湯浅健二の「J」ワンポイント


2018年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第19節(2018年8月1日、水曜日)

 

美しい理想(解放)サッカーと、高い実効レベルの現実的な(戦術)サッカーの、必要に応じたコラボレーション・・(レッズvsフロンターレ、2-0)

 

レビュー
 
・・我々は、決して、意図して守りを固めようとしたわけではない・・

会見で、「先制ゴールの後、守備を固めたけれど・・」というニュアンスの質問に対し、オズワルドが、少しエモーショナルに反応していたっけ。

そりゃ、そうだ・・

何せ、興梠慎三の先制ゴールは、前半7分だったわけだから・・。

もちろん、観ているこちらは、ガップリ四つに仕掛け合う、「創造性サッカーのぶつかり合い」を、観たかったわけだけれど、でも「あ〜なっちゃったら」・・ネ。

そう、「あのゲーム展開じゃ」もちろんフロンターレの重心が、どんどんと「前へ」いくのは道理。

そんな攻撃的な姿勢に合わせ、レッズも、ゲームを少し落ち着かせる方向性で、その勢いを抑制しようとするイメージになるのも当然なんだよ。

そう、そんなゲーム展開は、とても自然な成りゆきっちゅうことさ。

もっと言えば・・

決して、「リードを奪ったレッズが、その先制ゴールを守り切ろうとしていた・・」なんてコタ〜、あるわきゃないんだよ。

ところで、その、フロンターレの仕掛けの勢いを、できるだけ効果的に抑制しようとするレッズ守備のプレーイメージだけれど・・

オズワルドも言っていたように、その守備姿勢は、積極的に、鋭く、素早く考えながら、次の勝負所を具体的に「イメージングする」っちゅうモノだった。

決して、消極的で受け身のディフェンスじゃあ、なかったんだよ。

それでも・・

そう、人とボールを活発に(そして素早く創造的なリズムで!)動かしつづけるフロンターレの仕掛けプロセスは、とても危険なんだよ。

何といっても彼らは、前後半あわせて、5本の決定機を創りだしたんだから。

そのうちの2本は、例えば橋岡大樹のバックパスを小林悠にかっさらわれるといった完璧な「個のミス」によるものだった。

でも、それ以外は、小林悠によるヘディングシュートや、スルーパスで抜け出し、マウリシオの勝負の守備アクションを切り返して放った決定的シュートなど。

フロンターレ鬼木達さんに言わせれば・・

・・たしかにレッズ守備は堅かった・・だから数えるほどしかスペースは攻略できなかった・・

・・でも我々は、「足許」だけじゃなく「空中のスペース」だって、しっかりと攻略したと思っている・・

フムフム・・

彼は、空中スペースのコトを、「上のスペース」って表現していた。また足許スペースは、「下のスペース」。

フムフム・・面白〜い。

へへっ・・

ところで、その決定的シュート(ゴール機会)だけれど・・

実は、そこでのフィニッシャーは、その全てが、小林悠だったんだよ。

「あの」決定力の権化ともいえる小林悠だからね、観ているこちらが、違和感いっぱいになってしまったのも頷(うなづ)けるでしょ。

そのシーンは、レッズにとって、確かにツキに恵まれていた・・とも表現できそうだね。

たぶんレッズベンチは、その瞬間、全員がフリーズした!?

でも、そのときの私は・・

実は、小林悠がシュートをブチかます直前のタイミングで、こんなコトがアタマをよぎったんだ。

それは・・

そう、「よしっ!!・・これでイーブンだ・・ここから、創造性サッカーのぶつかり合いを堪能できるゾッ・・」なんてね。

へへっ・・

あっと・・

レッズの反省ポイントだけれど・・

それは・・

フロンターレが、あんなに前へ重心を掛けているにも関わらず、カウンターの流れを、「効果的に演出できなかった・・」っちゅうことだね。

それには、前線プレイヤーが、かなり疲れていたコトもあるだろうね。

だから、タテパスが入っても、そこで巧くキープできない(タメてポストになれない!?)。

またキープできても、後方からのサポートが十分ではないことも含めて、展開パスがミスにになるケースが増えていった。

そんな、こんなで・・

徐々にレッズは、本当の意味で押し込まれる「ジリ貧の展開」に陥りそうになったわけだけれど・・

でも・・

そう、オズワルドが、そんな状況でグラウンドに送り出したのが、阿部勇樹だったっちゅうわけだ。

まあ、その後も、森脇良太や李忠成といったベテランを投入したけれど・・

私にとって、決定的に重要だったのは、阿部勇樹の投入だったというわけさ。

とにかく・・

・・彼は、まず忠実に、相手ボールホルダー(パスレシーバー)へ寄せていった・・そう、積極的なチェイス&チェック・・

・・また、その阿部勇樹を置き去りにしようとドリブルで進む相手には・・

・・「飛んで火に入る夏の虫」ってな感じで、ものすごくクレバーに、そして効果的に身体を寄せてボールを奪い返したりしちゃうんだ・・

・・その効果的でダイナミックな(創造的な)守備アクションの積み重ねは、感動的でさえあった・・

ここで、言いたかったことは一つ。

それまで、少し不安定になりかけていたレッズ守備ブロックが、阿部勇樹の登場で、再び、質実剛健に「安定し」はじめたということ。

もちろん、その時間帯のレッズ最前線は、フロンターレ守備ラインから、パスやドリブルで「タテへ上がっていく選手」を抑え切れないだけじゃなく、マークして戻ることも、ままならない。

そんなだから、阿部勇樹が、勇気あふれる「守備ハードワーク」によって、チームメイトに与えた勇気の重さは、相当なモノだったんだ。

だからこそ、レッズ守備のアクションラディウス(行動半径)が活性化したっちゅうわけさ。

ということで、勇気モティベーターの阿部勇樹に、乾杯っ!!

最後に、オズワルド・オリヴェイラ。

彼のオーラは、まさに、本物でしょ。

何といっても、彼が放散しつづける「勝者メンタリティー」のレベルがすごい。

もちろん、これからも彼は、とても高い実効レベルで、美しく勝つサッカーを志向しつづけるはず。

そう、最高の美しい理想(解放)サッカーだけじゃなく、必要に応じた、現実的な戦術サッカーも組み合わせながら・・ネ。

期待しましょう。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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