湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2018年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第3節(2018年3月10日、土曜日)
- レヴィー・クルピの苦しみは、手に取るように体感できる・・それに対して鬼木フロンターレは既に本来の高質サッカー領域に入っている・・(フロンターレvsガンバ、2-0)
- レビュー
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- ブラジルの名将、レヴィー・クルピ・・
ガンバの監督に就任した彼は、会見で、絞り出すように、こんなニュアンスの内容をコメントしていた。曰く・・
・・これほど、(リーグ開幕から!)ガンバらしさを出せないゲームがつづいたことは、想像を絶する出来事だ・・
・・いろいろな選手を起用することで、彼らのクオリティーを見極めようとしているが、チームとしてのバランスが悪いこともあって、サッカーがうまく回っていかない・・
・・もちろん、全ての責任は、自分にある・・ここからしっかりとチームを立て直していいくつもりだ・・
・・勝者メンタリティーが欠如している?・・
・・ガンバ監督に就任したばかりだから、そのような(心理マネージメントの!?)テーマを掘り下げていくのは、まだ時期尚早だと思う・・
・・なにせ、メンタル、フィジカル、戦術といった全てのファクターで、かなり後れを取っているのが現状なのだから・・
・・これから今野泰幸も戻ってくるだろうし、(外国人の!?)新戦力も入ってくる・・
・・とにかく、これからだ・・しっかりとチームを立て直す覚悟はできている・・
わたしは、これまでに彼が日本で為してきた大きな成果を高く評価しているし、日本サッカーへの貢献に対する感謝も含めて、彼と(英語で)立ち話をしたこともある。
そう、私は、同年齢のレヴィー・クルピを(あれっ・・彼はオレよりも一つ下か!?)、エモーショナルにも、サポートしたいと思っているのサ。
だから、チト、気が重かった。
とにかくガンバは、それほど、例によって素晴らしいサッカーを展開したフロンターレにズタズタにされてしまったんだよ。
前半でも、後半でも、立ち上がりのガンバは、全員が連動するようなアクションを積み重ねるなかで、しっかりとボールを奪いにいった。
でも結局は、その守備アクションが、うまく連動しなくなってしまったんだ。
そう・・、フロンターレがブチかます、ものすごく高質な、人とボールの動き(その軽快なリズム!?)に翻弄されまくっちゃったんだよ。
とにかく、フロンターレが魅せつづけた、ダイレクトパスを織り交ぜたスーパーな組織コンビネーションは、観ていて、ホレボレさせられる。
そして、ガンバのボールを追う「意志」が、急激に減退していったというワケさ。
たしかに、井手口陽介、今野泰幸、倉田秋といった主力の(移籍やケガなどによる!)不在は、とても痛い。
でも私は、前述したような、ガンバが陥った、心理的な悪魔のサイクルとでも言えそうな「ジリ貧のゲーム展開」には、もちろん納得していなかったよ。
そうサ・・
いくらサッカーの質に差があったとしても、少なくとも、攻守ハードワークの量と質で上回っていれば、必ず、いつかはペースを逆流させられるモノなんだよ。
でもガンバ選手たちからは、そんな「意志のエネルギー」は、ほとんど感じられなかった。
それがとても残念だったし、その事実を目の前で体感させられているレヴィー・クルピの苦しみは、察するに余りあるモノだったんだ。
「あの」名将レヴィー・クルピ・・が、だよ。
フ〜〜ッ・・
あっと・・フロンターレ・・
書くまでもなく、今シーズンの彼らは、既に、本来の高質サッカー領域に入っている。
たしかに、まだ(特にACLでは!)、内容と結果に「乖離」はあるけれど、いまの彼らのサッカーを観ていたら、そんな「ギャップ」も、すぐに埋めちゃうに違いないって思える。
そういえば、監督会見で鬼木達監督が、こんな表現を使っていたっけね。
・・(チームが!?)自分たちのサッカーを(深く!?)信じている・・
そんな「フロンターレのサッカー」・・。
選手たちは、やっていて楽しいに違いない。
何せ、自分たちがイメージするプロセスでボールを奪い返し、自分たちのアタマに描くプロセスで、相手守備のウラに広がる決定的スペースを攻略できちゃうんだから・・。
そんなだから、選手たちの、攻守ハードワークに代表される「クリエイティブなムダ走り」の内実がアップするのも道理だよね。
そんな高質サッカーの演出者たち・・
特に、牛若丸と家長昭博の「イメージ・シンクロ状態」が、得も言われるほど美しい。
そうそう、天才、家長昭博・・
私は、彼がブチかます攻守ハードワークを観るにつけ、「なんで彼は、いまのプレーイメージを、もっと以前の段階で表現できなかったんだろ〜・・」なんて、悔しい思いに駆られる。
「あの才能レベル」だからね。とても、とても残念なんだよ。
これまで何度も繰り返し主張しているけれど、ユース選手には、才能レベルが高ければ高いほど、攻守ハードワークの重要性を体感させなきゃいけないんだ。
もちろん押しつけではなく、彼ら自身が、「それ」の大切さを体感し、自ら「やりたい」と思うように仕向けるわけさ(クレバーな心理&戦術マネージメント!?)。
そう、選手の(様々な意味を内包する)キャパシティーをディスカッションするとき、最後に出てくるのは、やっぱり選手のパーソナリティーとインテリジェンスっちゅうテーマなわけだね。
あっと・・
今日は、こんなところです。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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