湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2018年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第6節(2018年4月8日、日曜日)
- いろいろなタイプの(選手)クオリティーを秘めるフロンターレの、進化ベクトルは広く、深い・・(マリノスvsフロンターレ、1-1)
- レビュー
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- ゲームは、ものすごく興味深いダービーマッチへと「成長」していった。
何が興味深かったかって!?
そりゃ、前半と後半のゲーム内容の「差異」だよな。
そう、そのコノテーション(言外に含蓄される意味)を考察することには、格別の価値があると思うわけさ。
皆さんもご覧になった通り、前半のフロンターレは、少なくとも3ゴールはブチ込めたよね。
鬼木達監督に質問した大住良之さんが、「今シーズン最高のサッカーだった・・」と賞賛していたけれど、私も同感だった。
もちろん守備(ボール奪取プロセス)も抜群に安定していたけれど、それを絶対的ベースにする次の攻撃が、秀逸の極みだったんだよ。
そう、ダイレクトパスを織り交ぜた組織パスコンビネーション。
フロンターレは、面白いように人とボールを動かしつづけ、何度も、何度も、(普通は、とても堅牢な!)マリノス守備ブロックの(ウラの)決定的スペースを攻略しちゃうんだ。
シュートを打つことは攻撃の唯一の目的。
そして・・
そこに至るまでの具体的な目標イメージは、いつも書いているように、スペースを攻略すること(=ある程度フリーなボールホルダーを創りだすこと!)なのだ。
牛若丸を絶対的コアに、フロンターレは、まさにカミソリのように鋭いコンビネーションで、スパッ、スパッ・・っと、ラストパスを決めちゃう。
もちろん、そのスペース攻略プロセスは、タテ方向もあるし(一発スルーパス!?)、横方向もある(サイドのペナルティーエリア角ゾーンの攻略!?)。
とにかく、前半のフロンターレは、まさに変幻自在のスーパーチームだった。
マリノス、ポステコグルー監督も、こんなニュアンスのコメントで、シャッポを脱いでいたっけね。曰く・・
・・たしかに前半は、かなり、スペースを突かれてピンチに陥った・・
・・それには・・
・・フロンターレを「レスペクトし過ぎ」だったという側面もあるだろうし、チェイス&チェックが甘く、ボールホルダー、次のパスレシーバーへの寄せが甘くなったこともある・・
でも後半は・・
そう、徐々に、互角の展開へとゲーム内容が「変容」していったんだ。
その要因は・・!?
それは、もちろん、両チームにある。
フロンターレ攻撃が、疲れから、少し間延びするようになった(鬼木達さんの表現)。
またマリノス守備が、フロンターレの「組織コンビネーションのリズム」を、より正確にイメージ出来るようになったという面もあるに違いない。
前半は、鬼木フロンターレの真骨頂である、「次のフリーな味方を、素早く、正確にイメージしながらの創造性パスサッカー」が冴えまくった。
彼らは、パスを受ける前から、次のフリーな味方まで、明確に「見えて」いたんだよ。
それこそが、創造的なイメージング能力。
その能力を、「あのレベル」まで引き上げた鬼木達さんのストロングハンドに、心からの拍手をおくらなきゃいけない。
あっと・・、もちろん、底流の「風間八宏イズム」に対しても・・ネ。へへっ・・
とにかく、その「リズム」は、素晴らしいの一言だった。
でも・・
そう、後半は、フロンターレの、ボールがないところでの人の動きが、やや鈍重になったことで、人とボールの動きのリズムが、徐々に減退しはじめたんだよ。
また、前述したように、マリノス守備が、慣れた(さまざまな心配からフッ切れた!?)こともあった。
ということで後半は、まさに互角の展開になったっちゅうわけだ。
そして・・
そう、そんなタイミングで、フロンターレの「個の天才たち」が交替出場してきたっちゅうわけさ。
言わずもがなの、大久保嘉人と齋藤学。
でも、どうも、彼らの評価ニュアンスは微妙なモノになってしまうんだよ。
たしかに何度かは、彼らの個のチカラでチャンスは創りだした。でも逆に、組織コンビネーションの「リズム」が改善することはなかった・・と思うわけさ。
だから、そのポイントについて、鬼木達さんに聞いた。
・・前半は、まさにスーパーサッカーだった・・
・・でも、後半になって出場した大久保嘉人と齋藤学は、どうも個の勝負に偏りがちで、組織サッカーのリズムアップには貢献できていなかったという印象をもったのだが・・
そんな私の質問に、鬼木達さんは、例によって真摯に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。曰く・・
・・いや・・わたしは、彼らについては(彼らがもたらす価値については!?)少し違った考え方を持っているんですよ・・
・・前半は、フルパワーで良い組織コンビネーションを展開できたけれど、そこで「推進力」を使いすぎてしまい、後半は、組織の勢いが減退気味になった・・
・・そんな状況で、今度は、個で「も」勝負できる大久保嘉人と齋藤学を投入することで、攻撃に変化をもたらすこと(再活性化!?)が出来ると考えているんです・・
ナルホド〜〜・・
たしかに、この二人によって、大きな仕掛けの変化が生まれ、それが、堅牢なマリノス守備を混乱させていたよね。
そして、そんな変化の流れに乗って、大久保嘉人も齋藤学も、自らがシュートしたり、ラストパスを送り込むなど、チャンスを演出したよな。
まあ・・
たしかに私の質問では、大久保嘉人と齋藤学が、組織コンビネーションの「リズムを乱す」というネガティブニュアンスが強すぎたかもしれないけれど・・
でも、私が、その質問に込めたかったニュアンスは・・
もし、大久保嘉人と齋藤学が、基本的には、フロンターレの組織コンビネーションのリズムに乗りながら、タイミングを見計らった(良いカタチでボールをもっ
たときの!)ドリブル勝負「も」ブチかませるような、柔軟な勝負も出来るようになれば、まさに「鬼に金棒」・・っちゅうコトさ。
とにかく、様々なクオリティーを内包するフロンターレは、とてつもなく深く、広い可能性を秘めているということも言いたかった筆者なのであ〜〜る。
それにしても、フロンターレが前半に創りだした、「あの」4本、5本の絶対的チャンスが決まっていたら・・
へへっ・・
またまた「タラレバ」。
だからサッカーは、やめられない。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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