湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2020年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第12節(2020年8月22日、土曜日)
- 「J2」でのサバイバルを生き抜いた横浜FCの体感値が活きている!?・・質実(攻守)剛健サッカーの「微妙なバランス感覚」に課題をかかえているエスパルス!?・・(エスパルスvs横浜FC、2-3)
- レビュー
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- いや、ホントに、「中身」のあるエキサイティングマッチだった。
中身・・!?
もちろん、そのバックボーンは、両チームがブチかましつづけた、攻守ハードワークとリスクチャレンジあふれる積極(攻撃的)サッカーだぜ。
とはいっても・・
試合前は、マリノスのアンジェ・ポステコグルーの相棒だったピーター・クラモフスキー率いるエスパルスに一日の長があるかもしれない・・なんて思っていたんだ。
そして・・
案の定、前半立ち上がりは、まさに「そんな展開」になった。
そう、エスパルスが、イニシアチブをにぎり、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションから、スペースを攻略していったんだ。
でも・・
時間の経過とともに、その「イニシアチブの所在」が、微妙に移行していくんだよ。
そう、横浜FCが、ゲームを押し返しはじめたんだ。
それって・・!?
うん、だから、その「変容のバックボーン」に、しっかりと目を凝らしたんだ。
そしたら、このコアファクターが、徐々に「見えて」きた。
そうなんだよ、横浜FCディフェンスの方が、ステディー(安定)なんだ。
もしかしたら、それは・・
エスパルスの方が、より「攻撃マインド」に充ちている・・っちゅうコトかも・・。
そんなエスパルスだから、チーム全体が積極的に押し上げ、その過程で、前後のポジションチェンジも、より頻繁にブチかまされるっちゅうわけだ。
そう、積極的に(自ら!)バランスを崩していく(積極リスクチャレンジ)攻撃サッカー。
それに対して横浜FCは・・
あっと・・
決してわたしは、彼らのサッカーが、守りを固めてボールを奪い返し、(人数限定の!)カウンターを仕掛けていく・・なんていう、選手たちの喜びを与えられないことで、未来のない(!?)タイプだって言っているわけじゃない。
そうではなく・・
横浜FCの攻めは、人数を掛け、人とボールを積極的に動かしながら、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションをブチかましていく、魅力あふれる危険なヤツだよ。
そしてスペースを突けたら(ある程度フリーなボールホルダーを創れたら!)、そこからドリブル&フィニッシュしたり、ラストパスを通しちゃったりする。
そんな横浜FCだから・・
彼らの方が、「J2」での昇格プロセスを生き延びたように、ダイナミックな攻撃サッカーを志向しながらも、実際には、「より」プラグマティックな(現実的な)感性でプレーをしているっちゅうことなのかもしれないね。
そんな彼らだから、人数を掛けて前へ仕掛けていきながらも・・
・・ボールを失った(失うかもしれないと感じた)次の瞬間には、スピーディーな、攻守の切り替え、相手カウンターの前への勢いの抑制、守備ブロック組織の再構築などなどに、抜群の「感性」を魅せつけるんだよ。
優れたプロコーチ、下平隆宏が率いる横浜FCの、「外連味のない」オーソドックスな積極サッカー・・!?
まあ、そんな表現だって、出来るかもね・・へへっ・・
そんな、下平隆宏が率いる横浜FCについては、他のゲームをレポートするなかで、(浮嶋敏率いる積極サッカーのベルマーレについても!)もう何度か、触れたよね。
そう、彼らがチャレンジする今のサッカーベクトルを継続すれば、必ず、彼らの進化&深化が、より明確に見えてくる・・ってね。
対する、ピーター・クラモフスキー率いるエスパルス。
前節の、エスパルスvsマリノス戦でも感じていたけれど、ピーターが志向するのも、積極的に仕掛けていく攻撃サッカー(トータルフットボール!?)だよね。
そう、志向するのは、美しい質実剛健サッカー・・
質は、サッカーの内容。実は、勝負(結果)。
でも、まだ、その「バランス」を、うまく(理想的に)マネージできていないとも感じるね。
もちろん、ピーター・クラモフスキーは、とても優れたプロコーチだから、彼に任せておけば、どんどんと「バランス感覚」にも実が詰まっていくでしょ。
まあ、いまは「産みの苦しみの真っ最中」っちゅうところですかね。
それにしても・・
ゲーム残り15分というタイミングからエスパルスが魅せた、まさに怒濤の仕掛け。
追い掛けゴール(2点目)も含めて、抜群に危険なニオイを振りまいていたよね。
横浜FCのディフェンスは、前節アントラーズ戦で魅せたように、(ボールがないところでのディフェンス内容も含めて!)さまざまな守備エッセンスが、とてもうまく連動している。
そんな、「J2サバイバル」で鍛えられた横浜FCの堅いブロック守備を、「引きはがして」創りだしつづけたエスパルスの仕掛けには、「バラ色の未来」が見えた気がしたモノさ。
とにかく、この両チームは、リーグ中盤から終盤にかけて、さまざまな意味合いで「旋風を巻き起こす」ポテンシャルを秘めている。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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