湯浅健二の「J」ワンポイント


2019年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第3節(2019年3月9日、土曜日)

 

このギリギリの勝利を、ホンモノの「質実剛健サッカー」へ向かうエネルギーとして活用すべき・・(松本山雅vsレッズ、0-1)

 

レビュー
 
いや、ホント、すごかった。

松本山雅がブチかましつづけた、前からプレス守備。

ものすごく忠実で、ダイナミック&効果的な協力プレッシングだった。

そう、究極の闘う意志が炸裂しつづけるサッカー。反町康治監督に、心からの拍手をおくりたい。

対するレッズ。

そんな相手の「勢い」に呑み込まれ、ボールを前へ運んだり、カウンターの流れを創りだすのに四苦八苦するんだ。

それじゃ、ゴール機会を(スペース攻略の流れさえも!?)創りだせるはずがなかった。

まあ、とはいっても・・

ゲーム全体を通したゴール機会の「量と質」という視点では、両者、痛み分けっちゅう評価がフェアなんだろうね。

あっと・・

ゲームには、こんな興味深い視点もあったっけ・・

それは、興梠慎三の、PK決勝ゴールが決まった後のゲーム展開。

言うまでもなく、同点ゴールを奪おうと、松本山雅は、仕掛けの人数を増やしていく。

もちろん、ボールがないところでの攻撃サポートの「量」。

でも、だからこそ・・

そう、そんな積極的な姿勢でも、うまくスペースを突いていけない松本山雅の、攻めでの「質の限界」も見えてきたっちゅうわけだ。

ところで・・

興梠慎三による決勝ゴールが入るまでの松本山雅のサッカー(戦術イメージ)は、こんな感じ・・

・・ボールを奪い返したレッズが、攻め上がろうとする・・

・・そんな状況で、松本山雅の強者どもは、相手ボールホルダー(次のパスレシーバー)に、ダイナミックな協力プレスをブチかまし、すぐにボールを奪い返してしまう・・

・・まあ・・俗に言う、ゲーゲンプレス的な展開・・

・・そりゃ、攻め上がろうとするレッズだから、その「ゲーゲンプレスの流れ」が、うまくハマれば、松本山雅が、ものすごく効果的なショートカウンターをブチかませるのも道理・・

・・ってな感じの、ゲーム戦術イメージの「せめぎ合い」がつづいていたんだよ。

でも・・

そうなんだ。

今日のレッズは、松本山雅の「期待」どおりには、人数をかけて攻め上がっていかなかった。

いや・・攻め上がっていけなかった・・!?

ボールを奪い返して「さあ、次の攻撃だ〜っ!!」っちゅう状況。

それでもレッズでは、スペースランニングを仕掛けず、どちらかといったら、「注意深い様子見」ってなプレー姿勢の方が目立っていたんだ。

まあ、あれほど「前からプレス守備」でボールを失うシーンがつづいたら、そりゃ、ボール奪取後に、前へ攻め上がっていく意志も、萎えるよな。

もちろん・・

レッズは、松本山雅の「勢い」に輪をかけたダイナミズムで、前からプレス守備をブチかましていかなけりゃ、いけなかったことは言うまでもない。

ドイツサッカー史に残るスーパープロコーチ、故ヘネス・ヴァイスヴァイラーが常日頃、こんな「勝負のエッセンス」を語っていた。

・・いいか、オマエたち・・

・・勝負のアヤは、いかに効果的に、相手に勘違いさせるかに掛かっているんだぞ・・

要は、「いまは自分たちのサッカーの流れが悪い・・」とか、「今日の相手は、とても強い・・」といった、ある意味の「錯覚」を抱かせる・・っちゅうことなんだ。

そのために、相手がビビるほどの勢いで、前からプレス守備をブチかましていくんんだよ。

サッカーは、そのすべてが守備の内実(ボール奪取プロセスの内実!?)で決まる・・ということさ。

そんな相手の(心理的な!?)術中にはまってしまったレッズ。

私は、そんなレッズを観ながら・・

フロンターレが魅せつづけている、ダイレクトパスを織り交ぜた、ものすごく高質で美しい組織コンビネーションに思いを馳せていた。

彼らは、相手が「前からプレス守備」をブチかましてきたら、それをチャンスと捉えて(感じて!)、スッ、スッ、ってな感じで、ダイレクトパスを回しちゃう。

そして、相手が、バランスを崩したプレス守備をブチかましてくるからこそ「空いた」スペースを、美しく攻略しちゃうんだよ。

そう、相手の「勢い」を逆手に取ってウラを突く、美しいコンビネーション。

柔道でいう、空気投げ(隅落=すみおとし)だよね。

ACLでも、そんな、美しいサッカーで抜群の存在感を示しているフロンターレなんだ。

あっと・・

もちろんレッズだって、そんな、ダイレクトパスを織り交ぜた美しい組織コンビネーション「も」、しっかりと意識しているさ。

でも、この試合では、松本山雅の強者どもがブチかましつづけた前からプレス守備に、そんなレッズの意図が、完璧に寸断されちゃったってわけだ。

それは、前述したとおり、ボールがないところでのサポートの動きが十分ではなかったから。

また、次のパスレシーバーが、何となく自信なさげにプレーしていたこともある。

ダイレクトパスにトライすることでボールを失ってしまう恐怖に駆(か)られた!?

まあ、とにかくレッズが、ものすごく厳しいゲームを勝ち切ったの確かな事実だよね。

そして・・

その勝利が、厳しかったからこそ、それを、ホンモノの「質実剛健サッカー」へ向かうためのエネルギーとして蓄積して欲しいと思うわけさ。

質実剛健サッカー。

「質」は美しさ、「実」は勝負強さ。

今シーズンは、「美しく勝つサッカー」から、「質実剛健サッカー」という表現へ移行しようと思っている筆者なのであ〜る。

へへっ・・

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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