湯浅健二の「J」ワンポイント


2019年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第21節(2019年8月3日、土曜日)

 

日本の盛夏では、美しい質実剛健サッカーも、我慢くらべの戦術サッカーってな様相を呈するんだろうな〜・・(FC東京vsセレッソ、3-0)

 

レビュー
 
とても興味深い、戦術サッカーの応酬だった。

前半・・

ゲームの流れは、完璧にセレッソが牛耳った。

そして前半11分には、東京DF渡辺剛に競り勝ったブルーノ・メンデスが、決定的なシュートをブチかますんだよ。

その瞬間、どちらかといったら長谷川健太FC東京に肩入れしている筆者は、強烈にフリーズさせられちゃったりして・・。面目ない・・

でも・・

そう、そのシュートは、東京GK林彰洋が見事にセーブするんだよ。

でも・・

そう、そのこぼれ球を、今度は、後方からサポートしてきたセレッソの奥埜博亮がダイレクトでブッ叩いたんだ。

FC東京を応援する誰もが、「アッ・・失点だっ!」ってフリーズしたに違いない。

でも・・

そう、そのシュートは、強烈に「堅く忠実な」東京ディフェンスの何人かが滑り込むことで創り出した「最後の半歩ブロック」によって、見事に、はじき飛ばされてしまうんだ。

でも・・

そう、その後も、清武弘嗣の強烈なミドル弾も浴びてしまったりして・・。

ことほど左様に、FC東京は、前半30分あたりに設定された「飲水タイム」までの間、セレッソに、完璧にゲームの流れを支配されちゃっていたんだよ。

とはいっても・・

もちろん何度かは、FC東京もカウンターを仕掛けようとはしたよ。

でも、老練なロティーナに率いられたセレッソ守備は、そんな速攻の芽を、完璧に摘んでしまう。

まあ、それには、FC東京の押し上げが十分ではなかったという背景もあった。

私は、そんな展開を観ながら・・

・・一体、FC東京はどうしちゃったんだ・・彼らの実力からしたら、こんな無様なゲーム展開になるはずないのに・・

・・なんて、安易に考えていたんだ。

だから、長谷川健太さんに聞いた。

・・おっしゃるように、前半の飲水タイムあたりから、徐々にFC東京も、ちゃんとしたサッカーが出来るようになっていったと思う・・

・・そして後半は、普段どおりの、とても優れたダイナミックサッカーへと高揚していった・・

・・そんなサッカー内容の変化について、解説していただきたいのだが・・

そんな私の質問に、長谷川健太さんは、例によって真摯に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれたっけ。

曰く・・

・・実は、ゲーム前のイメージ創りで、選手たちに、こんな指示を出したんですよ・・

・・前半は、注意深くってね・・

・・だから、前半の選手たちは、少し戸惑っていたのかもしれない・・

・・でも飲水タイムとハーフタイムに、「行っていいよ」って指示を出したんです・・

注釈:”注意深く・・”とか、”行っていい・・”なんていう会見での表現は、とても表面的なものですよ・・その、戦術的な意味合いの内実は、とても深く、チームのなかでしか通用しないニュアンスにあふれているはずです・・

あっ、長谷川健太さんのコメントがつづきます。曰く・・

・・そして、そこから、普段通りのフッ切れた攻撃サッカーを展開できるようなったというわけです・・

・・まあ、反省も込めてですが・・

・・ゲームへ臨む「イメージ創り」での自分の言い方が「うまくなかった」とは思いましたね・・

・・手綱を引き過ぎたとかね・・

そんな長谷川健太さんのコメントを聞きながら、こんなコトがアタマを駆けめぐったっけ。

・・数日前のレッズ対アントラーズ戦(第16節)でも、そうだったけれど・・

・・こんな高温多湿の日本の盛夏じゃ、やっぱり「我慢くらべ」になるのが自然の成り行きだよな・・

・・攻守ハードワークとリスクチャレンジにあふれる、ダイナミックで美しい攻撃サッカーを、長い時間、最後までやり切るのは難しい・・

・・長谷川健太さんも、「終盤での体力勝負を、しっかりとイメージしてプランしなきゃいけない」なんて言い方をしていたっけね・・

・・だからこそ、「我慢くらべの戦術サッカー」という要素も、しっかりとゲーム戦術に採り入れていかなきゃいけないということか・・

・・その視点で、前半は抑え気味に、そしてタイミングを見計らって、より積極的に「前へ行く」っていうイメージのゲーム戦術は、とても現実的だったかもしれない・・

・・それに・・

・・そう、FC東京の強みは、なんといっても爆発的なカウンターだからね・・

・・前半、立ち上がりの展開を「少し抑え気味」にすることで、セレッソが押し上げてくる・・

・・そして、そんな展開のなかで、ディエゴ・オリヴェイラと永井謙佑というスピードスターを走らせることで必殺カウンターをブチかましていく・・

・・長谷川健太さんは、そんなイメージ「も」アタマのなかにあったのかもしれないね・・

・・でも・・

・・そう、前半11分に直面した絶体絶命ピンチや、その後の清武弘嗣のキャノン・ミドル弾・・

・・それが入っていたら・・

・・まあ、それでも・・

・・そんな「失点」が、FC東京の選手たちを刺激し、完璧に「解放」することで、彼ら本来の攻撃サッカーが急激に息を吹き返していたかもしれないしネ・・

あっと・・

このコラムで言いたかったのは・・

日本の盛夏では、さまざまな意味合いを内包する、「我慢くらべの戦術サッカー」という視点でもゲームを楽しめるかもしれない・・っちゅうコトでした。

ということで、明日(8月4日)のレッズ対グランパス戦が、とても楽しみになってきた。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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