大樹は、この三つの大ピンチシーンで、相手の佐々木翔に「やられまくった」わけだから・・。
彼は、そのピンチを、勝負マッチだったからこその「これ以上ないほど貴重な学習機会」として、ビデオで反芻しながら、記憶タンクに、良いカタチで収納しなきゃいけない・・と思うのさ。
プライドの高い個人事業主に対しての厳しい意見・・ゴメンね・・
単なる老婆心だから・・サ。
ということで、今日は、こんなトコロです。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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