湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2019年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第1節(2019年2月22日、金曜日)
- ロティーナ(セレッソ監督)のゲーム戦術に、ズッポリはめ込まれてしまったヴィッセル・・(セレッソvsヴィッセル、1-0)
- レビュー
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- ・・え〜〜っ・・ビジャ、イニエスタ、ルーカスが一つのチームでプレーするのかい??・・
・・オマエ、それで、うまくいくと思う??・・
・・そりゃ、チーム全体を「動かす」ことにゃ、苦労するだろうけれど・・サ・・
先日、ドイツの知り合いでプロコーチと、そんなハナシをしていました。
そんな心配は、世界中の誰もが抱いたに違いない。
たしかに三人とも、優れた天賦の才に恵まれてはいる。
でも、歳を重ねているし、彼らにとっては「都落ち」に違いない日本でのプレーだからね。
攻守ハードワークや勝負ドリブルといったリスクチャレンジに、積極的に取り組むのを期待する方が酷というモノでしょ。
実際・・
彼らは、常に止まって足許パスを待つんだよ。
そう、ボールを持つ自分がコアになって、ダイレクトパスを織り交ぜた、決定的な組織コンビネーションを仕掛けたり、自分のトコロからラストパスが出る、はたまた自身がクロスやシュートまでいってしまう・・ってなイメージ。
もろちんビジャは、何度か、決定的スペースへ「抜け出しフリーランニング」は魅せていた。もちろん、イニエスタがボールを持った(持とうとしている)ときは・・ネ。
またルーカスにしても、良いカタチでボールをもったら、積極的にドリブルシュートにトライしていたし、これまたイニエスタがボールをもったら、スペースへ抜け出すような「ボールなしの動き」も、忠実に魅せようとはしていた。
でも、そんな彼らの、「オレ達が主役になって決定的チャンスを創りだす・・」というイメージは、クレバーなセレッソ守備によって、ことごとく寸断されちゃうんだ。
そう、それこそが、スペインの智将、アンヘル・ロティーナによる「ゲーム戦術のワナ」だったというわけさ。
そのワナとは・・
彼は、ゲームの立ち上がりから、しっかりとした「ブロック守備」を構築した。
決して、受け身で消極的な「リトリート守備ブロック」というわけじゃない。
あくまでも、ポジショニングオリエンテッドな守備ブロックを維持することで、次、その次で、「積極的にボールを奪い返そう」っちゅうわけだ。
私は、そんな彼の「やり方」については、過去2年間、ヴェルディでしっかりと観察しているから、よく分かる。
そして・・
相手ボールホルダーに対し、無理なプレッシング(ボール奪取デュエル)を仕掛けるのではなく、状況に応じて、デュエル、ウェイティングを、しっかりと使い分ける。
その、よくトレーニングされた「メリハリ」が素晴らしい。
もちろん前半は、イニエスタやビジャに対しては、(日本人だったら!?)取れるかもっ(!?)っちゅうタイミングと状況で、無理に(!?)ボール奪取デュエルを仕掛けたことで置き去りにされてしまうシーンが続出したよね。
でも・・
そう彼らは、ゲームのなかで、その「メリハリ」を、しっかりと調整し、進化させていたんだ。
またロティーナは、選手交代についても、まさに完璧なプランを成就させた。
そう、都倉賢とレアンドロ・デサバト。
この二人を勝負所で投入したことが、カウンターチャンスの増大と決勝ゴールにつながったし、その後の「余裕の守り切り」の演出にもつながった。
それは、ホント、アンヘル・ロティーナによる、素晴らしい采配ではあった。
ところで、VIP(ビジャ・イニエスタ・ポドルスキを地元では、そう呼ぶらしい)・・
そりゃボールをもったら観ているモノを魅了するよね。
でも・・
そう、彼らは、相対するディフェンダーが、まったくアタックに入らず、ずっと「付いていく」っちゅう、とても難しい状況と対峙していたんだ。
そんなマーキングを、スピードやスキルを駆使して置き去りにするのは難しい。だから、どこかでパスに逃げる。
でも、そのほとんどが、(追い込まれたパスだからこそ!)セレッソ守備によって「読まれ」パスカットされたり、次のパスレシーバーへのアタックで奪われてしまったり。
また、「VIP」の守備だけれど・・
たしかに最前線では、少なくともボールへは詰めていくよね。そう、チェイス&チェック。
とはいっても、あんな「ぬるま湯のチェイス」では、相手パスレシーバーの余裕を奪い去れるはずがない。
また、(中盤以降の!)実際のボール奪取プロセスでは、イニエスタを除いて、ほとんど絡んでいかずに様子見を決め込む。
もちろん、「そこ」でボールを奪い返せるという確信が高まったらハナシは別。
そんなアタックをブチかます迫力は(特にビジャ!)、たしかに世界のホンモノさ。
でも・・
フ〜〜ッ・・
まあ、仕方ない。
ということで・・
これまたスペインの名将、マヌエル・リージョが、ここから、どのように「チーム戦術」を微調整し、進化させていくのか、見物じゃありませんか。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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