湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2019年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第6節(2019年4月6日、土曜日)
- 久々の大逆転ドラマ・・堪能したぜ・・(FC東京vsエスパルス、2-1)
- レビュー
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- ・・これぞまさしく「どんでん返し」っていう、典型的な逆転劇だったよな〜・・
記者会見で、私の後ろに座っていた後藤健生さんが、そんなことを言った。
まさに、アグリー・・・・「勝負プロセスの顛末」としては・・ネ。
でも、サ・・
わたしは、そんな勝負プロセスを、いくつかの戦術テーマをアタマのなかでプロセスしながら(記憶タンクのコンテンツと照合しながら!?)観ていたんだ。
ということで、そのプロセス内容だけれど・・
たしかに、今シーズンまだ勝ちがないエスパルスは、気合いの入り方が違った。
その気合いは、もちろん守備(ボール奪取プロセス)でのファイト姿勢に如実に現れてくる。
忠実マークにしても、前からプレス守備にしても、協力プレスの集散にしても、局面デュエルの内容にしても・・
それは、まさに賞賛に値するモノだったんだ。
そんなだから、特に後半、一点をリードしていたにもかかわらず(!?)、エスパルスが「勝負展開のイニシアチブ」を握るのも当然の成りゆきだった。
そんな勝負プロセスを観ながら・・
前述の戦術テーマがアタマをもたげたっちゅうわけさ。
実は・・
私には、(ゲーム全般を通して!)エスパルスの仕掛けプロセスに、「粗い」っていう印象が、募(つの)っていたんだよ。
たしかに、彼らの仕掛けプロセスは、ツボにはまれば危険きわまりない。
でもそれは、どちらかといったら、「チカラ業」ってな印象の方が強かったんだ。
ゴリ押しのドリブル突破トライ・・チカラ任せのキャノンミドル弾・・はたまたアーリークロス・・等など。
そんなエスパルスに対して・・
長谷川健太監督が率いるFC東京の仕掛けは、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションを基盤に、あくまでも「緻密」を標榜する、洗練された仕掛けプロセスなんだよ。
そのこともあって(!?)、スペース攻略という、シュートへ至るプロセスでの「当面の目標」は、より確率高く達成している・・って感じられていたんだ。
そうね〜・・
多分そこには、人とボールの「動きの量と質」、また「組織と個の高質なバランス」といった視点(評価基準)もあるんだろうね。
もちろんFC東京には、ディエゴ・オリベイラ、永井謙佑、久保建英といった「飛び道具的なドリブラー」がいる。
でも、そんな彼らの「個の仕掛け」がスペース攻略という成果につながっているのも、前述のダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションが機能しているからに他ならない。
換言したら・・
FC東京の方が、より高い確率で、ボールがないところでの勝負プレー(決定的フリーランニング)を、よりうまく活かせていた・・っちゅうことかもしれないね。
誤解なきように・・
そう、エスパルスだって、しっかりと人とボールを動かしていたんだよ。
でも、チョン・テセを筆頭に、あれほど「個の能力」に長けた強者を擁しているわけだから、彼らが、それをベースに勝負をブチかまそうというイメージは、とてもよく分かる。
それに・・
この試合でのエスパルス守備(ボール奪取プロセス)は、素晴らしいの一言だったわけだから。
そりゃ、次の攻撃に、強烈な「個の勝負」だけじゃなく、積極的な周りのサポートという「チームプレー的な勢い」が乗っていくのも道理でしょ。
まあ、全体的な「傾向」のハナシだよ、あくまでも・・
ということで・・
最後に、以前、長谷川健太監督と交わした会見でのディスカッションも頭に浮かんでいたっちゅう話題で締めましょうかネ。
それは・・
・・華麗な緻密さ(洗練!?)と大胆さ(アバウトなチカラ業!?)が同居するサッカーが理想かもしれない・・っちゅうディスカッション。
そうなんだよ・・
攻守ハードワークとリスクチャレンジへの「強烈な意志」が詰め込まれた、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーション。
その組織プレーのなかに、タイミングよく、タメや勝負ドリブルといった「個の局面勝負」をぶちかましていく。
そんな、「組織と個」が高質にバランスしたサッカーこそが・・っちゅう主張のことさ。
たしかに、華麗な緻密さ(洗練!?)を秘めた美しいサッカーは、魅力の本質さ。
でも、それ「ばかり」じゃ、最後は「攻め切れず」に、煮詰まってしまうことも多い。
だからこそ、たまに勇気をもってブチかましていく、「大胆でアバウトなチカラ業」が、これ以上ないほどの貴重な価値をもつことがあるんだ。
そう、エイヤッ!!のドリブル勝負、エイヤッ!!のアーリークロスやキャノンミドル弾・・等など。
それが、膠着した状況を打破していくために、いかに効果的かは、サッカー人の誰もが知っているところでしょ。
でも・・
そう、その両方を、高い次元で「バランス」させるのは、とても難しい作業。
サッカーでは、とかく、一つの方向性へ進んだら、「ソチラ」へ偏り過ぎてしまうものなんだ。
そして、修正という意味で「逆方向」へいったら、今度は「アチラ」へ偏り過ぎていく。
長谷川健太監督も、そんな「行き過ぎ現象のメカニズム」を熟知している。
要は、サッカーにおける絶対的なキーワードは、何といっても「バランス」をおいて他いないっちゅうことさ。
ということで、そのときのディスカッションは、ちょっと盛り上がったですかね。
ところで、この試合でのバランスは・・!?
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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