湯浅健二の「J」ワンポイント


2019年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第5節(2019年3月30日、土曜日)

 

素晴らしいFC東京のディフェンス・・そして最後に輝きを放った、レッズの勝者メンタリティー(!?)・・(レッズvsFC東京、1-1)

 

レビュー
 
すごかったネ〜・・堅かったネ〜・・FC東京のディフェンス。

対するレッズは・・

たしかに、記者会見でオズワルドが胸を張っていたように、内容としては、とても優れたサッカーを魅せたと思う。

もちろん、武藤雄樹と青木拓矢の復活も大きかった。

でも・・

そんなレッズの、ダイレクトパスを織り交ぜた効果的な組織コンビネーションと危険な個人勝負プレーが、FC東京のディフェンスによって、ことごとく「押さえられて」しまうんだよ。

たしかに、コーナーキックやフリーキックといったセットプレーでは、惜しいシーンはあった。

でも、流れのなかからスペースを突いていくという仕掛けプロセスでは、ほとんどチャンスらしいチャンスを創りだせなかったんだ。

「あの」、森脇良太が叩き込んだ、起死回生の同点ゴール以外はネ・・

ということで、まず、「FC東京の堅いディフェンス」というテーマから入りましょうか。

チェイス&チェック、その周りで効果的に連動しつづける守備アクション、そして、局面デュエルでブチかます極限の闘う意志。

とにかく、ボールホルダー(次のパスレシーバー)への、寄せのスピードと、間合いの詰め方が、尋常じゃなく効果的だったんだよ。

もちろん彼らは、レッズの、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションの「リズム」も、しっかりと把握している。

だから、「次、その次・・」ってな具合で、効果的にプレスの輪を縮められるんだ。

とはいっても、そこはレッズ。

ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションを基盤に、そんなプレスの輪を、うまくかいくぐって次の縦スペースを突いていくシーンも多かった。

でもFC東京ディフェンスは、抜かれても、置いてけぼりにされても、決して諦めることなく、全力スプリントで追いかけるんだよ。

そして、追い付き、そのままデュエルに持ち込んだり、粘りのマーキングをつづけたり、自分たちに有利なカタチに追い込んで協力プレスをブチかましたりする。

わたしは、そんなFC東京のディフェンスを観ながら、感嘆の声を上げていたよ。

・・スゲ〜〜な、コイツ等・・

そして思った。

・・そんな、ハードワーク(強烈な闘う意志!)の積み重ねがあるからこそ機能させられる「創造性ディフェンス」は、強制や「脅し」など到達できるモノじゃない・・

・・それが、全力スプリントや、身体を張ったギリギリの競り合いの積み重ねであるからこそ、選手たち自身が、「やり遂げたい!」って強く望んでいることの証明でもあるんだ・・

だからこそ、感心し、心から拍手していたっちゅうわけさ。

もちろん彼らは、「リトリートして守備ブロックを固める・・」なんていう、前時代的な、受け身で消極的な守備をやっていたわけじゃな。

彼らは、あくまでも、「積極的にボールを奪い返す」という目標イメージをもっていたんだ。

だからこそ、崩されかけても、常に「最後の半歩」が出つづけたっちゅうわけさ。

そして、そんな強力ディフェンスを基盤に・・

永井謙佑とディエゴ・オリベイラというスピードスターが中心になった、抜群に危険なカウンターを繰り出していくっちゅうわけだ。

また、久保建英が登場してからの「蜂の一刺し」は、それまでのカウンタータイプとは、チト、趣を異にしていたネ。

そう、久保建英という希代の天才が、スピードとパワーに、タメや、レッズ守備を引きつける突破ドリブルといった創造性を加味したんだよ。

東慶悟のクロスを、ディエゴ・オリベイラがヘッドで決めた先制ゴールシーン・・

そこでは、彼の天賦の才が、眩(まばゆ)いほどの光を放ったっけね。

_______

ということで、ここからは、レッズ・・

彼らは、そんな、とても強いFC東京ディフェンスに対し、臆することなく、またフラストレーションを不必要に(!?)溜めることなく、効果的なチャレンジをつづけた。

特に前半は、完璧にゲームを支配しつづけたレッズだったんだ。

でも実際は、前述したように、流れのなかでは、スペースを攻略できない(シュートチャンスを創れない)ってなゲーム展開ではあった。

だから私は・・

もっと(もちろん、たまに!!)、「エイヤッ!!」のアーリークロスやキャノン・ミドルをブチかましていれば、FC東京の守備ブロック組織を、少しは乱すことが出来たとは思っていた。

決定的なクロスや、ワンツーで抜け出したチャンスでも、最後の瞬間は、FC東京プレイヤーの身体やアタマ、そして足が「先」にボールに触るってな展開だったから・・さ。

とはいっても、オズワルドが言っていたように、活発な人とボールの動きを基盤にした組織サッカーが創造性に富んでいたことは確かな事実だったよね。

でも(繰り返しになるけれど)・・

そこでレッズ選手たちがイメージする「決定的スペース」が、ことごとく、FC東京プレイヤーによって潰されつづけていんだよ。

どうだろうね〜・・

オズワルドが、こんな興味深い表現をしていたっけね。

・・ゴールを入れるには、アグレッシブさが足りない・・

この「アグレッシブさ」の背景ファクターは、言うまでもなく、まず「人数」だよね。

リスクを冒し、攻めに絡む「人の数」を増やすんだ。

もちろん、それだけじゃなく、その「人」が、どんどん(ボールがないところで)スペースランニングを繰り出していく。

そしてボールホルダーも、よりリスキーな縦パスを、ガンガン送り込んだり、個のドリブル勝負をブチかましたりする。

そんな「アグレッシブさ」を、効果的に増幅させたのが、交替出場した「山中亮輔」だったね。

彼のドリブル突破トライが、FC東京ディフェンス組織のバランスに亀裂を入れたんだ。

あっと・・

その左サイドには、「イメチェン」した、マルティノスもいたよね。

ということで、山中亮輔とマルティノスが中心になった左サイドは、一点を追いかけるゲーム終盤での「実効ある攻め手」として、とても目立っていたというわけさ。

そう、同点ゴールを生み出した仕掛けプロセスも含めて・・ネ。

最後に・・

これは、わたしが、オズワルドに質問したテーマだったのですが・・

それは、「勝者メンタリティー・・」。

リーグ中断前の5連戦を、これ以上ないほどの結果で乗り切ったレッズ。

そこでの、冷や汗が出る厳しい体感(経験)は、確実に、選手たちの「確信レベル」を高めたはず。

そう、勝者メンタリティーの絶対的な基盤は、何といっても、自らを、そしてチームの成功を「信じるチカラ」なんだよ。

その「確信リソース」として、前述した5連戦での成果だけじゃなく、オズワルド・オリヴェイラという名伯楽の存在(≒オズワルドマジックという心理マネージメント!?)もあるわけさ。

それにしてもレッズは、ホントに、よく引き分けに持ち込んだ。

そうそう・・

実はわたしには、後半ロスタイムに入っても、「まだまだ・・ここから何かが起きるに違いない・・」って、ワケの分からない「確信的な感覚」があったんだよ。

選手たちのプレー危険度(闘う意志のオーラ!?)が、大きく増幅していただけじゃなく、オズワルドという「ストロングハンド」からもオーラが放散されていたからね。

そして・・

もちろんレッズは、これから、どんどん良くなっていくでしょ。

そう、「質実剛健サッカー」を志向しながら・・ネ。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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