湯浅健二の「J」ワンポイント


2018年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第28節(2018年9月29日、土曜日)

 

両チームのサッカー内容の揺動・・また、長谷川健太監督の「元気な選手」という素敵な表現についても・・(FC東京vsエスパルス、0-2)

 

レビュー
 
・・「あのシュート」が決まっていれば、オレの情緒も、もっとスッキリしていたのに〜・・

試合後には、そんな澱(よど)んだ思い苛(さいな)まれてしまった。

それほど、ゲームの実質的な内容と結果の「シンクロ度」が高くなかったんだ。

まあ、どちらかと言ったら、「つかみ所のない」ゲームだったとも言えるかネ。

前半・・

その内容は、とてもクリアなモノだった。

そう、FC東京がゲームの流れを牛耳り、何度もゴール機会を創りだしたんだ。

もちろんエスパルスも、個のゴリ押し勝負から(単発の!?)チャンスは創りだしたけれど、ゲーム全体としては、明らかにFC東京が、その流れを牛耳っていたのさ。

そこで注目したのは、何といっても、ボールの「タテ方向への動き」だった。

エスパルスのボールの動きが、横方向や、足許パスばかりなのに対し、FC東京の「それ」は、まさに、前後左右に、活発に(創造的に!)動きつづけたんだ。

特に、仕掛けのタテパスの頻度と正確性が、とてもインプレッシブだったっちゅうわけだ。

そして、そんな、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションをベースに、何度も決定的スペースを攻略してゴール機会の流れを創りだしてしまうFC東京なんだ。

ということで、ハーフタイムに入る前は、コラムのピックアップテーマが、明瞭にアタマに形作られていたっちゅうわけだ。


でも・・

そう、後半になってからは、ゲーム展開が大きく変容してしまうんだよ。

逆にエスパルスが、主導権を握りつづけたんだ。

そしてエスパルスは、ゲーム内容を大きくポジティブに変容させただけじゃなく、何度か、決定的なチャンスまでも創りだしてしまう。

それが、冒頭のリードインで書いた、「あのシュート」。

それは、後半の立ち上がり2分の出来事だった。

エスパルスの突貫小僧、金子翔太。

彼が、後ろから上がってきていた右サイドバック立田悠悟にバックパスを送り、それを立田悠悟が、ダイレクトで、正確なクロスを送り込んだ。

そのクロスボールが、ビックリすることに、ゴール前中央ゾーンで待つドウグラスのアタマに、ピタリと、まさにピタリと合ってしまったんだよ。

それは、誰もが、ドウグラスのヘディング先制ゴールだ・・って確信した瞬間だった。

でも・・

そう、ドウグラスのアタマから弾丸のように弾き出されたボールは、FC東京GK林彰洋の「ほぼ正面」に飛んでしまったんだ。

私は、その劇的なチャンスシーンを体感しながら、前半のエスパルスのサッカーを反芻しながら、こんなコトを思っていたっけ・・

・・あ〜〜っ、ビックリした・・

・・あんな、「ゴリ押しの個人勝負しか繰り出せない」エスパルスなのに、いまは、パスを積み重ねてでシュートまでいったよな・・

・・まあ、このチャンスは、偶発的モノだろうし、(前半には!)課題が見え隠れしていたエスパルスにとっちゃ、千載一遇のチャンスメイクだったっちゅうことなんだろうな〜・・

でも・・

そう、実は、そのチャンスメイクは、決してフロックではなく、後半にイメチェンしたエスパルスを象徴するようなモノだったんだよ。

実際エスパルスは、「そこ」から、前半とはまったく違う、とても高質な組織サッカーを展開しはじめたんだ。

まあ、とはいっても・・

そう、実際にエスパルスが奪い取ったゴールは、偶発の、こぼれ球ヘディングと、ドウグラスが、「とてもクレバーにファールを誘い込んで」奪い取ったPKを、彼自身が決めたモノではあったわけだけれど・・ね。

もちろん、後半になって、あれほどサッカー内容をアップさせられたんだから、そのゴールにしても、ある意味「必然」だったのかもしれないけれど・・さ。

ということで・・

後半も、例によって、とても優れた組織サッカーで、何度か決定的チャンスの流れを創りだしたFC東京だったから、前半の(優れたサッカー内容での!)イニシアチブ掌握も含めて、何か、スッキリしない幕切れっちゅうコトになったわけさ。

だから・・

そう、あの、後半立ち上がり2分に、エスパルスのドウグラスがブチかました素晴らしいヘディングゴールが決まってさえいたら、こんな歯切れの悪い情緒に苛(さいな)まれるコトもなかったはずだって思っているわけさ。

そうそう・・近頃のFC東京だけれど・・

直近の9試合で彼らがゲットしたのは、たったの「4勝ち点」だけだったんだ。

そう、四つの引き分けでの「勝ち点4」。

何だったんだろうね・・

FC東京のサッカーが、とても優れていることは衆目の一致するところでしょ。

守備もしっかりとしている。

また攻撃だって、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションをベースに、要所で「個の爆発ドリブル勝負」がブチかまされるってな、高質な組織サッカーなんだ。

でも・・

そう、一時期の絶好調からすれば、勝負という視点で、ツキに見放されている。

長谷川健太監督は、それについて、こんなニュアンスの内容をコメントしていた。

曰く・・

・・もちろんタラレバは良くありませんが、実際のゲーム内容として、満足できるサッカーも多かったんです・・

・・でも・・

・・そう、この試合のように、不運なカタチで失点し、全体的には勝てるゲームなのに結果を出せないというゲームがつづいたんです・・

・・そんなですから、チームの雰囲気が重くなってくるのも道理・・

・・私は、そんな状況だからこそ、元気のある選手が出てきて欲しいと願うんです・・

・・若手とか、ベテランとか、年齢には関係なく、元気のある選手が出てきて欲しい・・

・・とにかく今は、チームを元気にし、活力を与えられるようなエネルギーを放散する選手が必要なんです・・

フムフム・・。

それって(その心理メカニズムは!?)、ホントに、よく分かる。

もちろん、その「元気」が、どのようなモノ(タイプや種類など!?)なのかは、まさに千差万別だから、具体的に言及することは出来ない。

それでも、長谷川健太さんが言う「元気な選手」という表現に込められたコノテーション(言外に含蓄される意味)は、手に取るように分かるんだよ。

このテーマについては、「The Core Column」で以前に発表した、「瞬間的なリーダーシップ」という内容の「このコラム」もご参照あれ。

とにかく、長谷川健太さんの「深〜い発言」には、とても触発されましたよ。

ありがとうございました〜〜

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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