湯浅健二の「J」ワンポイント


2019年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第26節(2019年9月14日、土曜日)

 

いまのフロンターレでは、深いところで「何か」が進行している・・と感じる・・(フロンターレvsジュビロ、2-0)

 

レビュー
 
さて〜〜・・

やっと、ホントにやっと、リーグでの(7ゲームぶりの!?)勝利を収めたフロンターレ。

相手は、最下位のジュビロだったけれど、皆さんもご存じのように、最下位だからといって、サッカーの内容(チームの実力!?)に大きな差があるわけじゃない。

それに、「降格リーグ」まっただ中で、まさにサバイバル状況にある彼らだから、簡単なゲームになるワケないという心理・精神的ファクターもある。

だから私は、このゲームを観ることにしたんだ。

そう、必死の勝負サッカーをぶちかましてくる相手に対して、メンバー移行期にある(!?)フロンターレが、どのようなサッカーを展開するのか・・という興味(学習機会)。

ということで、ゲーム内容をまとめたら、こんな感じですかネ・・

・・フロンターレが、攻守にわたって、とても立派なサッカーで、順当な勝利を収めた!?

たしかに、(特に後半は!)何度かピンチに陥ったけれど、それでも、カチッと機能するクリエイティブな組織連動デイフェンスで立派に防ぎきり、クリアシートを達成した。

また攻撃でも、時間の経過とともに、彼ら本来の鋭い仕掛けプロセスが観られるようになっていったよね。

でも・・

そう、それでも私は、いまのフロンターレが、様々なコノテーション(言外に含蓄される意味)を内包する過渡期(世代交代期!?)にあるんだろうな〜・・なんて、何となく感じていたわけさ。

だから、鬼木達さんに聞いた。

・・鬼木さんがフロンターレの監督に就任してから、何度も、人とボールが素晴らしいリズムで動きつづける最高のサッカーを魅せてくれた・・

・・それは、まさに美しい質実剛健サッカー、そのものだった・・

・・そしてフロンターレは、美しく、リーグ2連覇を達成した・・

・・でも・・

・・そんな最高潮サッカーと比べたら、いまのフロンターレは一味足りないって感じるんですよ・・

・・要は、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションの内実に、すこし違和感があるっていうことなのかもしれない・・

・・以前は、大島僚太、牛若丸(中村憲剛)、家長昭博といった才能連中を中心に、まさに流れるようなリズムで人とボールを動かし、美しくスペースを攻略していった・・

・・だからこそ、長谷川竜也とか齋藤学といったドリブラーも、特長を存分に発揮できた・・

・・でも今は・・

・・そんな最高潮サッカーからすれば、まだまだ不満の方が先に立つのですよ・・

・・世代交代という視点も含め、そのあたりについてコメントをいただけませんか?・・

そんな私の問いかけに対して、鬼木達さんは、例によって真摯に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれたよね。

曰く・・

・・湯浅さんがイメージするフロンターレの最高潮サッカーが、どんなモノか、正確には共有できていないかもしれませんが・・

・・まあ、たしかに、人が変わっているわけだから、サッカーの微妙なプレー内容にも変化が出てくるのは当然だと思います・・

・・もちろん、我々の基本的な戦術コンセプトは、まったく変わりはありません・・

・・でも、それを機能させるプロセスのニュアンスは、プレーしている選手の個性や特長によって、カタチが変わってくるかもしれませんよね・・

・・もう一つ・・

・・最高と思われるイメージに、いまのメンバーによるサッカーを、無理矢理、落とし込もうとするのにも疑問を感じます・・

・・そうではなく、出ている選手たちの特長や特性を最高のカタチで発揮させることこそが志向すべきテーマだと思うんですよ・・

フムフム・・

たしかに、この日先発した脇坂泰斗や下田北斗といった「新顔」は、時間の経過とともに、プレーの質が(フロンターレ的に!?)アップしていったよね。

そんな彼らを観ながら、「フロンターレのサッカー」を体現できるだけの実力は備えている・・と感じていた筆者なのですよ。

とはいっても・・

そう、フロンターレの基本コンセプトである、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションの量と質という視点では、やはり、不満は残る。

要は、わたしの記憶タンク内のスクリーンに投影されている、フロンターレの最高潮サッカーからすれば、少し、レベルが落ちる・・っちゅう感じかな。

だから、ゲームを観ながら、「どうして、そんな印象が残るのだろう・・」って考えていたわけさ。

そして・・

アタマに浮かんだのが、ダイレクトパスの量と質だけじゃなく、タテパスの量と質、そして3人目、4人目の「受け手」の動きの量と質・・

この試合では、時間の経過とともに、たしかに、人とボールの動きが活性化していった。

そして、たまには、最高潮サッカー」を彷彿とさせる、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションも観られるようになった。

でも・・

そう、その内実は、前述した三つの要素が、素晴らしく「同期シンクロ」していた最高潮サッカーからすれば、「まだまだ」だと感じたわけさ。

あっと・・

チームの内実(内情)を知らない外様のわたしだから、「書きすぎ」かもしれないね。

とにかく、これからの鬼木達さんの「プロコーチのウデ」に期待しましょう。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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