湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2020年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第25節(2020年10月31日、土曜日)
- トリニータ片野坂知宏は、とても良いチームを創っている・・だからこそ、レッズの復調ベクトルが、本物になりつつあるってコトも実感できた・・(トリニータvsレッズ、0-0)
- レビュー
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- また、ダゾン・カメラワークにフラストレーションが溜まった。
ほんの少しだけ、ズーミングを「引け」ば、観戦が、何倍も楽しいモノになるのに・・
このカメラマン氏は、サッカーの本質的な「メカニズム」を理解していないから、半径20〜30メートルまでがイマジネーション範囲っちゅうことなんだろうね。
勝負は、「ボールのないところで決まる・・」んだよ。
もちろん仕掛けプロセスに入れば、自然と、全体が把握できるカメラアングルになるさ。
でも、組み立てプロセスでは、ほとんど、前線の「攻守イメージングのせめぎ合い」を体感することはなかったんだ。
そして、ロングパスが出たら、カメラを「ブン回す」ことでボールを追いかける。
そんなだから、観ている方は、その勝負シーンへ至る「プロセス」ではなく、「結果」しか確認できないっちゅうわけさ。
多くのダゾン中継カメラワークは、とても上手くいっているのに・・。
まあ、仕方ない。
ということでゲーム・・
そこで、まず強調しておかなければならないのは・・
トリニータのストロングハンド、片野坂知宏が、とても優れた仕事をしている(良いチームを創っている!)っちゅう事実だね。
皆さんも観られたように、(特に前半の!)トリニータは、まさにダイナミズムのカタマリってな感じの、「勢い」に満ちあふれた魅力的サッカーを魅せつづけた。
もちろん、活発なボール奪取プロセス(前からプレス守備)を絶対ベースにする、積極サッカー。
そう、攻守ハードワークとリスクチャレンジを積極的に探しまくるっちゅうダイナミックサッカー。
そんな彼らのプレーには、強烈な意志(主体性)が満ちあふれていたんだよ。
決して、カタチから入る(ソレに囚われる!?)のではなく、それぞれの状況に応じた攻守プレーを、選手が「主体的に探しまくる」んだ。
攻撃でも、守備でも・・
選手たち自身が、「自分がやりたいプレー」をがアタマに描き、それを実現するために、積極的にアクションをつづけるんだよ。
たしかに、ボールを奪い返すという「目的」を達成するためのディフェンスは、基本的には「受け身」ではある。
でも、この片野坂トリニータは、限りなく、自分たちが主体になって、ボールを持つ相手を「追い込んでいく・・」っちゅう雰囲気に満ちあふれているんだ。
そんなだから、ボールを奪い返した次の攻撃に、特に、ボールがないところでのサポートの動きに「勢い」が乗っていくのも道理。
そして、正確なトラップ&コントロールをベースに、たまには、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションまでも魅せる。
そんなだから、何度も、決定的なチャンスを創りだしてしまうのも道理。
それも・・
ここ2〜3週間で、完璧なイメチェンを果たしつつある、強いレッズを相手にしてね。
このトリニータの強さは、本物だ。
さて、対するレッズだけれど・・
前半の彼らは、完璧に、寝ていた。
・・というか、立ち上がりの数分は、前節セレッソ戦の勢いそのままに、攻守ハードワークとリスクチャレンジをブチかます勢いは感じられたんだ。
だからこそ、仕掛けプロセスでの、ボールがないところでの人の動きも、乗っていく。
そんな、積極サッカーを観ながら・・
「また、美しい質実剛健サッカーを魅せてくれるかも・・」なんて期待が高まったモノさ。
でも・・
そう、その数分間のなかで、トリニータ選手の「闘う意志」に火が点いた・・って感じたんだ。
要は・・
トリニータの、ボール奪取プロセスへの勢いが、優れた「意志とイメージの連動性」という側面も含めて、どんどんペースアップしていったって感じられたんだ。
そして、そんな「ダイナミックな主体的連動性」が、レッズの「意志」を減退させていった。
そう・・
前半に観られた、両チームの「意志のせめぎ合いプロセス」は、ものすごく興味深いグラウンド上の現象だったんだよ。
それだけじゃなく・・
前半が押し詰まった時間帯には、それまで、完璧に抑え込まれていたレッズが、一瞬の輝きを放って、二度ほど、決定的チャンスを創りだしたんだよ。
「あのジリ貧の展開」からの、一発ワンチャンス・・
そのとき、その「唐突ワンチャンス」は、今のレッズが、本物の「上り調子フェーズ」に入ったことの証だったと感じたモノさ。
そして、後半・・
そこでは、まさに「動的な均衡マッチ」と呼ぶに相応しいエキサイティングなゲームが展開された。
その背景には、レッズが(闘う意志を!?)盛り返したという側面もあるし、トリニータの「前への勢い」が、徐々に「落ち着いて」いったという背景もある。
そして、そのようにゲームを変容させたベースもまた・・
積極的なボール奪取プロセスの内実っちゅうわけだ。
ところで、タイムアップが迫ってきた残り10分・・
そこでは、レッズが、持ち前の総合力(ここじゃ、その意味合いは割愛します!?)を魅せつけるように、トリニータを押し込んでいったよね。
でも・・
そう、そんな、「レッズ押せ押せ」のゲームの流れのなかで、トリニータが、唐突なカウンターチャンスをブチかますんだ。
後半43分・・
右サイドをブッちぎった田中達也からのクロスを、後方からファーサイドスペースへ走り込んだ野村直輝が、ヘディング一閃。
でも、惜しくも、バー直撃弾になってしまった。
それが決まっていたら、まさに「神様ドラマ」ってなことになっていたんだろうけれどね。
ということで・・
ゲーム全体として印象に残ったポイントをまとめると・・
まず、何といっても、トリニータのストロングハンド、片野坂知宏の優れた仕事によって、チームが良いサッカーを展開できていること。
また、レッズの「復調ベクトル」が、本物になりつつあるのを再認識できたこと。
とはいっても、彼らの場合、まだまだ、「意志」が十分には(カタチから!?)解放されていないっちゅう印象はのこった。
特に、前半の「ジリ貧のゲーム展開」は、反省材料ということだね。
ということで、このゲームについては、こんなところです。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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