湯浅健二の「J」ワンポイント


2018年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第29節(2018年10月7日、日曜日)

 

調子が良い実力チーム同士の、エキサイティングなガチンコ勝負・・ホント、堪能した・・(アントラーズvsフロンターレ、0-0)

 

レビュー
 
前半・・

人とポールを活発に動かしながらブチかます、まさに秀逸を極める、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーション。

その「動きのリズム」は、高みで安定している。

だからこそ、次、その次のパスレシーバーが、「パスを受けた後のプレー」を、しっかりとイメージしながら、パスレシーブの準備ができる。

もちろん、そんな、人とボールの動きの優れたリズム(≒次のプレーイメージ素早い描写)があるからこそ、選手たち自身の動きの量と質も、うまく制御できる。

えっ・・!?

もちろん、前半のフロンターレが展開した高質サッカーのことだよ。

とはいっても・・

そう、前半のアントラーズは、そんなフロンターレの人とボールの動きを・・、もっといえば、そのリズムを、積極的に崩そうとはしていなかったんだよ。

そんなアントラーズのゲーム戦術的な意図が、最初のテーマだね。

それって・・

アントラーズ守備が、フロンターレの「動き」を、狡猾に制御しようとしていたということか!?

そう・・

たしかに、そんな分析視点もありそうだね。

ということで、アントラーズは・・

激しく寄せたり、積極的にボールを(パスを)奪いにいったりせず、ボールを奪い返す勝負ポイントに「狙いを定めよう」としていたと思うんだよ。

だから、積極的なチェイス&チェックではなく、どちらかといったら、状況を掌握するような「ウェイティング姿勢」の方が目立っていたと思うわけさ。

そう、ポジショニングバランス・オリエンテッドな守備ブロック。

もちろん、そんな、ボール奪取プロセスへの「イメージング内容」は、トレーニングのなかで、しっかりと選手たちがシェアしているっちゅうわけだ。

とはいっても・・

たしかに、前半のフロンターレは、エウシーニョからの「ニアポスト勝負クロス」や、同じエウシーニョから小林悠への、PKを呼び込む鋭いパスといったチャンスは創りだした。

でもフロンターレは、ゲームを支配していた割には、スペースを効果的に攻略できていたというわけでもないんだよ。

もちろんその背景には、個の勝負プレーで抜群の実効レベルを誇る「家長昭博」が出場停止という要因もあるだろうね。

家長昭博がいれば、人とボールの「動き」に、「タメ」や「ドリブル突破」といった個の勝負プレーを効果的にミックスしていけただろうからね。

そうネ〜、今日のフロンターレには、「仕掛けプロセスの変化」が足りなかったとも言えそうだね。

たしかに・・

前半のフロンターレは、完璧にイニシアチブを握っていた。

でもそれは、最終勝負へ至る「前段階」まで。

そして、アントラーズによる、狡猾な「ゲーム戦術のワナ」にはまってしまったっちゅうわけだ。

そんな前半だったけれど・・

そう、後半は・・

とても興味深い「ゲームの流れの変容」があったんだ。

まず・・

アントラーズのボール奪取プロセスが、風雲急を告げはじめたこと。

当然ながら、今度はアントラーズが、ゲームのイニシアチブを握ることになる。

対するフロンターレ。

たしかに、ボール奪取(守備)プロセスへの「エネルギー注力レベル」がダウンした。

そんなだから、ゲーム展開を「逆流」させられるだけのダイナミズム(もちろん闘う意志のことだよ!!)を充実させられないのも道理。

ところで・・

そんな「ゲームの流れの変容」には、どんな、戦術的バックボーンがあったのだろうか?

目立たない、ゲーム戦術イメージの調整・・!?

まあ、そんな微妙な、「戦術イメージングの変更と再構築」については、外部は想像するしかないわけだけれど・・

聞くところによると、アントラーズ大岩剛監督は、ハーフタイムに・・

・・守備(組織)を効果的にスライドさせながらフロンターレの攻撃に連動して対応・・サイドからの素早く積極的な仕掛け・・(前半の)我慢は想定内、ここからが勝負・・

・・ってなハナシをしたらしい。

まあ、とはいっても、戦術的な「微妙な指示の内実」については、外部は、知る由もないでしょ。

まあ私は、(実際の指示とは全くかけ離れた成功要因があったにもかかわらず!)後付けで、自画自賛する監督やプロ選手たちを、よく知っているから・・サ。

フムフム・・

あっと、大岩剛監督のハナシ・・

守備のスライドだけれど、まあ、その機能性は、前述した内容と同義だろうね。

要は、フロンターレの「動き」を、追い過ぎず、連動して狙いを定める・・っちゅう内容。

でも、全体的な連動ディフェンスの勢いは、後半になって着実にアップしていったよ。

だからこそ、より高い位置でボールを奪い返せるようになったし、(積極ディフェンスで多くのチームメイトが上がったことで!)次の攻めに人数をかけられるようにもなった。

ところで・・

前半の我慢は想定内・・というハナシだけれど・・

わたしは、「まあ、そういうことなんだろうな・・」って感じていた。

そして実際に・・

フロンターレは、イニシアチブを握られることで疑心暗鬼に陥り(!?)、次の攻撃で、十分に人数をかけられなくなったよね。

まあ、それは、アントラーズに押し込まれたことによるわけだけれど・・サ。

また、アントラーズのサイド攻撃にしても、右サイドバック安西幸輝の攻め上がりが、全体的な勢いのアップ(サッカー内容の好転!?)によって、より積極的になったよね。

そして今度は、フロンターレのサッカーが縮こまっていく。

そして「ここから」、後半での、二つ目の「ゲーム展開の変容」が起こるんだよ。

そのキッカケは、フロンターレ鬼木達監督の采配。

そう、彼は、そんなジリ貧のゲーム展開を打開するため、ケガ明けの守田英正に代えて、タテパスを呼び込むフリーランニングが鋭く積極的な「知念慶」を投入したんだ。

これで明確なツートップ。

そしてフロンターレは、前半では、チャンスメイクを効果的に抑制されていた牛若丸(中村憲剛)を、後方からのゲームメイカーとして再活性化させたんだよ。

これは、(私が観た前回のフロンターレと同様に!)とても興味深い采配だった。

そしてフロンターレが生き返る。

後方から前線への効果的パスが出るようになったし、前線でのポストプレーも効果的に演出できるようになった。

それもまた、知念慶という、ウラ取りフリーランナーがいることで、アントラーズ最終ラインの前に、少しだけスペースが出来るようになったからに他ならない。

面白い・・

そう思っていたら・・

小林悠がケガでグラウンドを後にしてしまうんだ。また後半ロスタイムに入ってからは、阿部浩之が二枚目イエローで退場になってしまうんだよ。

でも結局は、(アントラーズが超越パワーを発揮できずに!?)そのままの「ドロー」でタイムアップということになった。

とにかく、絶好調の実力チーム同士が魅せつづけた、エキサイティングなガチンコ勝負。

堪能した。

============

最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


===============

 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

==============

 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





[トップページ ] [湯浅健二です。 ] [トピックス(New)]
[Jデータベース ] [ Jワンポイント ] [海外情報 ]