湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2020年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第1節(2020年2月23日、日曜日)
- ゲーム立ち上がりの集中力の欠如という課題・・でも全体的には美しい質実剛健サッカーを魅せたマリノス・・(マリノスvsガンバ、1-2)
- レビュー
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- ・・XEROXサッカーでも、この試合でも、立ち上がりの「ゲームへの入り方」が悪かった・・
アンジェは、「スタートが緩かった・・」なんていう表現もしていたね。
たしかに、前半2分には、宇佐美貴史に抜け出され(GKと1対1になってしまった!!)決定的シュートを放たれたし(GKがギリギリで弾き出した!)、そ
の1分後には、CK崩れからの右クロスを、三浦弦太に、フリーでヘディングされるといった決定的ピンチと対峙させられた。
そして・・
そう、前半6分には、自チーム内でのイージーな横パスから、最後はGKがトラップをミスし、そのまま蹴り込まれて先制失点を喰らってしまった。
「まあ、交通事故のような失点かな・・」では済まされない気の緩みではあった。
ところで、ガンバのゲーム戦術的な「準備」という視点。
会見でのガンバ宮本恒靖監督は「匂わすだけ」に留めたけれど、ガンバは、明確に、マリノス最終ラインの(特にサイドバックの!)ウラのスペースを意識していたと思うんだよ。
要は、「ゲーム戦術のイメージトレーニング」が功を奏したということだね。
前半2分の、宇佐美貴史の抜け出しにしても・・
少し上がり気味のポジションから戻ってきた右サイドバックの松原健が、後方のセンターバック伊藤槙人に、宇佐美貴史の「対処を任せた」ことで、二人とも置き去りにされてしまった。
また、前半34分の2失点目シーンでも、ガンバが、GKまでボールを戻したことで押し上げたマリノス最終ラインの背後スペースを、うまく使われてしまった。
VARによって(オフサイドか否かが!)再確認されたシーン。
ガンバGKからの、ダイレクトでのロングタテパスを受け、そのまま持ち込んでラストクロスを送り込んだ倉田秋は、オフサイドじゃなかった。
でも、他の戻り遅れた5人は、完璧にオフサイドの位置にいたから、彼らが、そのタテパスに反応していたらオフサイドを取られたでしょ。
その意味で、倉田秋の(戻り遅れたチームメイトたちの!?)インテリジェンスと決断力に、拍手するしかない。
あっと・・
倉田秋のラストクロスを、ダイレクトで蹴り込んだ矢島慎也のシュートシーンでも・・
様々な視点で、そこに絡んでいたガンバ選手たちは、マリノスGKやディフェンダーに「影響」を与えていなかったから、オフサイドじゃなかった。
もちろん、ここで書いている内容は、帰宅してすぐにビデオを見返したことで確認できたわけだけれど・・サ。
ところで、ハナシは変わるけれど・・
昨日の、フロンターレ対サガン鳥栖で起きた「VAR判定シーン」。
そこでは、グラウンド上の大型スクリーンに、サガン鳥栖ディフェンダーの「ハンド」が明確に映し出されたんだ。
もちろん、とてもクリアに、サガン鳥栖ディフェンダーは、手でボールに触った。
それも、ボールがラインを割らないように「手で押さえた・・」ってな感じの「見え方」だった。
だからレフェリーは、VARと協議しながら、自分自身でも、グラウンドに設えてあるディスプレイで確認し、PKを宣告した。
でも・・ね。
もしレフェリーが、その「手の動き」が、選手自身の体重を支える自然なアクションだったと(つまり偶然ボールに触ったと!)判断したら、反則にはならなかったかもしれない。
そう、「ファイナル・ディシジョン」は、あくまでも、レフェリーが、1人で行うんだ。
でも・・
そう・・
あんなふうに、大型ディスプレイに、鳥栖プレイヤーの手がボールに触っているシーンが映し出されたにも関わらず、レフェリーが、ノーファールってな判定を下したら・・
そりゃ、暴動が起きてもおかしくない。
だから私は、常日頃、グラウンド上では、決して「人民裁判」が起きてしまうような「レフェリング・マネージメント」は、厳に慎むべき・・と主張しているんだ。
そう、大型ディスプレイに映し出す「シーンの内容」には、特に、気を遣わなきゃいけないんだ。
このテーマについては・・
タイで行われた「AFC_U23選手権」についてアップした「このコラム」もご参照下さい(連載中の商工ジャーナルでのコラムも添付してあります)。
あっと・・
このゲームでは、ガンバ2点目について、(直前の!)オフサイドの判定がVARに委ねられたわけだけれど・・
それが、オフサイド判定だったことで、大型ディスプレイには映し出されず、レフェリーとVARとの話し合いで決着した(矢島慎也のゴールは認められた!)。
スミマセン、ハナシが、アッチコッチに飛んでしまって・・
でも、もう一言だけ・・
それは・・
私が、その、フロンターレ対サガン鳥栖での「VAR判定」に際して、その「ハンドシーン」を、繰り返し、大型ディスプレイに映し出したことに、少し「懸念」を抱いていたという事実。
それだけは、書き記しておきたかった。
とにかく、サッカーでは、ホントに微妙な判定が多いんだ。
かく言うわたしも・・
絶対にレフェリーのミスジャッジだと信じて疑わなかったシーンを、審判委員会のブリーフィングでリプレイされ(それも、スローモーションで!)、それが自分の思い込みだったと認めざるを得なかったという苦い経験をしている。
そのときは、恥じ入ったモノだ。
あっと・・ハナシが、ブッ飛びすぎた・・
ということで・・
アンジェが言う、ゲーム立ち上がりでの集中力の欠如という視点が、とても大事なテーマだと感じていた筆者なのですよ。
「美しい質実剛健サッカー」という進化ベクトルを志向する、日本サッカーにとって大事な存在になるつつある(!?)アンジェ・マリノスだからこそ、それが「ホンモノの弱点」にまで膨れ上がらないように、正しい心理マネージメントを期待して止まない筆者なのです。
とにかく・・
ガンバから2ゴールを奪われてからのマリノスは、(実際は、ほとんどの時間帯で!)ゲームを席巻していたよね。
もちろん彼らは、ボールを支配するだけじゃなく、何度も、ホンモノの「ゴール機会」を創りだした。
そんなマリノスが、結局は、追い掛けゴール「1点」に止まってしまったことで開幕戦を落としたことを、とても残念に感じていた筆者だったのです。
フ〜〜ッ・・
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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