湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2019年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第12節(2019年5月18日、土曜日)
- マリノスの完勝のように見えても、そこには、結果を逆転させてしまうほどのネガティブな「「心理要素」も見え隠れしていた・・(マリノスvsヴィッセル、4-1)
- レビュー
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- ・・前半は、タフなゲームだった・・
監督会見の冒頭、ポステコグルーが、そんなことを言った。
そう、まさに、その通り。
でも、実はわたし・・
そんなポステコグルーの冷静な分析とはかけ離れたマインドで、アタマにきていた。
だから、こんな質問をブチかました。
・・勝ったから聞くのですが・・
・・前半はタフなゲームだったと言われました・・
・・わたしは、その(マリノスが何度もピンチを迎えたことの!)バックボーンとして、ディフェンスが、まったくなっていなかったって思っているんです・・
・・ってな、怒りの質問だった。
そりゃ、そうだよ。
何せわたしは、ポステコグルー・マリノスのサッカーを、心からサポートしているわけだからね。
そんな私の期待に反してマリノスは・・
前半の立ち上がり数分以降、完璧に「ゲームと勝負の流れ」を牛耳っていたにもかかわらず、一瞬の「気抜けプレー」で、何度も、決定的ピンチを迎えてしまったんだ。
それが(私の眼には)集中力の欠如・・って映っていたから、ホント、アタマにきた。
・・バカヤロ〜・・何やってんだ〜っ!!!・・
・・ってな心の叫びが、身体中にあふれ返った。
そんな決定的ピンチだったけれど・・
スーパーGK、朴一圭(パク・イルギュ)が、身体全体で(勇気満々に!!)防いだんだ。
彼は、後半も含め、失点ピンチを、少なくとも4回は防いだ。
チームは、彼に対して、心から感謝しなきゃいけない。
ところで・・
私がアタマにきたコトのバックボーンだけれど・・
言うまでもなくそれは、様々な「局面ディフェンス」が、安易の極みだったから。
例えば・・
・・ボール絡みのデュエルで粘りが足りない・・
・・ボールがないところでの、相手の次のパスレシーバーに対する「寄せ」が甘い・・
・・ボールがないところでの「マーキング」も甘い・・
・・また、ボールを奪い返してからの展開も、とてもイージー(安易)・・
・・だから、ヴィッセル選手たちの「視線を盗んだ爆発的な寄せ」で、再びボールを失ってショートカウンターを喰らってしまうってなシーンが続出した・・
・・等など。
あっと・・
後半にも、同じような「気抜けディフェンス」があったっけ。
それは、ヴィッセルに、「高い」最終ラインの逆を突かれた必殺カウンターだった。
マリノス最終ラインは、ボールを失ってしまうことは予測できたはずなのに、全員が、ボール(≒シチュエーション)ウォッチャーに、成り下がっていたんだ。
とにかく、悪いカタチでのボールロストが、決定的ピンチにつながるってなシーンを、繰り返し見せつけられたんだから、怒り心頭の発するのも道理でしょ。
まあ、そんな私の怒りの質問に対して、ポステコグルーは、例によって真摯に、そして冷静に、論理的なコメントを創りあげていたけれど・・サ。
もちろん、彼の言い分は、十分に理解できる。
でも・・
そう、私の眼には、それらのピンチが、守備での「安易な気抜けマインド」によって生まれたとしか見えなかったんだよ。
まあ、ポステコグルーのことだから、そんなネガティブ現象を、次のステージへ進化させるための「貴重な学習機会」として、効果的に「逆」活用してくれるとは思うけれど・・ね。
「それ」以外のマリノスの出来だけれど・・
まあ、言うことないほどに素晴らしかった。
例によって、フィールド全体をコンパクトに「まとめ」ながら、効率的にボールを奪い返し、そこから、間髪を入れずに、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションをブチかます。
そして、それを絶対ベースに、タイミングと状況を見計らった必殺ドリブルも、効果的にミックスしていくんだ。
そう、とてもハイレベルな「組織と個のコラボレーション」。
良かったですよ。
ところで・・
この試合では、我々がイメージしていた「先発メンバー」から、数人が外れたワケだけれど・・
でも、全体的な「サッカーの機能性」は、前述したイージーな守備マインドを除いて(!?)、まったく見劣りすることはなかった。
あっと・・
チト、守備のイージー(安易な)マインドを攻撃し過ぎたかもしれないけれど・・
この試合でマリノスが魅せたサッカーの全体的な印象は、そりゃ、素晴らしいの一言だった。
まあ、今日は、ちょっと「斜に構えて」、いつも冷静なポステコグルーをネガティブに刺激してやろうと試みたわけだけれど、見事にスルーされちゃった。
へへっ・・
ということで、最後にヴィッセルについても一言だけ・・
監督会見に臨んだ吉田孝行さんは、とても憔悴していたと思う。
そして、「為す術がなかった・・」ってな雰囲気のコメントを出すんだよ。
もちろん、彼が意図したサッカーは出来なかったんだろうね。
そんな、落ち込んだマインドが集約されていたのは・・
・・互いにスムーズにスライドしながら(マークの受け渡しとポジショニングの調整!?)、コンパクトに厳しいプレッシャーを掛けていくというゲーム戦術イメージだったけれど・・
・・徐々に、最前線のディフェンスが甘くなり、そのことで、後方のディフェンス機能性も、見るからに減退していった・・
・・ってなコメントだった。
おっしゃるとおり。
前半の立ち上がりでは、その前線からの「チェイス&チェック」が機能していたことで、とても良いカタチでボールを奪い返せていた。
それが、前述した「あの」素晴らしいゴール機会を創り出した。
でも、チーム全体が、同じ攻守イメージを基盤に、十分な仕事量(攻守ハードワークとリスクチャレンジ)をこなさなきゃ、良いサッカーなど望むべくもないことは論を俟(ま)たない。
とにかく今は、様々な意味合いを内包する「闘う雰囲気(意志)」を再構築しなきゃいけない。
たしかに、吉田孝行さんは、追い詰められている。
だからこそ、逆に、「素晴らしい機会」に恵まれている・・とも言える。
そう、脅威と機会は「表裏一体」なんだ。
彼は、もう失うモノはないんだから、グラウンドで闘う選手たちが「目を白黒させる」ほど強烈な「刺激策」を講じるしかない。
それが、具体的に「どんなモノ」であるべきか・・についちゃ、部外者のわたしは言及できない。
でも、これだけは言えるかも・・
選手たちが「目を白黒させる」ほどの、吉田孝行さん個人による「チャレンジ」。
でも逆に・・
もし少しでも、ほんの少しでも、自己保身「的」なマインドが透けて見えたら、瞬間的にチームは崩壊してしまうでしょ。
まあ、私が言わなくても、分かっているだろうとは思うけれど・・ね。
とにかく、その視点でも、今後のヴィッセルの動向には、興味をそそられる。
では・・
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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