湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2020年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第9節(2020年8月9日、日曜日)
- 守備が抜群に強い両チームの対峙・・そりゃ、フィニッシュ(興奮)シーンが抑えられちゃうのも道理か・・(セレッソvsFC東京、0-0)
- レビュー
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- とても(勝負に!?)強い両チーム・・
彼らが、秘術を尽くしたわけだから、どちらかといったら「静的」なエキサイティング勝負マッチになるのも道理・・ってか〜〜!?
でも私にとっては・・
セレッソを率いるロティーナの描く「次のステップ」が、少しだけ、垣間見えたという意味合いでも興味深かったね。
私は、ヴェルディを率いていた当時の彼のサッカーを、少し「斜に構えて」観察していたわけだから・・さ。
・・ロティーナのサッカーには、爆発(リスクチャレンジ)が前面に押し出てこない・・
・・ロティーナのサッカーでは、選手たちが、様々な意味合いを内包するバランス(抑制)を意識し過ぎている・・
・・ロティーナのサッカーでは、攻守にわたって、まさに「石橋を叩いて渡る」ってな安全マインドが前面に押し出され「過ぎて」いる・・
・・等など。
要は、ロティーナは、とてもステディーな(安定した)闘い方をするっちゅうこと。
だからこれまでは、積極的なボール奪取プロセスをベースにゲームを支配しながら、人数を掛けて仕掛けていくといった攻撃サッカーは、あまり体感できなかった。
そして、柿谷曜一朗といった天才の一発に賭ける・・!?
フム〜〜・・
でも、この試合では・・
ロティーナ・セレッソには、ちょっと、イメチェンの雰囲気が漂っていたんだ。
そう、人数を掛けて押し上げ、人とボールを動かしながら、積極的に仕掛けていくってな時間帯も多かったんだ。
まあ、たしかに、ボールがないところでのサポートの動き(決定的フリーランニング)の内実は、まだまだ「石橋を叩いて渡る」ってなニュアンスの方が強かったけれど・・ね。
そうなんだよ・・
まさに「ここぞっ!!」ってなシチュエーションでなければ、決定的スペースへ飛び出していくリスキーな爆発フリーランニング(パスレシーブの動き)が出てこないんだ。
とはいっても・・
そう、この試合では、ロティーナ特有の「バランス感覚」はそのままに、より強く、リスクチャレンジ「も」意識するようになったと感じたわけさ。
それにしてもセレッソは、攻守にわたって、「行くところ」へのイメージが徹底している。
無駄なフリーランニングはやらないし、守備でのアタック(局面デュエルへのトライ)にしても、やはり自重気味っちゅう雰囲気がプンプン匂う。
それは、もちろん、「危険な爆発を抑制する!」っちゅうマネージメントだよね。
そう、勝つこと「だけ」を絶対目標にする、強烈な戦術(規制)サッカー。
まあ、とはいっても・・
この試合では、その「基本型」はそのままに、イニシアチブを握ろうとする姿勢も含め、より、「サッカーの喜びベクトル」も感じさせてくれたっちゅうわけさ。
あっと・・FC東京・・
彼らは、そんなセレッソの闘い方に、少し面食らっていた・・!?
だから、押し込まれる時間帯もあった!?
でも、それって・・
そう、カウンターを得意とするFC東京にとっては、とても有利なゲーム展開じゃないか。
でも・・
そう、「あの」老獪なロティーナは、そんなFC東京のアドバンテージを、根こそぎ「潰し」てしまうんだ。
たしかにセレッソは、前述したように、人数を掛けた組織オフェンスを展開した。
ただ彼らが、常に、次のディフェンスを強烈に意識していたのも事実。
「行くところ」をわきまえた「バランシングプレ−」を意識するとか、次のボールロストを敏感に感じ取る能力を先鋭化するとか・・
それもまた、石橋を叩いて渡るサッカーの構成要素っちゅうわけだね。
そんな「注意深いバランサー」の筆頭が、中盤の王様、アルゼンチンのレアンドロ・デサバトであり、最終ラインの重鎮、クロアチアのマテイ・ヨニッチっちゅうわけだ。
あっ・・もちろん、日本人選手たちも、とても効果的にプレーしていたよ。
とにかく・・
守備が抜群に強い二つのチームが対峙したら、まあ、あんな、シュートチャンスの限られた(観る方が興奮させられるシーンが少ない!?)ゲーム内容になるのも道理なんだろうね。
まあ、たしかに・・
FC東京の仕掛けには、より多くの、身体を硬くさせられる(フリーズ気味になっちゃう!)最終勝負の仕掛けプロセス(!)があったよね。
さて・・
最後に、バランス感覚というテーマをちょっとだけ・・
よく書いているように、誰もが感銘を受けるような「優れた積極サッカー」では、とても頻繁に、選手たちが(主体的に!)バランスを崩していくモノなんだよ。
攻撃でも・・守備においても・・
まあ、リスクチャレンジ・・ね。
そして、そんな優れたチームでは・・
勝負シーンが終わった次の瞬間には、すぐに、チーム(ゲーム)戦術としてイメージ構築されている「組織バランス」を、スムーズに取り戻しちゃうんだ。
そして、「それ」こそが、真のバランス感覚っちゅうわけさ。
わたしがドイツで学んだなかで、もっとも大事なテーマの一つだったのは・・
監督のウデの本質として・・
選手たちが、蛮勇ではなく、しっかりとした「体感に基づいて」前向きにバランスを崩していけるように(リスクへチャレンジしていけるように!)、「意義のある失敗」を、トレーニングで(また実戦でも!?)積み重ねさせられるモノだということかな・・。
チト、舌っ足らずだけれど、とにかく、そんな体感を積み重ねることで、より深い自信と確信をもって、リスクにもチャレンジしていけるようになるんだ。
そして・・
そんな心理ダイナミズムで挑んでいくリスクチャレンジだからこそ・・
恐る恐るってなマインドのアクションよりも、成功の確率が格段に高くなるのは言うまでもないよね。
また選手たちは、そんな(失敗することにも意義を見いだせる!?)挑戦を、心底楽しめるようになるだろうし、進化&深化のスピードもアップするっちゅうわけだ。
私は、そんなサッカーのエッセンスを、世界サッカーを引っ張ってきた伝説のオッサンたちから、学んだんだよ。
やっぱり、少し、舌っ足らずかな〜〜・・
スミマセン・・ね。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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